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私と彼等の日常は、あまりにも非現実的すぎる(正位置編)

引っ込み思案な彼の警告(塔の正位置)

作者: 死神の嫁

見えるから、怖い

「ごめんなさい……ごめんなさい……」

「よしよし、もう大丈夫だよ……」


 ある日の夕方、私は泣き虫な彼を慰めていた。泣いている理由は些細なもので、今日の天気が雨だったから。彼は自分のせいで晴れにならなかったと言って泣いているのだ。

 彼は『塔』の正位置。カード番号は16で、主な意味は『崩壊・絶望・失意に陥る』など。別名『暗示カード』とも呼ばれており、彼が出ることで先に待っている試練を知ることができるのである。

 しかし、彼は勘違いをされやすく、彼が出ると不幸になると思われがちなのである。そのせいかは不明だが、彼の性格はかなり暗く引っ込み思案である。


「タワーさん、大丈夫……大丈夫……」

「主……ごめんなさい……!」

「謝らなくていいんだよ、タワーさんのせいじゃない。これは自然現象なんだから……」

「僕のせいで……また誰かが不幸になってしまう……ごめんなさい……!」


 彼は時々、見知らぬ人物の不幸を察知してはこうして自分のせいにする。それをなだめるのが私である。


「それは違うよ、タワーさんはその人に起こることを誰よりも早く知ることができるだけ。それに今日雨が降る事は、昨日の天気予報でも言っていた事じゃない」

「でも……僕には何もできない……!」

「タワーさんには、伝える力がある。私たちには分からないことが、危険がいち早く分かる……そのおかげで私達は問題への対処方法が分かるの。だから、自分を責めないで逆に誇りを持ってほしい……それはタワーさんにしか出来ない事なんだから」

「僕にしか……?」

「そうだよ、タワーさんにしか出来ない。私はね、例え他の人がタワーさんを嫌っても、貴方が好き。人に起こる不幸が分かってしまうのって、凄く怖い事だと思うし、私だったら耐えられない。きっと目を背けて見えないふりしてしまうと思う……」

「主……」

「でも、タワーさんは違う。きちんと向き合って、私達に伝えようとしてくれている。理解されなくても、一生懸命伝えようとしてくれている……そんなタワーさんの事、凄く尊敬しているし大好きなの」


 私が伝え終わると同時に、彼は子供のように泣きじゃくった。不幸になる人も辛いが、それを知っていて何もできない彼も辛いのだ。自分を責めることしか出来ず、悔しくて苦しくて……彼はその人と同じように苦しんでいる。


「僕……主のことやみんなのこと、守れるかな……?

こんな僕でも……守れるかな?」

「うん、守れるよ。そんなタワーさんを、私も守りたい」

「……僕、これからも伝える。伝えることしか出来ないけど……それでも伝える……」


 彼は泣き虫だけど、私の大事なカード。いち早く危険を知らせてくれる、重要な『暗示カード』だ。だからどうか、彼を嫌わないで。

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