婚約破棄宣言阻止の呪い
多くの貴族が参加するパーティの最中、王子が声を張り上げて婚約者の名前を叫ぶ。それによって人々は何事だと王子に注目すると王子が婚約者とは違う令嬢と腕を組み、その状態で婚約者を睨みつけている。
「お前との婚約を」
がこん。
王子が婚約破棄を高らかに宣言しようとした時。
王子のアゴが外れた。
突然アゴが外れた王子は大きな口を開けて呻き声を上げて慌てる。
浮気相手の令嬢は突然王子がアゴが外れた事に驚き。
婚約者は突然自分の名前を叫んだ王子のアゴが外れた事に驚き。
パーティ参加者達は王子のアゴが外れたのを見て動揺する。
遅れてやって来た王は何が起きたのか最初はわからなかったが、王子のアゴが外れて皆が騒いでいるのを見てある事を思い出し、ため息をついた。理由に心当たりがあったからだ。
◆◇◆◇◆
十数年前。
王と王直属の魔術師は二人っきりで晩酌をしていた時の事。
二人は学生時代からの付き合いであり、大人になった後もこうして酒を飲み交わしながらお互い愚痴を言い合ったり雑談をしている。
この日も王は魔術師にこんな愚痴をこぼしていた。
「聞いたか? 遠い国の王子がパーティをしている時に婚約破棄したって。」
「聞いた聞いた。すごい大騒ぎになって一時国が傾いたってね。」
「そうなんだよ。それ聞いてさ他人事じゃないよなーって思ってさ。」
「あー。将来君の息子もそうなる可能性がないわけじゃないもんねー。そうなったら怖いなー。」
「だろー! そうならないようにちゃんと教育するけどさー! 万が一ってあるだろ?」
「君のお兄さんも婚約破棄しようとして大変だったしねー。あの時君も苦労していたし。」
「やめろ思い出させるな! あの時の事は闇に葬り去る歴史だ!」
ほかに人がいない事と酒が入っているせいで二人の口調は砕け会話の熱が上がる。
「じゃあさ。じゃあさ。そうならないようにしようよ。」
「え? どうやって。」
「呪いだよ。城全体に呪いをかけるんだよ。そうだな。あっ婚約破棄宣言しようとしたらアゴが外れる呪いなんでどう?」
「…お前。天才か?! 天才だった!」
「天才でーす!」
二人とも酒のせいで思考能力が低下している状態だ。
その上魔術師は自他共に認められる使い手の魔術師だ。へべれけのままでも魔法を使う事に支障はなかった。
こうして酔った勢いで城に婚約破棄宣言しようとしたらアゴが外れる呪いがかけられた。
◆◇◆◇◆
王が部下に王子を控えさせよと命じようとした時、騒ぎが大きくなった事に気がつき騒ぎの原因の方を見るとそこには王子と同じくアゴが外れた浮気相手が慌てていた。代わりに浮気相手が婚約破棄宣言しようとしたのだろうと察した王は王子と浮気相手を別室に連れて行けと命じた。
王子と浮気相手が連れ出された後、王は急いで後始末をした。
パーティ参加者達から王子は何を言おうとしたのかと聞かれても誤魔化したり、婚約者には後日話し合いの席を設けると約束して何とか騒ぎをおさめた。
その後。
婚約破棄宣言しようとした王子と浮気相手は王から謹慎を命じられ、相応の罰を受けた。
婚約者に対しては謝罪をし慰謝料を支払って婚約解消をしてもらい、元婚約者には別の相手を紹介した。幸いな事にこの二人は上手くいき、数年後には円満な結婚をした。
王と魔術師は城に呪いをかけた事が宰相にばれて怒られた。