㉕青葉、いざ帝国乗馬倶楽部へ~田舎のネズミがセレブの社交場へ~
家族も家も何もかも失った青葉。ついに再起をかけて東京へやってきます。待ち受ける鬼上司雄太。初恋の相手恭平。一流乗馬倶楽部へ集う奇抜な老若男女の渦中で生き残れるか?
物語は第2章へ。今回は短いですが、どうぞ楽しんで下さい。
まだ3歳くらいの私が、父さんと一緒に馬に乗っている。
お日様が眩しくて、柵の下にタンポポの黄色い花が揺れてる。父さんが支える手綱を両手で握りしめて、私は大声ではしゃいでいる。
「 青葉はうまいなあ、ほら、お馬がちゃんと曲がってるよ 」
本当は父さんが動かしているのに、小さな私は嬉しくて何度も叫んだ。
「 今度はあっち、あっちに行く! 」
「 青葉は大きくなったら、パパを超えるライダーになるよ。パパと一緒にたくさん練習しよう。ママも応援してくれるからね」
遠くから声がする。母屋の前で、手を振っているのは、母さん。
「 ママがいる! ママのところへ行こう! 」
私は馬の鞍を両足でばたばた叩くと、馬はゆっくりと母さんの方に頭を向けた。父さんは私の頭を撫でて笑う。早く、早く、母さんが待っている。
ガクンと体が前に倒れて私は目を覚ました。後部座席に座っていた私は寝ぼけて、頭がうまく反応しない。
「 いやあ、車に乗ってずっと寝てましたね。この後すぐに騎乗ですけど大丈夫ですか?」
運転席から心配そうにこちらを見ているのは、リモートで会った人事部長の川野さんだ。空港に私を迎えにきてくれた。
「 はい、大丈夫です。もう着いたんですか ?」
「 もうすぐ正面玄関ですよ」
黒い車はゆっくりと坂道を上がって回転し、石畳の上で止まった。誰かがドアを開けてくれる。降りると、そこは別世界だった。




