第1話 救われた者
第1話 救われた者
「ここが依頼された場所ですか?」
川の中央に浮くようにして立っている男性…いや、男性の姿をした化け物
「また1人、被害者が出てしまった。魔力の制御ができず時期にこいつは破滅する。お前らには出来るだけ被害を最小限にしてほしい。」
そう告げるは黒のスーツを着た警察。唐田刑事だ。
「慶、お前は水魔法は使えるか?」
「使えるよ!まぁ制御はまだまだだけど。」
それを聞き界羅は「そうか」と小さく呟く。
「界羅、この川の水を真ん中の男を避けるようにして流せないか?魔力の操作範囲から外せば奴は力を失う。」
界羅がそういう時慶は軽く頷き魔法を使う。水色の魔法陣から青白い光が出始めやがて水を包み込む。そして光がその水を持ち上げるようにして動かす。そしてその水は男を避けるように流れていく。
「だんだん水の量が少なくなっていく…今回もお手柄のようだな」
しかしそうも簡単に事態は進まなかった。
「唐田刑事、奴の様子が何かおかしいです。」
そう呟いた途端界羅達の足に水がまとわりつく。
「界羅、どう言うことだよ…操作範囲からは外したのに。」
そこで界羅は気付いた。奴はワザと操作範囲を小さく見せていたのではないか。そしてそうした理由は…
バタッ
近くで何かが倒れる音がした。何かは見なくてもわかる。死体だ。奴は周りの人間の水分を奪ったのだ。
「先鋭鉄!」
慶は魔法で鋭く尖った鉄を出し奴に放つ。しかしそれは簡単に水の壁によって受け止められ慶の方に返された、そして動けない慶は手で顔を守ったが直撃してしまった。そして足は固定されたままくの字に曲がる。バキッと骨が荒れる音がするそのまま先の尖った石は慶刺さって止まる。
「慶!大丈夫か!?」
「これで大丈夫に見えてたら界羅の目は相当におかしいよ。それより次の作戦を。」
慶はそんなこと知るかと言うように指示を仰いだ。
界羅は考える。水魔法。電気魔法を使えば相手を感電させられるかもしれないが、川の水と言えど水だ。純粋に近い場合、周りを覆って仕舞えばおしまいだ。火魔法は水で防がれる。風魔法は水を吹き飛ばすほどの威力は作れない。
「だったら…」
自身の脳で考える。この場合、どうすれば奴を仕留められるか。慶の体力を考えてなるべく少ない手数で。そして界羅は思い口を開ける。
「慶、土魔法で鉄を出せ。そして鉄が赤くなるように火魔法で熱しながら放て。」
慶の周りに赤い魔法陣と茶色い魔法陣が現れる。そして鉄が真っ赤になり、異様な輝きを放つ。そして奴に放つ。奴は鉄を一瞥してから水で先程より厚い壁を作る。そして鉄を防ぐ…筈だった。
赤い鉄の周りには膜のようなものが出現し、そのままの男に飛んでいく。途中で魔法の範囲外に行ったのか鉄は冷めてしまったがそのまま男に刺さる。そして男は倒れた
「にしても界羅、すごいね!鉄を熱し続けることでライデンフロスト効果を連続的におこさせて水の壁を貫通させるなんて!」
近場の病院の帰り、慶は元気そうに言う。そして後ろには…
「本日は助けていただきありがとうございました。」
そう照れくさそうに微笑むのは楽野聖火。暴走していた男だ。男と言っても中学生くらいだ。
「それで、お前は医者になんて言われたんだ。」
聖火の顔が曇った
「えっと…やっぱり、暴走をしていたんで魔力がなくなってしまって…もう魔力は使えないらしいです…」
聖火は俯きながらそう言う。現世に存在している魔力は人間の体内で作っているのではなく体内に取り込んだものを使っている為魔力が操れず暴走すれば使い果たしてしまう。
「それでお前は俺らになんか言いたいじゃないのか?」
そう問いかけると聖火は決意を込めた目で言った。
「僕、この件を通して僕は魔力が恐ろしい者だと思いました。でも、やっぱり今の世界には必要な物…そして僕は不思議に思ったんです。なんでこの世界には魔力があるのか、なぜこの世界には魔力を扱える人間と扱えない人間がいるのか、68年前の黒い渦には何があったのか。真実を知りたいんです。この世界の、この魔力の。だから…」
一呼吸置き言う
「僕を弟子にしてください。」