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㊶怒りの向かう先は…~不器用な私だけど、それはヒドイ~

「 申し訳ありません… そういうつもりで言ったのではないんですが… 」


「 じゃあどういうつもりよ! 結局私がデブだから悪いって言いたいだけでしょ!」


「 デブなんて言ってません! 痩せた方がより良い騎乗ができるとアドバイスしただけで… 」


「 そもそも目的がダイエットなのに、そんなアドバイス意味ないじゃないの!もういいわよ!マネージャーに文句言ってくるわ!」


「 待って下さい、せっかくのレッスンが始まるのに… 」


「 何よ、何よ、高いお金を払ってこんな失礼な態度取られて…… 」


飯森さんは手をハンカチで拭きながら涙ぐんでいる。なんか、完全に悪役になってる私。ずぶ濡れのまま途方に暮れていると、ざっと大きな背中が私の前に立ちふさがった。


「 飯森さん、どうしましたか?何かお困りなことでもありましたか?」


 不自然なくらい明るい、進藤チーフの声。一体、どこから現れたの?


「 このチンケな小娘が、私の事をデブだから乗馬はうまくならないって言ったのよ」


「 そんなことはありません。昨日のレッスンでも素晴らしい駈歩を出していたじゃないですか。同じ時期に入った人の中でも、飯森さんは成長が早い有望株ですよ 」


「 だって… この子がレッスン後のおやつも食べたらいけないとか上から目線で説教するから 」


「 ちょっと待って下さい!私そんなことは一言も言って… 」


 進藤チーフが私の口を後ろ手で塞ぐ。振り返って私を見た。


 すっげー、殺気立った怖い顔。

「お前はしゃべるな」と全身でテレパシーを送ってくる。ひいいい…


「 とにかく飯森さん、3級レッスンを受けにいきましょう。お詫びに、今日の夕方特別に私の個人レッスンの時間を設定しますから、そこでゆっくりご指導させていただきます 」


「 でも先生のレッスンは3か月のキャンセル待ちって聞いたわ 」


「 体験クラス用のサークルが5時半から開いています。私の休憩時間を使いますんでお気になさらず」


「 本当?嬉しい! 私先生のレッスンを受けるのが夢だったのよ!」


「 光栄です。さあ、一緒に馬場へ行きましょう。チンケな小娘は、後で私が叱っておきますから」


 チーフはさっさと馬を引っ張って、大喜びの飯森さんと馬場へ降りて行った。所要時間、わずか3分。なによ、あのおばさん、私には意味不明の悪態をついたのに、チーフにはデレデレなついて。しかもチンケとかどういう意味?納得いかない納得いかない…


馬を連れて岸谷先輩がとなりの洗い場に入ってきた。馬をつなぎながら、冷めた目でチラッと私を横目で見る。


「…… とりあえず、着替えてきたら?キュロットが濡れて、パンツの線が丸見えだよ」


「 あっ…… !うそっ! 」


一気に顔が真っ赤になった。お尻を隠して猛ダッシュで管理棟に走る。


どうして私がこんな目に合わないといけないの…


進藤チーフなんて嫌い、大嫌い、あんなに優しく抱きしめたり、私を小ばかにしたり、何を考えているのかわからない。もう信用出来ない。


私は怒りと恥ずかしさで頭に血が上ったまま、馬場のど真ん中を一気に突き抜けた。




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