言える範囲6
「そう言う人だもの。プロキオンで、本物の占い師は必要としてなかった」
「え?」
「商売として、占いを考えていたから、灰野さおるさんのようなタイプは目障りだったのよ。接客が上手で、何度も通ってくれるお客を増やすことが出来る占い師をいっぱい育ててきたの」
「はあ」
「次に来てもらうにはどうしたらいいのかを考えてね、そう言うやり方を伝授したわけ」
「えっと」
「だからね、あなたとは合わないってことなのよね」
「えっと、お母さんの占いの勘が良かったのと、どうつながるの?」
「独り占めしたくなるほど、あいつを束縛したかったのよ。必死だった。だからこそ、占いの勘も強くなったんだと思うわ」
「え?」
「だから、真珠には本当は近づいてもらいたくない場所なのよ」
「はあ、なるほど。でも、圭吾さんとはあまり会わないし」
「でもねえ、カロンさんの方も、お父さんに似ていたらと思うと心配なのよね。真珠の勘が良くなってきているのが、その証拠」
「どっちかと言うと、お父さんを探したかった気持ちの強さからくるものだと思うよ。東条さんは、全く関係ないと思う」
「そうね」と言ってから、母がため息をついていた。
「そうね、真珠は違うものね。あなた、意外とドライだものねえ。あんなに盛り上がっていた雪人さんも離れたら、それで言わなくなるぐらいだしねえ」
「いや、憧れではあるよ。今も手紙のやり取りはしているしね」
「ふーん、でも、恋愛したいと思ってないでしょ」と見透かされて、
「はははは」と笑うしかできなかった。
「そうだと思った。あなたにとって、東条さんは、今まで近くにいなかったから、同業者だから、新鮮なんだと思うけれど、だからって、恋愛にのめりこんではダメよ」
「ないと思うなあ。あの人、時々自慢げで、それはさすがに目にあまるし」母が笑った。
「真珠は、淡々としているわね。そうね、恋愛はまだ早いのね。想像できないわ。あなたに恋人ができて、デートしているところが」
「いや、お母さんが恋愛にのめりこんでいた時期のほうが、もっと想像できない」
「そう? 私、情熱的だったのよ」
「お父さんに情熱的に、時々怒っていたのは目撃したけれど」
「あら、いいじゃないの、それぐらい」
「お父さん、聴いてなかったものね」
「真珠は両方に似てるわねえ。お父さんに似てマイペースなところも、私に似て大雑把なところも」
「おじさんにも似てるよ。おおらかだもん」
「はいはい、どうせ、私もおおらかよ」と母が笑った。




