第28話 こう決めました
予約投稿日を間違って2/15 7:00にしてたので、一時間ずらして8:00にしましたm(_ _)m
人の声で目を覚ますと、部屋の中に子供達とオリビアさんが居た。
少しだけ寝ようと思っていたが結構寝ていたらしく、もう夕方になっている。
「大丈夫?」
と俺の顔を覗き込むルーチェが心配そうに聞いてくる。
体を起こして確認するが、頭が痛いとかも無く、正常な範囲にあると思われる。
「うん、寝たら良くなったみたい。心配かけたね」
ルーチェの頭を軽く撫でると、ヨイショとベッドに上がって抱き付いてくる。
「オリビア先生もお母さんになるんだよ、クレ兄の部屋じゃ狭くない?
それにベッドも」
ロイが部屋よりベッドをどうにかしろと言わんばかりにポンポン叩く。
三人寝られるベッドなんて普通に売ってるかな?
そんなに大きいのは貴族用の特注って聞いた気がする。
「それは考え中だよ。もっと大きい空き家って丘の上にしかないからさ」
悪いことをやった貴族を追い出すって行程が、俺がそこに引っ越す前に必要らしいけどね。
「丘の上か…なら仕方ないね」
どうやらロイには貴族の済む区画には抵抗があるようだ。隣近所、何処を見ても貴族しか居ないのだから肩身が狭いと思うのは当然だ。
「それなら通い妻制にするんだね」
何処でそう言う言葉を覚えてくるのやら。まだ十歳のガキの癖にね。
「三階を増築するのはちょっと大変だからね。良く考えないとダメなんだ」
石造りの建物だから、ホイホイと簡単に増築が出来るものではない。やるなら物干し場を潰すのが一番簡単だが、それをしたら洗濯物を干す場所が無くなる。
ちなみに雨の日は二階の空き部屋に入れて乾かしているそうだ。
魔道具の小型化が可能になれば、乾燥機を作ってもらおうかと妄想しながら水を少し飲む。
俺がエマさんとオリビアさんの二人を嫁に迎えることを、ロイはどう考えているのか気になるところだ。
だが、聞くと精神的ダメージを食らうような気がするのでやめておこう。
俺の額に手を当てて熱がないかと確認したオリビアさんと、その真似をするルーチェの二人が熱はないとが分かって少し安心した顔を見せる。
ルーチェは多分、意味も分からずやっていると思うけど。
「食欲はありますか?」
「うん、普通に食べれそう。原因も対処方法も分かってるから心配しないでょ」
「魔力欠乏症に治療法があるんですっ?!」
日にち薬で治すしかないと思われている症状だから、オリビアさんが対処方法と言う言葉を聞いて驚くのも無理はない。
「俺にはアルジェンが付いてるからね」
「…アルジェンちゃんに治療してもらえるなら大丈夫そうですけど、そんな事まで出来るんですね」
そのアルジェンのせいで発作が起きたのは絶対に秘密だけどね。
それにアルジェンに治してもらうのでなく、アルジェンに預けている魔石で治すのだから、ちょっとだけ嘘をついたことになるのかな?
まぁ、手段はともかく今の状態が治れば良いのだから、細かいことは気にしない。
それから少しお喋りをしていると、出掛けていた王妃様とフィリーさんが戻って来たようで、
「倒れたそうじゃが大事はないか!?」
とノック無しに入ってくるなり、そう聞いてきた。
頭にアルジェンを乗せているせいか、慌てたような口調の割には緊迫感を感じないが、雰囲気をぶち壊すアルジェンが問題であって妃様が悪い訳ではない。
「命の危険があるなら私には分かるのです!」
とアルジェンが頭の上に立ち上がって胸を張る。
多分、コイツと俺との間には、魔力的な繋がりがあって、ピンチになればビビッと信号が送られて来るのだろう。
「御飯をいっぱい食べて寝てれば治ると思うです。
でも早く治したいなら、毎日皆で私を全力で甘やかすと、私のやる気が倍になる気がするのです」
つまり、いつものもっと甘やかして欲しいとお強請りしてるだけだよね。
「それは積極的な治療とは関係無さそうだけど」
「私は褒められて伸びるタイプかも知れないのです」
アルジェンが気楽に構えているってことは、俺の体調に不安は無く、気にするなと言うスタンスみたいだ。
異常があればきっともっと慌てている筈だから、本当に大した症状ではないと思って間違いないだろう。
「本当に問題は無いのね?」
「ママ達を未婚で未亡人にするようなパパではないのです。
もう少し浮名を流しても構わないと思うのです」
「それ、言葉の使い方間違ってるからね」
アルジェンは俺の記憶を共有してる筈なのに、たまにおかしな使い方をするのは何故だろう。
完璧な共有ではないと言うことか?
「浮き輪を流すの?」
「そうじゃ、川で溺れとる者を見付けても助けようと飛び込んではダメじゃぞ。
掴まる物を投げてやるのが一番じゃからな」
ルーチェの世話は王妃様に任せてれば大丈夫そうだ。
子供を育てた経験があるからか、それとも精神年齢が低いのか…多分前者だと思う…ことにしよう。
浮き輪はともかく、アルジェンの問題はいつか二人で話すことにして、体調も今は問題ないから部屋を出よう。
いつの間にかカオリがお気に入りの花瓶の中に一輪挿し状態になっていたが、
「飯にするか?」
と声を掛けるとピョンと飛び出てマネキンボディに変身、身軽に足元まで走ってくると俺の肩まで蔦を延ばしてシュルルルルと一気に肩に移動した。
「それだけ軽快に動けるなら、自分で食堂まで行けるだろ?」
その質問にフルフルと頭を振って拒否を示す。かなりの甘えん坊なのか、それともカオリにはカオリのポリシーがあるのか。
王妃様の頭に乗って、髪の毛をレバーに見立てて操作するように遊ぶアルジェンに対抗してのことだろう。
随分と色物キャラに好かれたものである。
リビングに降りると、エマさんにブリュナーさんが何か説明していてその後ろでルケイドとラビィとドランさんとマローネが仲良く遊んでいた。
そんな様子を見ると、逆にちょっとは俺の心配しろよと思うのが不思議なものだ。
俺が倒れたドランさん聞いて心配していたエマさんが、ダッシュで俺に抱き付いてきた。
こっちの世界の人はハグ程度なら人が見てる前では抵抗がない外国人みたいだな、と思いながらエマさんの背中を軽く撫でる。
「倒れたって聞いて心配したのよ」
と耳元で囁くエマさんに、ゴメンねと軽く返事をする。
「でも今は元気そうね。疲れてたのかな?」
「そうかもね。
リミエンに来てから、あんまりゆっくりしてないからね」
恐らく他のリミエンっ子達から見れば、俺なんて冒険者の癖に依頼も碌に受けてなくて、仕事も毎日忙しくやってるようには見えないんだろうけど。
俺の基準では今でも十分にハードワークなのだ。
「クレストさんはダンジョンで大変な目に遭ったんだからね。
無理したらダメ」
優しくそう言葉を掛けて腕を解くと、
「そう言いながら、自分から薔薇の仕事を増やしてるんだし」
とクチを尖らせる。
「いや、ルケイドを呼んだのは俺の代わりに頑張ってもらうつもりでだからね」
勿論そんなのは嘘。どんな回廊と庭園を知っているのか聞きたくて呼んだだけだ。
それならビステルさんとか他の転生者にも聞いてみるのも悪くないな。
「クレスト兄の代わりって聞いてないし、それは無理っ!
今はゼリーとプリンで大変なの!」
「なら、そっちは代わりに行ってこようか。
俺ならクチ出すだけで済みそうだし」
根拠はないし、ゼリー関係の現状も実は良く分かってないけどね。
それから俺とルケイドはリビングで夕食を取ることにした。
L字に並んで間にノートを置いて、薔薇回廊のイメージを書いていく。
薔薇の回廊と言えば普通は散策道に設けるものなので、アーチのスパンは二メートル程度か。
それが今回は横に馬車が三台併走出来る幅の道路、プラス歩道、更に登りと下りの馬車鉄道の路線まで覆うアーチを作るつもりだ。
ざっと七メートルぐらいのスパンのアーチが必要になるだろう。
「本当にこれ、五キロもやるの?」
「…まぁ、やるって伯爵様に言っちまったからなぁ…無謀かな?」
「…かなり、ね」
俺が施工した道路とハーフエルフ達が施工した馬車鉄道の断面図に、人と馬車を書いてみた。
「あのさ…仮にアーチが出来たとしても、薔薇を纏わせるんだよね。
壁には咲かせられたとしても、天井までは無理じゃない?
と言うか、何でアーケードにしようと思ったの?」
アーチのイラストを目にして呆れたような顔でルケイドが俺を突いてくる。
若気の至りかも知れないが、まさかこんな大きな物になるとは想像してなかった。
道路の両サイドにお洒落な柱を立てて、⌒状の梁をポンと渡せば簡単に出来ると高をくくっていたのだが。
「雨の日でも濡れずに遊びに行きたいだろ」
「雨の日は遊びに行かないし…あっ、屋根付きのきの競技場を作ってるんだっけ。
それでか…うん、馬鹿だね」
「そうかも知れないけどさ…ちなみにルケイドなら、一日に何本柱を建てられる?」
ルケイドがこめかみに指を当てて考え込む。
「かなりの強度が必要だよね?
しかもただの丸い柱じゃなくて、彫刻を入れた感じでしょ…一日一本?」
「野菜ジュースの宣伝かよ」
「…美味しく出来たら売れるかな?
やらないけど…やるならスムージースタンドだよ」
こう言う反応は、さすが転生者だな。スムージーなら果物も沢山採れるから悪くないか。
「まさかキャプテンクッシュでスムージー?」
「単価次第だな。ミキサーが出来たら考えてみるか」
「その頃には僕もお金持ちになってるかもね」
「当然だな。来年はルケイドがリミエンに一番影響を与えた人物にノミネートするだろうな」
俺は全部ブリュナーさんに任せっきりだけど、ルケイドにはそう言うポジションの人が居ないからな。
「来年、叙爵の後はどうする予定だ?」
その質問の真意は、廃爵される父親と家族達をどう扱うかってことだ。
「決まってるのは、山を領主に返還することだけだよ。
さすがに今の家を僕の持ち物にするのは抵抗があるから、町の方に引っ越すのが良いと思う」
最下層の貴族とは言え、男爵様が市民と同じ町に住むのか。
「それなら…おまえんちと、この家を交換するか?」
「えぇーっ! 僕は嬉しいけどっ!
クレスト兄、ホントに良いの?」
良いかと聞かれると、本音で言うと良くないんだけどさ。
オリビアさんを嫁に迎えることになったから、自室の広さが圧倒的に足りていないんだよ。
ルケイドの家は古くからの家系で、落ちぶれる前は子爵位だったから屋敷もそれなりのサイズがある。
それに何が一番って(作ってからまだ使っていないけど)カラバッサを置けるスペースがあることなんだよね。
でもロイは嫌がるだろうな。
「貴族位ではない俺が住むのもおかしな話だけど、俺は広い部屋のある家が欲しい。
資産価値は負けてるかも知れないけど、使い勝手は悪くないだろ?」
「絶対この家の方が価値はあるよ!
ウチなんて古いから使い勝手も良くないし」
「そこは好きなように改築させてもらうさ」
「うーん、クレスト兄が良いならそうしたいけど…問題ないのかな?」
多分、問題はあると思うよ。本当に男爵がここに住んで良いのかってことね。
でも、それが許されるなら悪い選択では無いと思う。
もしルケイドが嫁を複数もらうようになって引っ越しを考える頃には、元の家を買い戻せるぐらい稼いでいることだろう。
「家のことは後にして、先に薔薇回廊の話を詰めなきゃ。
柱の感覚を十メトルとすれば、片側だけで柱が五百本、両方で千本だよ。柱だけで約三年も掛かるんだから。そこにアーチを乗せて…更に二年?」
俺よりルケイドの方が真面目に考えてるな。
でも俺の考えだと一年で完成させたいんだよ、出来れば柱だけでも半年で。
半年後にマジックハンドコンテストがあるから、それに間に合わせたいんだよね。
ハーフエルフ達が一日に十本の柱を立ててアーチで繋いでくれたら、百日だから三ヶ月ちょっと。一日に八本だと四ヶ月。一日に六本なら五ヶ月半だからギリギリか。
ヨシ、出来るかどうか分からないけど八本ペースで作らせよう。
俺が引っ張ってきた人達だから、俺の好きなように使って構わないよね?と思いながら、半年間で作り上げるスケジュールを立てるのだった。




