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⑳ 2人の関係~雄太と恭平のパワーバランス~

厩舎で天雅との密会を目撃された気弱な青年は、数日後に倶楽部を退会した。噂は瞬く間に広がり、天雅との火遊びを愉しんでいた紳士達はこぞって黙り込んで、秘密のお楽しみの幕を閉じた。それでも天雅にのめりこんでいた何人かの会員は何とか関係を続けるべくアプローチを試みたが、当の天雅はもう誘いには乗らなかった。雄太からひどい折檻を受けたからだと、彼らは口々に雄太を罵ったが表立って非難することは到底できなかった。雄太を苦々しく思っている人間は上層部の役員や古い指導員にもいたが、倶楽部一番の稼ぎ頭かつ競技選手としても華やかな実績を上げる雄太に誰も口出しは出来ない。むしろ天雅の裏稼業をうまく成敗してくれたことで、倶楽部としては手を汚さず懸案事項が片付きいままでの問題行動のつけを少しは払った形となった。


何しろ、あのワンマン女会長に好き放題ものを言えるのは雄太だけなのだ。それが許されていることが、雄太に圧倒的な存在感を与えていた。


しかし、その雄太が唯一頭が上がらないのが恭平だった。




「なあ、まだ怒ってんのか。もう1週間も俺の家に来てないじゃないか、そろそろ機嫌直してくれよ」


特別会員専用厩舎でサラブレッドの馬体を洗う恭平の横で作業を手伝いながら、雄太はしきりに恭平の様子をうかがう。恭平は無表情で馬の背中にホースで水をかけ、雄太の方には目もくれない。


「雄太はもう勤務が終わったんだから帰れば? それに俺は別に怒ってなんかいません」


「 天雅の件は俺からちゃんと事情を説明したんだからもういいだろ」


「 説明したところで、やったことが変わるわけじゃないでしょ」


「 あいつが調子に乗ってるの知ってたから、お灸をすえてやるいいチャンスだったんだよ」


「だからって、キュロットの中に手を突っ込む必要があるんですか?」


「それは、恭平のことで茶化されてカッとなったからしょうがなかっただけで……」


「 岸谷はたしか21になったばかりだよね。たまには若い子の張りのあるお尻を触りたくなるのもわからなくはないですけど」


「おい、言っただろ、俺、マジで全然勃たなかったぜ、あんなマセガキつついて喜ぶ趣味なんてないって!」


恭平はいきなりホースを地面に叩きつけた。


「 俺はね、ユウのそいういところが嫌なの!」


詰め寄られて、雄太は返す言葉もなく立ち尽くした。


「 その気もないのに、相手の気持ちも考えないでやりたい放題、岸谷がどんな風に思うか、考えてないでしょ?あの子、最近ユウのことチラチラ見てるんだよ。ああいうすれたタイプは怒られたあとに優しくされたら、妙に勘違いするんだよ、それくらいわからないの?」


「…… もしかして、お前焼きもち焼いてんの?」


恭平はムッとして大きなタオルを雄太に押し付けた。


「そんなに残業したいなら、続きはお願いします。俺はナイターレッスンがあるんで戻るからね」


背を向けた恭平を、雄太は後ろから抱きしめた。


「あんまり焦らすと、またロッカールームで無理矢理後ろから打ち込むぞ?結構喜んでたろ」


恭平は一つ息をついた。雄太が手を腰回りにずらそうとした瞬間、恭平は右手で雄太の股間を一撃、捻り上げる。


「あ、ががががががががががががが!」

背中を丸めて、洗い場の床にうずくまる雄太に恭平は冷めた一瞥をくれた。


「やれるもんなら、やってみろや、オラ」

恭平は速足で緑深い小道を歩いていく。雄太は小刻みに震えながら立ち上がることすらできない。


 繋がれた馬は、不思議そうに恭平と雄太を見て、小さくあくびをした。




                              続

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