62今年のイブはラッキーデー~雄太のプレゼントに絶句して二人だけの夜が始まる~
「 何ですか、この変態下着はっ!」
ケースを開いて私は大声を出してしまった。ブルーのスケスケベビードールに、おそろいのパンティ。丈がミニスカ並に短いし、パンティなんて布の面積が普通の3分の1もない。前が少し隠れるくらいで、お尻なんてほとんど全見え……
「いいから、早く着てこっちへ来いよ。風邪引くぞ 」
こんなの、着ても裸と同じじゃない! 私はベビードールを着てパンティをつまみ上げた。サイドはフリルがついた細い紐。履いてみると… やばッ、ヘアが両脇からはみ出してる。
「 無理です、前が小さすぎて、色々見えちゃってます。これサイズが合ってないですよ 」
「 違うの、それはそういうデザインなの 」
キッパリ言い放った声に押されて、私はベッドで待つチーフの前に立った。片手で胸、片手でおへその下を隠して顔は下を向いたまま。恥ずかしくて真っ赤になっている。呼吸が浅くなって、息をするたびにブラの紐についた可愛いリボンが揺れる。
「 横に座れ 」
落ち着いた声だけど、反論とか許さない圧がある。震えながら腰を下ろすと、チーフはいきなりシャツとズボンを脱ぎだして、履いてるパンツ1枚にになって立ち上がった。
細いけど、凄い筋肉。肩からウエストにかけて完全な逆三角形で、お尻も背中も日サロで焼いたみたいに真っ黒。パンツっていうか、私と同じ後ろが完全なヒモ状で、フロントは白いコットン風の布が小さく張り付いてるけど…
ヤバい、もっこり感、半端ない……
「 その下着を買った店でついでに買ったんだ。恭平が選んでくれたんだぜ。似合うだろ 」
「 ち、ちょっとこっちに来ないでください 」
ビビッて後ずさる私の腕を握ると、いきなりベッドに押し倒した。両手を頭の上で押さえて、右足はしっかり絡められてあっという間に動けないポーズ。小さなおっぱいも、恥ずかしい茂みも全部チーフに上から下まで見られ放題。必死に体をよじるけど、掴まれた腕はびくともしない。チーフはじろじろ私の下着姿を観察すると、急に優しい笑いを浮かべておでこにキスをした。
「 よく似合うよ。誕生日おめでとう 」
「 …… 離して下さい。恥ずかしい… 」
チーフは私の拘束をほどくと、両手でしっかり抱きしめた。
「 前から今夜は二人で過ごそうと思ってたけどちょっと恥ずかしくて、あんな荒れた態度になったんだろう。ごめん 」
「 チーフはお掃除したらすぐに帰るから、私とは一緒にいたくないんだって思ってました」
「 今晩泊めてとか恥ずかしくて言える訳ないだろ。俺は恭平みたいに背中が痒くなるセリフをさらっと口に出せるタイプじゃないんだよ 」
「 お客の前ではあんなに愛想が良いのに… 」
「 仕事とプライベートは別。恭平に告白するのだって8か月迷ってやっと決心したんだぞ 」
チーフは少し不貞腐れて仰向けになった。こういう時は素直で可愛いいのに。そんな顔を見せてくれるくらい、私に心を許してくれているなら何となく嬉しいな。私は引き締まった胸に甘えるみたいに顔を摺り寄せた。
「 プレゼント、ありがとうございます 」
チーフはフッと笑うと、私の手を取って下の方へ……
「 ダメ… そんなとこ触らせないで… 」
嫌々をする私に構わず、チーフは手を小さな下着の上に押し付けた。柔らかくて、小さく丸まってる… これが男の人の…… ?
「 ダメだ。これっぽっちも反応しない。俺も本格的に女は受け付けなくなったかな 」
笑いながら手を元に戻すと、チーフは私を胸の中に抱き寄せた。せっかくこんなセクシーランジェリーまで準備してくれたのに、私じゃ感じないんだ。だって男の人だけど如月チーフは断然色っぽいもん。何だか、悲しいな…
「 私が魅力ないからですか… 」
「 そんな事はない。いつかお前にふさわしい若い男が現れる。その時までは誰にも触れさせずに取っておくんだ。俺たちみたいなゲイのおっさんじゃなくってな」
「 私、恋人なんていりません。今でも充分幸せです 」
本音だった。私とチーフは見つめ合った。チーフの目は優しいけどどこか寂しそうだった。その雰囲気が、部屋に飾っていた写真の中のお母さんと少し似ている。切なくて、胸がキュッと締め付けられる。
「 今日は、このまま眠ろう 」
そうつぶやくチーフに頷くと、もう一度思い出したように私を両手で強く抱きしめた。
19の最初の夜が額に軽くキスをして、私は静かに目を閉じた。
イブまであと3日に迫った夕暮れに私は総務部長に会議室に呼び出された。
「 クリスマスパーティーのアシスタントを私が? 」
「 そうなんだよ… 特別会員からの頼みだから無下に断れなくてね 」
総務部長は困り顔で残り少ない毛の生えた頭を撫でる。
「 23日の午後から職員はオフだと言っても幣原様は引かなくて… クラブハウスを個人的に借り上げて毎年派手なお祭り騒ぎをされるんだよ。君の他に女性スタッフを数人貸してほしいと言われてね、参ってるんだ 」
「 私、お手伝いします。23日なら午前中の勤務の続きですから。何も予定はありませんし 」
「 大丈夫かい。まあチップは弾むとおっしゃっているから小遣い稼ぎと思って割り切ってくれたらありがたい」
部長はしきりに恐縮している。でも、内心私はありがたかった。どうせ予定もないし、久美子に連絡したらもう友達と食事するからダメとかなりの塩対応受けたし。お金をもらって帰りにケーキを買えば別にオーケーだ。24日は好きなだけ寝て、ダラダラ過ごそう。彼なしのイブなんて普通の休みと一緒だもん。部長は突然真顔で声を潜めた。
「 幣原様はなかなか気難しい方だから気をつけなさい。まあ、直接お声がかかる事はないだろうけどね 」
私はアパートへ戻る道を歩きながら、スマホの中に保存した写真を見ていた。誕生日パーティーの時に自撮りした如月チーフとのツーショットや料理やあれこれ。ふと1枚の写真に目が釘付けになった。進藤チーフと如月チーフが煙草を手に笑い合ってる。良い表情だ。二人ともリラックスして、打ち解けてる。
やっぱり、この二人の中に私がいるのは不自然だよね。進藤チーフの言う通り、早くボーイフレンドを作った方がいいのかな。もしかしたら、パーティーに誰か運命の人がいたりして… ああ、何だかテンション上がってきた。よし、その日はとっておきのアイシャドウでメイクしちゃおうっと。
私はスマホをしまうと、街灯に照らされた道を走り出した。木枯らしも何だか熱い頬に気持ちいい。そうだ、きっとその日はいい事があるに違いない。
神様、私にラッキーをくれてありがとう。




