表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/68

第29話 スカウトされました

 ルケイドを薔薇回廊の話をするために夕食に招いたら、家の交換を思い付いた。

 普通ならそんなの無しだと思うけど、ルケイドはかなり前のめりになっているご様子だ。


 食堂での王妃様達の食事が終わり、ブリュナーさんがリビングのドアを開けるとちびっ子達が一斉に入って来て俺に抱き付いてくる。

 食堂を出る前にちゃんとクチを拭いて来たようでパジャマが汚れることはない。

 心配するポイントがズレている気がするが、旅行中に散々アルジェンが俺の服をナプキン代わりにしてたからね。


 リビングに運んで貰っていた食器を片付けると、部屋が一瞬でちびっ子達と子供達プラス王妃様の運動場に早替わり。

 約一名、カオリの延ばした蔦に縛られて喜んでいるのは見なかったことにしよう。


「薔薇の魔物なんて居たんだ。

 ラビィと一緒に水晶のトカゲが買い食いしてるのは知ってたけど」

「青伝票でオヤツを買い食いする魔物なんて聞いたことないけどね。

 ラビィが一日に何個リンゴ食ってるのか気になるよ」


 ラビィのオヤツは、自分でダンジョンに潜って採取したものにしてもらいたいものだ。


「オーヒが薔薇にまみれたのです!」


 アルジェンに言われるまでも無く、薔薇の蔦に縛られた王妃様を少しガックリしながら見ていた俺は、その蔦に蕾が出来て見る見るうちに開花していく様を目撃していたのだ。


「お腹いっぱい御飯を食べたから、御礼に種をくれるそうなのです」


 カオリの種?

 まさかカオリと同じように自由に動き回るまもの若干ないだろうね?


 カオリは喋れないけど、アルジェンが通訳してくれるのが有難い。

 ウドルの町に俺達が行ったタイミングではカオリが動いたのは、実はアルジェンの存在を感知したからじゃないかと思うようになってきた。


「我から栄養を吸い取っておらんじゃろうな?」


 自分を縛る蔦に、二十を越える花が咲いているのを確認した王妃様の疑問は尤もだ。

 アルジェンの言葉通りなら、カオリの食べた食事が栄養素になっているから問題は無い筈。


「お望みなら出来なくもないそうなのです!」


 マジかよ!

 カオリには戦闘力なんて無いと思ってたけど、敵の体から体力を吸収可能な能力を持ってるってことだろ?

 ちょっと極悪過ぎません?

 まさか額に種を埋め込んで、対象を支配する能力なんて持ってないよね?


「花が枯れて実が出来たら、ローズヒップが採れると思うのです」

「花が咲くまでは結構短時間だったけど、花はすぐには枯れない?」

「カオリに繋がっている状態なら枯れないと思うのです」


 と言うことは、その花の咲いてる蔦を切り離して収穫するってことだ。 

 切るのは痛くないのかな?


「種が出来たら譲って貰えるかの?

 家に植えたいのじゃが」

とお強請りする王妃様だが、安全性が確認出来ていないものを渡す訳にはいかないだろう。


「やるなら一度この家の庭に植えて確かめてからにしてくださいね。

 カオリが増殖したら、食費が大変なことになりますよ」


 薔薇の花にクチがあること自体おかしいのだが、どうやって食べて消化するのか大人一人分の食事を平らげるカオリが大量に育ってみろよ…。


「最初に気にするのが食費なんだ…」

「何かおかしいか?」

「グルグル巻きにするとことか、マネキンみたいなとことか、蔦ってことも……色々とさ」


 地球の常識とは違うのだから、何があっても素直に受け入れなきゃこの世界じゃ上手く生きていけないぞ、と心の中でルケイドにダメ出しをする。


「痛くないし、寧ろ気持ち良いぐらいじゃ。癖になるのぉ」

と王妃様が危ない発言を…。


 カオリが伸ばすのは薔薇の癖にトゲの無い蔦だから、力加減さえ間違えなければ…恐らくスライムのピエルに乗ってるから、スライム液を蔦の中に流して伸ばすのだろう。


「巻かれてる本人もそう言ってるから大丈夫。

 で、家の話をブリュナーさんに聞いてもらう?」

「本当に良いんだね?」

「家の話ですか?

 私に分かる事ならお答え致しますが」


 そこでもさっき思い付いたカンファー家とこの家の交換のことを、スーパー家令のブリュナーさんに相談してみる。

 勿論王妃様も縛られてたままで聞いている。


「親方様が貴族区画に移住することは、王都の件を考慮に入れると問題ないかと思われます」

「そうじゃな、形式的には貴族位を持たぬとは言え、黒龍(アーミン)を王国にもたらした功績を鑑みれば、子爵位相当の暮らしを与える価値はあるのぉ」


 二人とも対外的には問題無しの判断か。それなら俺とロイの気分的な問題だけだな。


「黒龍? 王都でドラゴン狩りに行ったの?」


 まだルケイドは聞いてないのか。

 テレビもラジオも無いから、情報が伝わるのにタイムラグが生じるのは仕方ないけど、落ち目とは言え貴族家何だから王都の情報はなる早でキャッチしなきゃ。


 まぁ、廃爵決定のあの父親にはそんな事に金を使う余裕は無いか。


「ドラゴンって言っても話せば分かる奴だったし。

 ちなみにそのドランさんも水晶龍だぞ。

 まだトカゲみたいに見えるけど、それでも千年は生きてるって」

『呼ばれました?』


 羽根を出してバタバタと飛んで来るトカゲが普通のトカゲな訳が無いか。


『これでもクレストさんに拾われてから、体長がイチミリも伸びたんですよ』

と言われたけど、その体でイチミリぐらい伸びても分かる訳が無いし。


 それにしても、ドランさんにも声を出して喋る能力があるのに、何故か念話を使うんだよね。

 同時に繋げられるチャンネル数が二つだから少し不便なんだけど。


「王都にアーミンが居るだろ。

 ドランさんも同じドラゴン何だぞって紹介してたんだ」

『やだなぁ、水晶龍なんて最下層のドラゴンですよ。

 黒龍は最強の部類に入りますから、格が違いますって』


 戦闘能力が無いのは聞いてるけど、黒龍がそんなに強いってのは初めて聞いたな。


「でもドランさんには凄い能力があるだろ。

 強さ意外で役に立ってるょ」

『そう思うなら、オヤツは大銀貨三枚までに』


 何処のお大臣のオヤツだよ。万疋屋のメロンも真っ青なお値段じゃないのか?


「ドランさんなら、森のダンジョンにも行けるんだし、自由に獲ってきたらどう?」

『オヤツは誰かに作ってもらうから美味しいんですよ』


 それは言えてる。俺もどちらかと言えばラクして食べたい派だから、その気持ちは分かるぞ。


「二人で喋ってるみたいだけど、独り言を言ってる危ない人みたいだね」

とルケイドが突っ込んでくる。


「仕方ないよ。ドランさんは念話を使って喋るんだし」

「トカゲ型だから仕方ないよ。

 それで王都のドラゴンって、何をやってきたんだよ?

 話せば分かるって、普通の人はドラゴンには話し掛けないよね?」


 普通の人は、そもそも飛べないから接近すら出来ないもんね。


「イヤさ、それが王都に接近してた黒龍にちょっと話してくるってドランさんが出て行ったんだよ。

 ドランさん一人に任せてたらどうなるか分からないから、俺も付いていった訳。

 そしたらクシャミでドランさんが吹き飛ばされて行ったから」


 そのお陰で俺にターンが回って来たんだけどね。


「そこからは王都から報告書が回って来るだろうけど、結果的に黒龍(アーミン)が白いオコジョに変身して守護龍として王都に棲み着いたんだ。

 その事をブリュナーさんが言ってる訳」

「やり合ったんじゃなくてお話しだけ?

 ホントに?」

「…黒龍からオコジョに変身するときのエフェクトが、王都からは戦闘があったように見えたらしい。

 しかも拡声器の魔道具で実況中継されてたってさ」


 風圧で飛ばされたり、間違って落下したり、アーミンが悪ノリして演出したりと、勘違いさせる要素があったのは不幸としか言いようが無いけど。


「騎士団や宮廷魔法士達もビビってワタワタしておったと言うのに、黒龍にお話しに行くなど考えれん。

 クレスト殿が居らねば、騎士団は黒龍に攻撃を仕掛けて甚大な被害を出したのは確実じゃ」

「だから、それはドランさんが居たからなんとかのなるって思っただけなんだよね」


 ドランさんにとっては龍類、皆兄弟なんだろうと思えるぐらい、気軽に行ってたもんね。

 

「ソレなのに、リミエンで騒ぎになっていないのは…

 普通なら褒章を貰って、よく知らないけど、あれやこれやとあった筈。

 なのに予定通りに戻って来たってことは、何か裏工作でもやったんだよね?」


 全部蹴っただけで、疚しいことなんてしてないっす!


「クレスト殿はの、王の前でそんなものは要らぬ、とぬかしよったからのぉ」

「うわっ、最悪…それは国王様に同情するよ。

 信賞必罰、絶対王制でこれを蔑ろにするようなことはやっちゃダメだよ」


 俺より年下なのに、随分政治に詳しいな。

 王妃は今のルケイドの言葉に、クレストと仲の良い変わり者との評価を即座に改めたのだ。


「ルケイド殿は、クレスト殿の取った行動はマズイと思うのじゃな?」

「当たり前でしょ。

 妄信したり、何も考えずに従うのは良くないけど、国のトップを蔑ろにするような事をやるのはマズイって」


 だってあれやこれやがあると、予定通りに帰れなかったんだから仕方ないよ。

 それにしても、ルケイドの相手をしているのが王妃様だと知ったらどんな顔をするか楽しみだな。


「ルケイド殿はクレスト殿より若いのにしっかりしておる。

 もし王都に興味があれば、いつでも我の元を訪ねてくるが良い。我の居所はクレスト殿が知っておる」

「それはダメっ!

 ルケイドには俺の手伝いをしてもらわないと!」


 勝手にルケイドを引き抜かれたら俺がめっちゃ困るって!

 それに王城勤務先させるって、どれだけ買ってんだよ。実はブラックキャッスルで人材難なのか?


「男のクセに嫉妬かの? 見苦しいわぃ。

 それに進路は本人が決めるものじゃ。本人の意志を尊重せんでどうする?」

「そりゃそうだけど…」


 でも王城だしな…正体は王妃様だってバラしたくなってきたよ。


「既に来年から遣ることはリミエン伯爵から仰せつかっていますから、まだ王都に行くタイミングではないですよ。

 でも何年後にか、機会があれば考えさせてください」


 ルケイドは貴族の世界が苦にならないのか?

 ドロッドロのベッタベタな世界なんて、コイツには合わないと思うけど、転生者特権で何とかなるのかな?


「やめとけ、やめとけ、こき使われるに決まってるぞ」

「…それを言ってる人とそう変わらないと思うよ?」


 俺がこき使ってるかな?

 能力的にも適材適所だし、お金も良い感じに入る仕事を任せてるつもりだけど。


「ソルガム、ゼリー、プリン、洗浄剤と紙、それに森のダンジョンだよ。

 ステビアは直接は関わってもないけど、森のダンジョン産だし。

 洗浄剤と紙は僕も作るつもりだったからノーカンにしても良いけど、それにプラスで薔薇回廊作りだよ。

 絶対オーバーフローするって」

「回廊以外は部下に丸投げしたら大丈夫っ!

 って、部下は居ないのか。

 ブリュナーさんみたいな人を一人付けないと駄目だよね」


 俺は発案するだけで、後はぜーんぶ人任せだからなぁ…。


「私の替わりのものですか…リミエンに限定すると一名だけですか」

とブリュナーさんが顎に手をやる。

 該当者が居ることにビックリだよ。


「ラスティ・リガード殿なら役に立ってくれるでしょうな」


 知らない人だけど、ブリュナーさんが認めるってことは凄い人なんだろうね。


「ほぉ、あの者がリミエンに居ったとは」


 王妃様が知ってるってことは、王都に居たのかな?


「親方様の家令に応募をされていた方です。

 魔力の無い今の親方様には興味を持たれないでしょう」

「メイベル部長が推してた人か。

 『豪腕』の二つ名持ちだっけ」


 俺に稽古を付けたがっていた危険人物じゃないかよ。

 そんな人を家令に付けて大丈夫か?


「嘘っ! ラスティおじさんって二つ名持ちだったの? 盆栽仲間だけど、それは初めて聞いたよ」


 …こっちは盆栽やってることを初めて聞いたぞ。


「お知り合いでしたか。それなら彼も問題なく受けてくれるでしょうね」

「第三王子が亡くなって、田舎に帰ったと聞いておったが…世間は狭いのぉ」


 第三王子の養育係だったっけ。王城ではそんな話は一切出なかったのは、もう終わっている話になっているからか?


「でも雇うお金が無いよ」

「男爵位の年金でお出しなさい。

 なるほど、さすが親方様ですな。この屋敷なら維持費は殆ど掛かりません。管理はシエルさん一人で賄えておりますからね。

 暫くこの屋敷で暮らして貯金をされて、今のカンファー家を買い戻せと仰る訳ですな」

「そう言うことか。

 気心知れた者どうしてなら、屋敷の一時的な交換も例が無い訳ではないのぉ。

 うむ、ぼぉーとしとる割に抜け目が無い奴じゃ」


 そんなつもりはございませんっ!

 勘違いで俺の評価を瀑上げしないでっ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ