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第16話 覚悟を決めて告げました

 我が家に帰ってきて、楽しく過ごそうと思っていたら既にジ・エンドと言われた…もうハーレムがイヤとか言って逃げられる状況ではないようだ。


 知らない女性を押し付けられるぐらいなら、俺を慕ってくれている女性に周りに居てくれる方が良い。

 自分の欲しい物を作って貰うだけだと軽い気持ちで始めたことがきっかけとなり、いつの間にか雪だるま式に俺の背負いきれない状況を招いていたとは。


 前々からレイドルさんには早く四人娶れと事あるごとに言われていたが、余計なお世話では無く本当に俺を心配していたと言う訳か。

 あの人に言われて素直にハイと言う人間は居ないと思うけど。


「そう言う訳で御座います。

 能力のある者を婿に迎えたいと思うのは、どなたも同じですからね。

 もし私に年頃の娘が居れば、私も同じことをしておりますし」


 そう言うブリュナーさんは結構本気そうな顔だ。

 それからついでにと、裏事情を色々と教えてくれた。


 特に貴族家となるとなんやかんやの競争があるから、余所より稼げる人間を欲っしていること。


 俺が今までに披露してきた知識と発想は、リミエンの人達にとっては中毒性のある甘い蜜となり、その利益を手に入れようと裏に表に策略を巡らせている人が居ること。


 それが故に、俺に商業ギルドの部屋を与え、外部からの接触を極力遮断すると言う強攻策を商業ギルドは講じてくれたこと。


 有難いような有難くないような、それなら遠回しにせずそうはっきり言ってくれても良かったのに。

 まぁ俺が素直に聞くと思っていなかったのだろう。


「不本意と仰らず、まずはオリビアさんの嫁迎えは確定しておくべきかと。

 彼女の評価はリミエンの女性冒険者の中で断トツです。

 彼女の家の方でも、親方様と同様の事態になりつつあるようなので、早く手を打たないとマズイ事になるでしょうね」


 自分の都合しか考えてなかったけど、オリビアさんも被害に遭ってるのか。

 それであの時にお父さんが売り込みに来たんだな。

 オリビアさん本人はエマさんに気を使ってる節があって、まだ積極的に俺には言わずに一歩引いてる感じだけど。


「キリアスだと一夫一婦なんだけど、コンラッドはそうじゃないからね…」

「いえ、キリアスは国として一夫一婦制を布いている訳ではないようですよ。

 キリアス西部は男性は軍人として召集されるので、寧ろ男性の数が足りない状況らしいですね」

「それでセキネさんが頑張って子作りを…な訳ないか。

 セキネさん一人が産ませた子供だけで軍隊作れるとは思わないだろうし」


 『赤熱の皇帝』と呼ばれるセキネさん、かなりの絶倫ぶりらしいが子供は何人居るんだろう?

 異世界を一番満喫してるの、実はあの人かもな。瞬間移動スキルとKOSを越えるチートな鎧持ちだし。


 でも、あの人は災厄を撒き散らすだけだから、絶対コンラッド王国に招く訳にはいかない。

 そう考えると、鋼鉄王デュークアードとバルム婆の融和策は実はコンラッド王国にとっても大きなメリットなのか。


 同郷人としては仲良くしたいけど、人を人とも思わない扱いをしてるあの人は、申し訳ないがご近所からは退去してもらわないと俺達の身に不幸が降り注ぎそうだ。


「キリアスと繋がってる地下通路はまだ塞いでいないの?」

「はい。現在は軍の管理下に置かれている模様です。魔熊の森が安全に通行出来るようになるまでは、あのままの状態が続くかと」

「ブリュナーさんも見て来たの?」

「はい。時間の都合でキリアスまでは行けませんでしたが、少しだけ中を覗きました」


 それならバルム婆がリミエンに遊びに来たぞ!みたいな何らかのアクションを起こしても問題は無いか。


 いや、あのダンジョンにはメッチャ強い真物が一匹隠れてる。あっさり俺を嚙み殺そうとした神狼ぽいやつだ。

 魔力の回収が目的と言っていたので、あの狼ぽいのはダンジョン管理者の使いの者だったのかも。


 それで俺を殺してどうするつもりだったのか…一つ考えられるのは、次のダンジョン管理者へのスカウトだ。

 恐らく生きたままでは管理者にはなれないので、とりあえず殺しておくか…と思っていたのかもな。


 魔物と人間では価値観が全然違うので、あの狼の考えていることは正直よく分からないが、俺にしか手を出して来なかったと言う事実からそう推測したのだが。

 俺がやっても良いと思うのは森のダンジョンの管理者だけだな。


「バルム婆は優れた魔道具技師だから、若い技師が指導を仰ぐことが出来ればコンラッド王国にも役に立つ。

 早いとこ問題を片付けて、行き来が出来るようにしないとイケないね」

「そうで御座いますね。

 身替わり君と言う人間そっくりの人形を作ったそうですからね。

 ですがキリアスの南北と西は敵対勢力です。

 そこを叩かない限り、正式な国交には至らないでしょう。

 親方様はこれからキリアス方面対策局長として、そちらの関係でも忙しくなるかも知れませんね」


 交易だけでなく、俺に戦いに出ろと?

 戦争的なやつはビビリの俺には怖くて無理。『火山噴火』で軍隊一つ纏めてお掃除出来るような精神は持ち合わせが無い。


 仮にアルジェンにやらせたとしても、俺が指示したなら同じこと。

 自分の幸せを守る為に人を殺さないとイケない未来なんて来て欲しくない。出来れば話し合いで解決したい。


「色々と考えるべきことは多そうですが、目の前の仕事と問題を一つずつ終わらせて行くしかないですね。

 オリビアさんのことは、この後でエマさんと相談されるのが良いでしょう。

 ズルズル後に延ばしても良いことは何もありませんからね」

「うん、そうするよ」


 不承不承ながら、お嫁さんをいずれ四人貰うことに…社会的価値観の違いのせいであり、俺は悪くない!

 オリビアさんはロイとルーチェが懐いているし、戦闘能力も光輪と魔法のモジュール化のお陰で跳ね上がってるから、冒険者仲間としても居てくれると心強い。


 彼女が傍に居てデメリットになることは思い付かない、と言うか、嫁と言うポジションを意識しなければ実は現状維持だ、と納得することに。


 それからマローネ部屋を訪ねると、部屋の中で魔界鉄道馬車トリプルナインがマローネとドランさんを乗せて走っていた。

 ドランさんが車掌役かな?

 進む方向はドランさんの指示とは違ってミニッチュさん任せ。壁でも天井でもお構いなし…天井?


 逆さを向いたトリプルナインからマローネが落下したけど、カオリの蔦とスライムの触手が融合したレールがマローネを受け止めた。

 どうやらソコまで計算尽くの遊びらしい。


 王妃様のお腹にラビィが乗っていたのは気にしないし、アルジェンとカオリは(エマさんとフィリーさんがセコンドに付いて)プロレスゴッコをしたりと好き勝手に遊んでいるのも問題ない無い。

 俺の気苦労も知らずに皆が気楽なもんだ。


「嫁の話は付いたかの?

 それにしてもここは天国かのぉ」

「そうやなぁ、食いもんは上手いし、撫でるの上手い姉ちゃんもおるし、天国やわ」


 王妃様のお腹のでグデンと腹を見せて転がる熊は、世界にラビィ一匹しか居ないだろう。

 そのラビィの嫁取りも考えないとイケないんだけど、それは安全にキリアスに行けるようになってからか。


「オリビアさんのことは決めました。

 オリビアさん自身も俺と同じような状況になっていると聞かされたら、知らぬ存じぬでは済ませられなくて」


 エマさんには少し申し訳ない気持ちがあるけど、分かって貰うしかない。

 何と言って説得しようかと悩んでいると、

「決めてくれたんだ。良かった」

とエマさんが答えてくれた。


 でも、良かったと言う割には複雑な顔をしているのは当然…だよね。


「今のお部屋が狭くなっちゃうね」

「はぃ…?」


 オリビアさんが嫁になることに戸惑ってるんじゃなくて、部屋の心配ですかね?

 確かに三人で過ごす部屋としては少し物足りないないサイズだけどさ。


 そうなると、俺の部屋を拡張する工事が必要かな。

 一階、二階にブリュナーさんとシエルさんの部屋を増築して、その三階部分は現在テラスとして使ってるけど。

 そこをまた増築か…こりゃ予定外。


「そのうち郊外に大きな家を建てると良い。

 それぐらいの金はあるんじゃろ?」

「いやぁ、実はブリュナーさんしか我が家の懐事情を知らなくて」

「…お主なぁ…エマ殿、こう言う金に無頓着な男じゃが宜しく頼むぞ」

「はい! しっかり手綱を握っておきます!」

「うむ、任せたぞ。夜の方もそれぐらい積極的にな」

「それは…ちょっと…」


 エマさんが顔を赤くして下を向くと、王妃様がケラケラと笑ってから何やらエマさんに耳打ち。

 良からぬことを教えているのだろうか?

 益々エマさんの顔が赤くなっているのは、怒ってるからじゃないよね?


「さて、我はもう少し遊んでから寝るとするが、クレスト殿とエマ殿は久し振りの再会じゃし、話したいこともあろう」

「それなら私も寝るのです!」


 ミニッチュさんを元のワーム形態に戻して手のひらから吸収し、お休みの挨拶をしてドアを開けるアルジェン。

 随分と聞き分けが良い。

 アルジェンに続いて俺とエマさんもお休みなさいと挨拶自室に戻る。


「ドランちゃんが持ってきた手紙に、王妃様が来るって書いてて凄くビックリしたのよ」


 俺の隣、ベッドに腰掛けてエマさんがクチを尖らせる。

 ドラ猫便は(お駄賃のオヤツ目当てで)毎晩確実に王都のあの部屋に行き来しているので、早馬を出すより確実に、且つ早く王城から連絡が届く。

 王妃様の急な訪問にこの家の面々が対応出来たのも、ドラ猫便があったからこそ。


「あれは俺もビックリしたよ。

 国王陛下も宰相も予定外だったから大慌てでさ」

「王妃様から聞いたわ。

 アルジェンが居るから護衛も問題ないって、やっぱりアルジェンは凄いね!」

「フフフなのです!

 夜更かしはお肌に悪いので、ミニッチュさんとラルム、ピエルで鉄壁の警戒網を敷くのです!」


 魔界蟲生まれのアルジェンにお肌の心配があるのかな?

 魔界蟲さんってコラーゲンたっぷりにしか見えないんだけど。

 あ、ちょっと待て。凄いのはアルジェンじゃなくて、やっぱりミニッチュさんか?


「それであなた、私に変身したのよね?

 今でも出来るの?」


 それ聞く?

 もう少しアルジェンの話を…ダメですか。はい、話します。


「出来ないことはないよ。

 でも一度変身したら、丸々一日間はエマさんの姿で居ないとイケないんだって」

「一日も!

 それって、顔だけじゃなくて全身なのよね? 凄く似てたって」 

「そう…全身」

「…おトイレとかは?」

「…その…何と言うか…」


 思わずエマさんが顔を手で隠し、イヤーとか暫く悶えるのは仕方ない。

 全部アルジェンが悪いのだ…と心の中だけ責任転嫁。


「あなたの髪の色はレアだし…目立つものね。

 アルジェンちゃん、次に変身するときは、胸は仕方ないかも知れないけど、下はそのままでお願いね。

 幾ら夫婦とは言え…」


 怒りはしなかったけど、羞恥心やらなんやらで混ぜこぜになって、エマさんもどうして良いのか分からない感じかな?


 エマさんにリクエストされたアルジェンだが、俺も同じ事を聞いたのでその答えは不可だと知っている。


「『ゲノム・リコンポジショナー』はとても高度な魔法なので、部分的に変えないと言うのは不可能なのです」


 そう、一度体を溶かして構成を組み替える孵化みたいなことをする魔法だからね。


「でもその代わり、もう少ししたらパパの髪と瞳の色をママとお揃いの色に変えるのは出来るようになるのです」

「…じゃあ、次回の変身はそれにしてね!」


 お揃いと聞いて機嫌を良くしたエマさんだ。


「折角ママの体の神秘を紐解くチャンスだったのに、パパはずっとエマさんに申し訳ないって言い続けて痩せ我慢して耐えたのです。

 男の鑑なのです!」

「そうだったんだ…胸を揉んだり触ったりしなかったんだ。

 偉いね!」


 エマさんが俺の頭を撫で撫で…強烈な誘惑に耐えて正解だった!


「『ゲノム・リコンポジショナー』の影響でパパのホルモンバランスが崩れて性的欲求が溜まっているのです」

「…そうなの?」

「…そうです」


 ホルモン云々は関係無いと思ってたけど、そう言う訳だったのか。

 道理で帰りの道中、いつもよりセリカさんの胸に目が…その時はアレが反応しないカーラさんの慎ましい胸に視線を移して救われたけど。


「今夜ガス抜きしないと…なので『サイレントサークル』!

 防音と覗き対策は任されたのです!」



 そして翌朝…ホルモンバランスも改善して身も心もスッキリした朝を迎えた。

 エマさんは出勤なので俺が起こすことになっている。


 腕枕で寝ているエマさんの頬に反対の手でペシペシ。

 起きないので額に肉の字を指でなぞるが、まだ起きない。

 鼻を軽く摘まんでもダメ。


「アルジェン、エマさんの中に入って覚醒出来ない?」

「眠っているお姫様を起こすのは、昔からやり方が決まってるのです。

 鼻ではなく唇を塞げば苦しくて起きるのです。更に鼻も摘まむと効果的なのです」

「アレ、原作は背中を殴って毒リンゴを吐き出させるって話だけどな。

 毒は関係無かったってどう言うことだろね?」

「お子様の夢をぶち破るのは良くないのです」

「苦しくて起きるとか、先にぶち破ったのアルジェンだよね?

 まぁ、このまま俺が起きたらキスしなくても物理的に起きるしかないんだけど」


 肩の辺りにエマさんの頭が来てるからね。

 いつもはシエルさんに大きく揺さぶられて起きるそうだが、今日は俺が体を起こすことで強制起床。


 床に落ちていた下着を身に付け、服を着て一階に降りて行く。

 朝からエマさんの裸体を目に出来るとは正に眼福と言えるだろう。


 だがその幸せな気分も、朝の訓練で一気に吹き飛ぶ。

 久し振りのブリュナーさんのシゴキにアルジェンのヒールが大活躍…自分が起き上がりこぼしかゾンビになった気分だよ。


 ロイともう一人、キリアスからの移住者でアイドル候補のアルバス君は俺と違って真面目に訓練を続けているらしく、訓練なのか遊びなのか分からないが体力を目一杯使う運動をした後で剣を振る。

 ロイなんて俺より鬼気迫る剣舞に思わず見蕩れてしまう。


 訓練の後はアルバス君は冒険者として町の中で出来る依頼を熟すそうで、問題児のアイドル候補のアイリスさんと上手くやったり喧嘩をしたりと色々大変そうだ。


 そしてオリビアさんも訓練を終えて休憩に入ったところでリビングに呼び寄せる。


「オリビアさん。

 ウドルの町で手に入れた新しい飲み物を試飲して欲しいんだ」

と本題に入る前にローズヒップティーを彼女に勧める。


 勿論ブリュナーさんとシエルさんも試飲は終わっていて、我が家の定番メニューの仲間入りが即決されている。


「紅茶とは全く違う、甘く華やかな香りの飲み物ですね。

 薔薇の花からこんな飲み物が出来るなんて」

「気に入ったかな?」

「はい。こんな素敵な飲み物が頂けるなんて、夢のようです」

「なら…その夢を更に一段階引き上げてあげようかな」


 美味しい飲み物でリラックスさせるまでは計画通り…ついでに自分もリラックス。


「引き上げて? それは?」

と何のことか思いだそうとしたのか、一度少し視線を斜めに落としてから手元のティーカップをテーブルに戻して俺を見る。


「オリビアさんのところにも縁談の話が急に入り始めているんだよね?」

「えぇ…困ったものです…」


 心底困っているのがよく分かるくらい、彼女とも打ち解けて話せるようになってたんだと今更気が付く。


「その困ったちゃん達の中に、俺を混ぜてくれないかな?」

「私を困らせて…夢を一段階…て!

 クレストさんっ! いいんですか!?」


 Lの字に並べたソファに座るオリビアさんが起ち上がって俺の手を取る。


「ずっと俺は妻に迎えるのは一人だけと決めていました。

 でも、俺の周りには俺のそんな思いもお構いなしで俺の知らない娘さんを強引に娘を嫁がせようって人が沢山居る。

 それを知らされても、まぁなんとかなるだろうって思ってた」


 オリビアさんが、あれ?と言う顔に変わる。


「でも王都に行ってる間に状況は俺にもオリビアさんにも悪い方向に傾いてた。

 そんな事を言うと、だから仕方なくなんだ、と思われるかも知れないけど…


 決めたんです。

 

 周りの状況がどうとか関係なく、オリビアさんを嫁に迎えることに。


 オリビアさんのひたむきな姿、優しさ、厳しさ、美しさ、馬に対する愛情の掛け方…そんなの全部引っくるめて、オリビアさんが好きなんです。

 これじゃプロポーズとして駄目ですか?」


 俺の手を掴むオリビアさんの手が離れると、一度下に降りた。

 頑張ったよな、俺。

 プロポーズの言葉の入り方として良くなかったと思うけど。


 オリビアさんがブンブンと首を左右に振った。


「ううん、ダメじゃない!

 あなた流に言うのなら、むしろウェルカムです!

 もし、冗談だよ、なんて言ったら擬円・斬で真っ二つにしますからね!」


 それは困る!

 冗談だよ、なんて絶対に言えないじゃないか。

 勿論、言うつもりもないし、オリビアさんも冗談で言ったんだよね?

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