⑯ 雄太の容赦ない責め~「顔は止めて!」天雅の叫びを無視して続く、雄太の残酷な折檻~
雄太はゆっくり天雅に近づいた。天雅の小柄で華奢な体を見下ろす雄太の目は無表情であるが故、不気味さと不穏さを容赦なく天雅の上に降り注ぐ。天雅は内心ヤバいと思いながら、恭平のことを突かれて癪に障った雄太の表情が小気味よくて、横柄な上司からマウントを取れたことに満足もしていた。だが雄太が天雅のすぐ目の前まで来て止まった時、顔は明らかにスイッチが入った状態だった。
これ以上ここにいては何をされるかわからない。天雅はスッと視線をそらして露骨に顔をそむけた。
「煙草の匂い、嫌いなんですいません」
その流れで出口へむかって身を翻そうとしたが、雄太は天雅の腕を引っ張り壁に押し付けると顎を掴んでねじ上げた。痛みで一瞬顔を歪めたが、天雅はすぐに歯を食いしばり険しい視線を雄太にぶつける。二人はしばらくにらみ合った。
「 男のくせに、化粧なんかしてご苦労なこった 」
「 このくらいのメイク、高校生でも普通ですよ 」
「 脱毛、エステ、髪の毛いじって爪も磨いて、お前程度の安月給じゃ大変だろ? 」
「 自分の金どう使おうと、チーフには関係ないでしょ…」
雄太は更に力を入れて天雅の顎をひねり上げた。
「い、痛い!」
「 クラブハウスの個室にスケベな会員のおっさん引きずり込んで小遣い稼ぎやってるの、気づいてないと思ってたのか?ここはハッテン場じゃねえんだよ。お前のせいで俺らまで妙な目で見られるんだぞ、調子に乗るのも大概にしろ!」
天雅は両手で雄太の腕を握り、何とか振り解こうとするがびくともしない。
「離せよ…… 俺から声かけてる訳じゃない、お客がせがむから相手してやってるだけだ」
「お前、確か施設の出身だよな。身寄りがないから金にしがみつくのは結構だけど、薄汚い金で懐温めても、下品に拍車がかかるだけだ。家かえって、鏡でよーく自分の顔眺めてみろよ。この下種野郎」
天雅は足で雄太の脛を蹴飛ばした。すかさず天雅の頬にビンタが飛ぶ。
「顔は止めて!」
天雅が思わず大声をだすと、雄太は天雅を後ろ向きにして両腕を背中で固定し、両足を開かせブーツの先で踏みつけた。空いた右手で、天雅の前髪を甘掴みし、両手を抑えた左手で天雅を壁に押し付ける。薄くルージュを引いた天雅の口から一筋の血が流れた。
「へえ、あんたこういうの好きなんだ。如月チーフ、マジかわいそー、SMとか俺でもお断りだもんね、ホント、見た目とやることまんま同じで分かりやすいし、下種は俺じゃなくてあんただろ、クソが!」
雄太はフンと鼻で笑った。髪をつかんでいた右手を離し、天雅のポロシャツの中に入れて軽く乳首の先端に触れた。あっ、と天雅は小さく喘いで軽く腰を突き上げた。中指と人差し指ではさんで刺激を加えると、瞬く間に反応して硬くなる。雄太は天雅の耳の裏に舌を這わせながら息を静かに吹きかけた。必死で頭を振り抵抗するが、四肢を押さえられて動くことは出来ない。男のそれとは思えない細い手首を無骨な手で締めつけながら、指先は優しく敏感な蕾を刺激する。鎖骨の窪みに顔を埋めて静かな愛撫を唇で繰り返しながら、雄太は徐々に大人しくなっていく天雅の様子を冷静に観察していた。
「…… 好きにすればいいじゃん。変態には慣れてるから、これくらいで感じるほどピュアじゃないし」
「金を払えばお客でただなら変態か。どうせなら楽しめよ。ご奉仕するばかりじゃつまらないだろ」
「楽しいなんて思ったことないよ。こんなの、苦痛以外の何物でもなかった」
雄太は右手で腹の当たりをそっと抱いた。薄い皮膚は汗ばんでいたが冷たかった。目を下に落とすと、握りしめた拳は小さく震えている。
「初めて男を覚えたのは14歳。相手は施設の理事長だった。お金をくれるから自分から抱かれにいったけど、いつも気持ち悪くて終わったら吐き気が止まらなかった」
なぜ身の上話をするのか、天雅は自分でもよくわからなかった。雄太は天雅の首筋に唇を押し当て温もりを伝えながら、耳たぶを軽く噛んだ。天雅は徐々に息遣いが荒くなり、雄太の手の動きに合わせて切なげに腰をくねらせる。
「この乗馬クラブを勧めたのも理事長だった…ここは東京の金持ちが集まるから……その気になれば、もっと稼げるって……」
駄目、こんなに優しく触られたら、感じてしまう…
天雅の焦りがますます感度を上げて雄太の指先に反応していく。対して雄太は両腕を拘束する手に荒く力を籠める一方で、愛撫する手と舌は愛おしく天雅の性感帯を包み込む。
だが雄太が脇を撫でていた手を前に回してベルトに手をかけると、天雅はハッと目を見開いた 。