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79 衝撃、空を斬る

私はバランスを崩して床に顔をぶつけそうになったけど、雄太さんが両手で両脇を支えてくれた。思わず彼の肩にしがみついたら、ぎゅっと抱き寄せて首筋に軽いキス… 唇を這わせては離して、鼻先でうなじをなぞってまたくすぐるみたいなタッチが鎖骨を弄ぶ。恭平さんがヒップを優しく撫でながら舌で背筋を絡め始めると、もう私の感性は限界を超えてヒートアップしていく。体の中心が熱く渦を巻いて、二人の手や唇に触れられる度に大きな波が何度も全身に走っていく。いつの間にか私は両膝をついたままお尻を恭平さんに突き出し、おっぱいは雄太さんの胸に強く押し付けている。もっといじってとおねだりしているみたいで恥ずかしいけど、今まで経験したことのない感覚がもう痺れるように気持ちいい。太ももの間から熱い蜜が流れてほんの少しだけ残ったヘアを濡らしていく。


こんなことされたら、おかしくなっちゃう…


いきなりそこで恭平さんの体がスッと離れた。やん、今手を離すなんて、ずるい… 


「 じゃあ俺、シャワーを浴びるからしばらく雄太に可愛がってもらって 」

 恭平さんがバスルームに消えていく。気づいたら素っ裸の私と上半身裸の雄太さんが二人きりで向かい合ってる。急に正気が戻って来ると、今度は猛烈に羞恥心が襲ってきた。私は膝に絡まったパンティとスウェットを引っ張り上げて床に落ちたシャツを羽織った。雄太さんはそんな私をボーッと眺めてる。え、さっきまでのイラやしい雰囲気がなくなってる。中途半端にじらされた体はまだ疼いて、次のステップを待っているのに…


「 あの、もう服を着ていいですか 」

「 … 駄目だ 」

「 だって、そんなこと言ったって恥ずかしくて… 」

「 勃たない 」

「 はい?」

「 全然反応しない。これヤバいわ 」


 雄太さんはタオルに隠れた脚の間を見て、苦笑いした。何だ、この白けた空気… 

「 俺、服を着てくる。お前もちゃんと服を着ないと風邪ひくぞ 」

スタスタ居間を出ていく雄太さんは、私なんてもう眼中にない感じでそっけない。


 勃たないって、私が魅力ないってこと… ? ひどい。板胸だし、色気もないし、美人でもないけど一応女よ。それに自分から性教育するとか言っといて途中でやめるなんて失礼じゃない?考えれば考えるほど納得いかなくなって腹が立ってきた。悔しさで頬が熱くなってシーツの端を握りしめると、なぜが頭にあのGカップセレブが現れる。裸でベッドに寝そべる白い上半身に、小玉スイカみたいな2つの巨乳が揺れて… 現れた雄太さんの手を引っ張り耳元で何かささやく。あっ、雄太さんの手がスイカに伸びて重みを測るみたいにわしづかみして… ダメダメ、そんな触り方したらセレブ姫が感じちゃう。姫の大きな目はくっきりアイシャドウが入って, 清純さよりも謎めいた色気がみなぎってる。すごくきれい。私なんて… かなわない。


 急に心がしぼんで寂しさと悲しさがごちゃまぜになる。バカみたいな妄想だけど、こんな気持ちにさせられるならもう余計なお世話は焼いてほしくない。いいわ。私の処女なんて、あの変態爺に取られる位で充分よ。


 シーツに涙がこぼれて染みになる。スウェットの端で目をこすったら煙草の匂いが漂った。雄太さんは部屋に入るとベッドにドカッと座って煙を吐き出す。いつものジーンズとグレーのシャツが似合ってるけど今は何も見たくない。

「 どうした。気分が悪いのか 」

「 … なんでもありません 」

「 泣いてるのか?」

無遠慮に顎を掴もうとしたその手を私は押しのけた。

「 触らないで下さい 」

雄太さんの目が、変わった。不穏なスイッチが入ったのはすぐにわかったけどもう引き返せない。彼はポケットからポータブルの灰皿を出して乱暴に煙草をもみ消すと私の腕を無理やり引っ張って床に引き倒した。

「 痛い! 」

「 俺は泣いてる女と嘘をつく女が一番嫌いなんだ。言いたい事があるならはっきり話せ 」

「 話したってあなたは何もわかってくれないじゃない!」

 顔を上げずに、私は吐き捨てた。いきなり雄太さんの手が私の胸元に伸びて、スウェットを掴むと有無を言わせず顔を上げさせられた。

据わった目が私を睨んでいる。初めて出会ったあの時と同じ目だ。思い出して背筋が凍る。

「 優しくして聞いてりゃ調子こきやがって。だったらお前は俺の何がわかるんだよ 」

「 嫌、離して… 」

「 聞いてるのはこっちだ。いつまでもグズグズ泣いてるなら、俺は… 」

襟元を握る手に力がぐっと入った。怖い… !私は目をつぶった。


その時、横からスッと風が走った。次の瞬間いきなり現れた恭平さんは雄太さんを蹴飛ばした。黒いカーゴパンツに上半身裸の恭平さんは、倒れている雄太さんを見下ろしている。 いつのも穏やかな色が消し飛んだ目は燻った怒りで濁った赤に染まっていた。反動でよろけた私はやっとベッドにもたれたまま震えている。恭平さんの薄い唇が、静かに動いた。


「 青葉に触るな。このⅮV野郎 」


二人の間で空気が一気に熱を帯びていく。私は怖くて後ずさりしようとするけど、固まった体は動かない。



神様、どうかこの二人を止めて下さい。


わずかに感触を残した指先が、祈る思いで渇いたシーツの上を何度も走った。



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