表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

フラン王太子妃と、神父様のサイン本 シリーズ

サイン本は、不幸な未亡人の過去を浄化し、その娘に新しいお父さんを贈ります。

作者: 甘い秋空



「私は、幸せになってはいけない」

「でも、この子に罪はない、、、」


 3歳になった娘の寝顔を見ながらつぶやきます。


 私、ローランは、王太子様と王太子妃様に、たいへん申し訳ないことをしてしまい、この子の父親とともに王都を追放されました。


 追放の途中で、この子の父親が亡くなり、この街の教会に拾われ、この子を産みました。




1.未亡人 ━━  


「女手一つで娘を育てるのは、想像以上に大変ですね」


 昼は、教会で子供たちに読み書きを教え、夜は、刺繍で生計を立てています。

 楽な生活ではありませんが、教会のおかげで、なんとか食べていけてます。


 王都の学園での勉強が役立つとは、若い頃は思っていませんでした。

 自慢だった金髪も、すっかりボサボサです。



「また朝が来たのね」


 教会で子供達に勉強を教えている時は、全てを忘れられます。


 黒の祭服で銀髪のおじいさん神父様も優しいですし、見回りのゴリラ風の騎士様も優しいです。



 小さいけれど、幸せを感じます。


 でも「私は幸せになってはいけない」不貞を働いた罪人です。




2.乱暴者 ━━  


 最近、この街では、乱暴者たちに怯えています。

 彼らの裏には、男爵家の嫡男夫婦がいます。


 あの夫婦は、子供ができないため、お互いに愛人をつくり、ワガママ放題です。

 街で、見た目の良い男女を見つけると、非道な手を使って、愛人にしています。



 噂をすれば、教会に、街の乱暴者たちが来ました。


「美人さん、男爵の愛人にならねぇか? いい生活ができるぜ」


 私が狙いですか!


「断ります」


「その子供達が痛い思いをするぜ」

「俺たちに勝てると思っているのか」


 これはマズイ状況です。


「負けると分かっていても、私は二度と逃げません!」


 私は、もう、弱い自分には、、、



「何をしている!」

 騎士様の声です。


「ゴリラだ! 逃げるぞ」

 乱暴者たちが逃げて行きます。


「「先生」」

 子供達が駆け寄って来ました。


「大丈夫、騎士様が助けてくれました」

 私は足が震えています。


「逃げられた」

 騎士様が戻ってきました。


「これからは、巡回を増やします」


「ありがとうございます」

 不覚にも泣いてしまいました。


 子供達や騎士様が私を心配してくれます。




3.騎士様 ━━  


「お母さん、これ、おじいちゃん神父様から、絵本もらった」

「そう、良かったわね」


「中に落書きがあるの」

「それはサインっていうのよ」


「どんなお話?」


「女の子が、神様から新しいお父さんをもらうの」

 娘が、キラキラと目を輝かせます。


「え・・・」



 ◇



 また、朝です。


 騎士様が、真剣な顔で、教会を訪ねていらっしゃいました。


「私は、この街の男爵家の次男です。結婚をあきらめ、騎士を仕事としました」

「しかし、両親から、兄を廃嫡するから、男爵家に戻ってきて欲しいと言われています」


「ローラン嬢、どうか、私の妻になって、一緒に来て頂きたい」


 突然で、考えがまとまりません。

「少し、考えさせて下さい」




 娘に、それとなく聞きます。

「あの騎士のおじちゃんは好き?」


「うん、ゴリラおじちゃん、大好き! お母さんは?」


「うん好きよ」




 おじいさん神父様に悩みを聞いて頂きます。


「私は、不貞を働いた罪人です」


「知っています。貴女が騙されていたことも。そして、毎日のように懺悔していることも」

「もう、貴女の罪は清められました」


 神父様は、私の過去を全て知っているようです。



「私は、騎士様が好きです」


「でも、平民に落ちた私は、保証人がいませんので、貴族様の妻にはなれません」

「親子で、別の街へ移ろうかと悩んでいます」


 思いのたけを吐き出します。


「保証人は、すでにいますよ」

「貴女を教会に受け入れる時、王太子妃様が、貴女の保証人になっていますよ」


「王太子妃様が? 王太子妃様は聖女という立場から、私を許したのでしょうか?」


「あの方は、私たちが仕える本物の聖女様です」

「しかし、保証人の件は、聖女とは関係なく、ただの脳天気でしょう」


「娘さんに渡した絵本に、サインはありましたか?」

「あれは、神のサインですよ」




 日が傾いた午後、騎士様に会いました。


「騎士様、どうか、私の過去を聞いて下さい、、、」


 日が沈みます。


「ローラン嬢、ゆっくりと、幸せになりましょう」




4.神様 ━━  


 空が、透き通るような青さです。

 今日は、私の全てを受け入れてくれた騎士様との結婚式です。


 二人だけで? いえ、娘もいます。

 そして、男爵家のご両親も来てくれました。


 おじいさん神父様の前で、生涯の伴侶となることを誓います。


 式が終わった時、男爵家の執事さんが、かけこんできました。

「旦那様、嫡男様ご夫婦が亡くなりました!」



 また、波乱ですか?

 でも、娘が抱いて離さないサイン入りの絵本が、笑っているようです。


 私の人生は、いつも神様が見ていると、そう思えます。

 今度こそ、神様に見られても恥ずかしくない人生を歩みます。



「神に、皆さんの願いが届きました」

 神父様が神に感謝しています。



━━ FIN ━━



お読みいただきありがとうございました。


よろしければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品を評価して頂ければ幸いです。


面白かったら星5つ、もう少し頑張れでしたら星1つなど、正直に感じた気持ちを聞かせて頂ければ、とても嬉しいです。


ありがとうございました、読者様のご多幸を祈願いたします。


この短編は独立していますが、本編「聖女は謙虚に成り上がる!婚約破棄の原因は、私が平民だから?あんたの浮気が原因でしょ?」https://ncode.syosetu.com/n8552id/ と一緒に読まれますと、さらに面白いと思います。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ