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バカと言う名の危険人 プロファイル7 ー機内ドクターコールー

今回は飛行機内でドクターコールがあった時のお話よ。


アユは同僚のリリスとラスベガスへ旅行に行ったの。

リリスは乗り物酔いが酷いからと言って、座席につくなり酔い止めの薬を飲んで眠ってしまったの。

アユは特に気にすることもなく、映画を見たり機内食を食べたり、長時間のフライトを楽しく過ごしたわ。


旅行も予定していた通り観光箇所を見て回ったり、ガイドブックに掲載されているお店を見たり、映画に出てきたレストランへ行ったり、そしてゴージャスなホテルライフを楽しんだの。

カジノではこれといった結果は残せなかったけど、大興奮だったし煌びやかな空間を目一杯楽しんだわ。


帰りの飛行機のチェックインをするとき、長々と待たされた結果、予約していた席がオーバーブックで乗れないって言われてしまって、『えぇぇぇぇ~!!!』『どうしよう!!!』って思っていたら、リリスが横で涼しい顔をしているの。

何でこんなに涼しい顔をしているんだって思っていたら、『ビジネスクラスが空いていますのでご案内します』ってアップグレードしてくれたの。

アユは『ラッキー☆』っと思いながら帰路についたわ。


せっかくビジネスクラスにアップグレードしてもらったのに、リリスったらまた乗り物酔いの薬を飲んで寝てしまったの。

アユは『そういえば、リリスと一緒に韓国へ行った時もアップグレードしてもらったような・・・』『あの時もリリスのマイレージカードを確認して、飛行機内でも前の席へどうぞ!って言われたけど、友達が一緒だからってリリスが断ってしまったのよね』と考えていた。


アユは色々と考えを巡らせているうち、『何でリリスが!』と苛立ちを覚えた。

そして、アユは『リリスを見ているとイライラするのよね!』と思うようになった。

アユの苛立ちは嫉妬によるものだったが、アユはそのことには気づいていなかった。

若しくは、アユが嫉妬をしていることに気づいていてもそれを認めたくなく余計に苛立っていた。


どういうわけか、アユは苛立ちと嫉妬からリリスを陥れることを考えついた。

水が入ったペットボトルのキャップを緩ませリリスの手に持たせた。

寝入っているリリスのスカートは水が染み、手からペットボトルが滑り落ち、ドンっという音と共に床に水がこぼれた。

アユはその瞬間『キャーーーーーーーーーーー!』という悲鳴を上げ、『リリス!リリス!大丈夫!』と声をかけた。

叫び声を聞いた周囲の乗客から騒めく声と、客室乗務員が駆けつける足音が響いた。

アユは『リリスが薬を飲んだら・・・』と涙を馴染ませて見せた。

客室乗務員は機内アナウンスで『お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?』と緊急コールをかけた。

しばらくすると、機内に乗り合わせていた医師、看護師、歯科医らが数名駆けつけてきた。

医師がどんな薬を飲んだのかをアユから確認し、リリスの脈を取り、呼吸の確認をした。

看護師と客室乗務員が数名寄り添い、診察の様子とリリスを見守った。


診察の結果、『眠っているだけのようです』だった。


その一瞬の間のアユの表情を客室乗務員は見逃さなかった。

客室乗務員は保安要員であることを説明し、安全確認のため、その場で何があったかアユに再確認をした。

アユは『ただ、急に眠ってしまったから・・・』と両人差し指の先をツンツンしながらモゴモゴと答えた。


リリスは相変わらず眠っている様子で、医師は『熟睡しているようだから、目を覚ましたら話を聞いてみましょう』といい、乗り合わせていた医師と看護師数名が巡回をし様子を見ることにした。


アユはなかなか目を覚まさないリリスにヤキモキしながら、自らの愚かさをどう挽回しようか、どのようにリリスに責任を押し付けようかを考えていた。


数時間後、リリスがやっと目を覚ました。

リリスが目を覚ましたことに気づいた客室乗務員が水を渡そうと準備をする前に、リリスはバッグからペットボトルを取り出し、水をグビグビと飲んだ。

そして客室乗務員の問いかけに『酔い止めの薬を飲んで眠っていた。アユに酔い止めを飲むことは話をしているし、眠ていても気にするなと言っておいたが・・・』と答えた。

医師からの質問に対しても『酔い止めを飲んで眠っていた』と言い服用したクスリの空き瓶を見せた。


リリスはとなりで固まって動かないアユの姿を見て、アユへ『何かしたのか?』と問いかけた。

アユは黙っているだけだったが、客室乗務員『何だと思いますか?』と質問したため、『分からないから聞いています』と答えた。

リリスは続けて『ただ、状況から察するに私の具合が悪いと騒いだのでは?もしくは具合が悪いと言えば前の席に案内してもらえるとでも考えたのではないかと思います。』と言った。

リリスはユアの表情が一瞬こわばったのを見逃さなかった。

客室乗務員は『なぜそう思いますか?』と質問した。

リリスは『以前に韓国に行った際、知り合いがいたため前方の席に案内されたことがあった。でも、友人が一緒だからと断ったんだ。その後しばらく、なんだかんだとずっと騒いでいて、あの手この手を使って前方の席に行く方法を考えていたようだった。今回は予約していたエコノミーが満席だったんだ。運よくビジネスクラスに通された。アユの様子を見ていると韓国へ行った時のことが思い出された。』と答えた。

アユはただじっと黙って座って一点を見つめていた。

リリスには『演技』のように見えていた。


その様子を見ていた医師は『受け答えもしっかりしていますし、問題はないでしょう』と言った。

リリスも『ただ酔い止めを飲んで眠っていただけだ』と改めて答えた。


飛行機を降りた後、アユは『父が迎えに来てくれることになっている』と言いその場を後にした。




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