祖母の希望2
祖母がまた来てしまった事を母に相談したら、
「ふーん、なにかしらね」と言っていた。姉が会ったことを話したら、ちょうど、姉が通りかかり、
「輝子、あなた、お父さんの実家に行ったの?」と聞いた。姉は、
「ああ、あれね」とどうでも良さそうで、
「お腹すいた」としか言わなくて、
「行ってはだめよ」
「あら、どうしてよ。素敵な家だったわよ」
「素敵?」と驚いた。
「大きな家よ。家はああでなくっちゃ」
「輝子」母が呆れていた。
「あれだけの家なら、素敵よねえ。わたし一人ぐらい増えても、どうってことないわ」と言い切ったので唖然とした。
「輝子、それは」と母が言いかけたら、
「うるさいなあ、もう。ねえ、まだ? おなかすいたんだけど」
「たまに早く帰ったのだから、作りなさい」と母が言ったら、
「あら、この家で商売してるお母さんが作ったらいいんでしょ」と言い返されていて、母が黙ってしまった。
「あーあ、ああいう家の子に生まれたかったわ。同じ兄弟の子供でも、お兄さんたちの子供って、いい暮らしなんでしょ。不公平だわ。あ、ねえ、遺産ってないの?」
「輝子、いい加減にしなさい」
「お父さんのお金が入ったら、ちょうだいね。絶対よ」
「輝子」と母が呆れていたけれど、姉は行ってしまった。
「困った子だわ」
「お姉ちゃん」と言いかけてやめた。祖母が姉のことをなんだか言いたそうにしていたけれど、その言いたいことがなんなのかが分からないため、母にどう言っていいかわからなった。
「あの子って、本当困った子ね」と母が呆れていた。
「あのお姉ちゃんで大丈夫だったのかな?」
「様子はどうだったって?」
「さあ、とても聞ける雰囲気じゃなかったよ」
「そうでしょうね。失礼なことをしなかったかしらね」
「さあ」
「あの子に聞いても分かってなさそうだしね」
「え?」
「浮かれていたじゃない。親戚がお金持ちであることがうれしくてしょうがないみたいね。実態が見えるとは思うけどね」
「実態?」
「あの子が遊びに行って、歓迎してくれるかしらね。いとことも会ってなさそうだし」
「いとこ?」
「あちらのご家庭にも子供さんがいらっしゃるわ」
「いくつなの?」
「さあ、ただ、それほど年は離れていないはずよ」
「ふーん」
「ほっときなさい。あの子は、今、浮かれていて、現実は見えてなさそうだから」
「現実って?」
「そのうち分かるわ」としか言ってくれなかった。とても、引き取りたいと言う話をできそうもなかった。




