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63狂宴の始まり~ついに罠に落ちる青葉~

内容に性的な描写があります。お嫌いな方は閲覧を遠慮して下さい。

「 どうして青葉が幣原卿のパーティーを手伝わなきゃいけないの?」

「 わかりません。私は部長から言われただけなので、どんなパーティーなのかも何をするのかも知らなくて… 」


イブを明日に控えた朝は指導部総出で馬の手入れや厩舎の掃除で大忙しだった。3分の1は個人所有の馬で馬主さんが面倒を見るけど、残りの100頭を26人のスタッフで12時までに完了しなきゃいけない。作業は2人一組で、私は如月チーフと一緒に馬の洗浄をやっている。馬は濡れると熱が体内に籠るからすぐに水気を切らないと体調を崩す。チーフが洗って私が拭き上げるの繰り返し。この手の仕事だったら誰よりも得意なんだよね。でもチーフはさっきからうわの空でパーティーの話ばかり私に聞いてくる。


「 卿は毎年クラブハウスを24時間借りて大きなパーティーをするけど職員を手伝いに呼ぶなんて聞いたことがないな… 」

「 そのシデハラさんってお金持ちなんですか 」

「 金持ちの上に超がつく。元貴族でうちの特別会員の中でも発言力のある方だけど… 」


 如月チーフはブラシを持つ手を止めて何か考えている。


「 チーフ、早く洗わないと馬が冷えちゃいます 」

「 青葉、それって今から断れないの?」

「 無理ですよ。そんなに心配しなくても大丈夫です。他のスタッフの人も行くんですから」


 もしかしたらイケメンと運命の出会いがあるかも… は内緒にしとこう。


「 パーティーは何時から?」

「 さあ、私は6時までに来てくれと言われてるだけです 」

「 何かあったらすぐに連絡するんだよ 」


 心配そうなチーフに笑って頷くと、私は馬を連れて洗い場を出た。もう、いつまでも私を子ども扱いするんだから… でも気遣ってくれる人がいるのは嬉しいな。そうだ、チップをもらったらお礼に2人のチーフにクリスマスプレゼントを買おう。イブの朝は早起きしなきゃ。


 甘えて鼻を摺り寄せる馬の頬を撫でながら、心はデパートのギフトコーナーを歩く自分を想像している。ああ。幸せ。暗く厳しい北国の冬とは全然違う12月の東京。せっかくだもん。楽しまなきゃ!馬を厩舎に入れると、私は洗い場へ連れていく馬を探しに冷たい風を切って走り出した。




 「 あいつがサド侯爵の変態パーティーに?一体何の手伝いで行くんだ 」


午前中で勤務は終了し馬場周辺はすでに人気はない。障害コースでの練習を終えた雄太が鞍を外すと、恭平は手綱を引き2人は並んで洗い場へ向かった。


「 部長に聞いたら、手伝いが足りないと言われただけで他は何も言われてないんだ。毎年コンパニオンが20人位くるからウエイトレスなんて必要ないし、料理はケータリングを一流ホテルから取ってるしどう考えても青葉がやることなんてないんだよ 」

「 もてなし係はモデルの卵に若手女優、ゲイビデオの男優にマッチョなGOGOボーイ。あの人の趣味は広すぎてついていけない。片桐卿も嫌って近寄ってないが表だって非難めいた口も利けないだろうしな」

「 仕方ないよ、幣原卿は侯爵で片桐卿は子爵だもの。位が違う 」

「 心配だな 」

「 ああ、ここへ入って最初の年に俺たちも呼ばれてひどい目に遭ったからね 」

「 広間でマリファナ片手に乱交し放題… 二人で2階の窓から飛び降りて逃げたけど、さすがにあそこまでひどい騒ぎはしないだろうが… 」

「 何かあったら連絡するように言ってるから、俺は今日ここに残るよ 」


 厩舎に馬を入れると,鞍を置き雄太は恭平を抱きしめた。やがて唇を重ねる二人に、のどかな冬の陽射しが陰影を与える。ポロシャツ越しに胸を撫でられ低い声で喘ぐ恭平の黒髪から、蔭りを秘めた色気が滴り落ちる。雫を浴び濡れた指先で雄太は恭平のベルトとジッパーを外して床に膝まづいた。


「 あっ、こんなところで… 駄目… 」

「 勿体ぶるなよ。しゃぶってほしいんだろ。ほら、いつもより喜んでるぜ」


 雄太の舌先が赤く充血した先端を刺激すると恭平は必死で耐えながら木の窓枠を両手で握りしめた。固く屹立したジュニアは雄太の口の中で弄ばれ、弾力を湛えて泳ぎ回る。キュロットと下着を外して凌辱の証も露わにされた恭平は抗しがたい快感と羞恥の波の間でもがき続ける。だがそれも限界に近い。


「 自分で腰を使え 」


甘く高圧的な雄太の声に目を閉じて切なげに首を振り抵抗する恭平はすでに目に見えない鎖で全身を縛られている。白く美しい皮膚に食い込む鎖の感触は優美で、性別を超越した恭平の美貌を芸術の世界へ昇華させていく。


 やがておずおずと腰を動かすと、雄太の愛撫を受けた分身は猛り狂って限界を迎える。だが鎖の主は許さず両手で腰を掴み激しく揺さぶった。


「  まだだ。 俺が許すまでイクんじゃないぞ 」

「 んんっ…… 、もう無理、許して… 」


 掠れた声の懇願はさらに雄太の嗜虐心を煽った。雄太は立ち上がると激しく恭平の唇を貪った。自ら誘い、雄太の灼熱も恭平の掌に委ねられると互いの指は激しいラプソディーを奏で合う。一瞬の空白の後、同時に果てた二人の熱を乾いた風がさらっていった。残ったのは、気だるくて満ち足りた沈黙と欲情の欠片を探そうと頬を寄せ合う男たちの余韻だけだった。


 虚飾と毒にまみれた夜が、すぐそこに近づいているのをこの男達はまだ知らない。






クラブハウスのドアを開けたけど誰も人は出てこない。どの部屋にもきれいな明かりがついているけど、今からパーティーが始まるような雰囲気はどこにも見当たらなかった。私は6時5分前に到着したけど、一体どこに集まればいいのか何も聞かされていない。もしかして、日にち間違えた?私はスマホを出して事務所に電話しようとした。その時、エントランスの右奥に可動式の小さなホワイトボードが目についた。何か書いてある。


 帝国乗馬倶楽部スタッフの方は3階貴賓室へ集合してください


貴賓室で打ち合わせでもあるのかしら… 確か入社してここを案内してもらった時に教えてもらった部屋だ。3階の右奥突き当り。もしかして私が一番遅かったかも?急がなきゃ…


私は木製の古びた階段を小走りで掛けあがった。




廊下を照らすシャンデリアはほの暗くて時代を感じさせる。3階に来たけど相変わらず誰もいない。私は貴賓室の重い扉の前に立つ。耳をすますけど、何の音もしない。どうしよう、なんか怖い。そっとドアノブをにぎって扉を引いた。明るい光に照らされた、ヨーロピアンの豪華な部屋。右側のテーブルにはオードブルとフルーツにワインクーラーがある。お客様が使うのかしら。中央にある暖炉をはさんで奥に大きなダブルベッドが見える。


「 あの、お手伝いに来ました北岡ですけど、どなたかいらっしゃいますか?」


返事を期待して私は部屋の中を見渡した。その直後、いきなり右肩ごしに何かが現れて私の視界を遮った。分厚い出刃包丁だ。鈍く銀色に光る刃先が、鼻のすぐそばまで迫ってきた。


 私の悲鳴が響く間もなく、突然目の前が暗くなった。黒い布が巻き付けられて頭の後できつく結ばれると、両手を後ろで抑えられて首を掴まれる。もがいて逃げようと足をばたつかせたら、凄い力で喉を圧迫された。


 声が出せない、苦しい、助けて…  


そのまま、私はずるずると部屋の奥へ引きずられていった。




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