様子のおかしい膳場さん1
東条さんに呼ばれて、プロキオンに行った。居住スペースの方に行ったら、膳場さんが一人でぼんやりしていた。
「あの」と声を掛けたら、
「ああ、尚毅君なら下の階よ。応接室で応対するらしいわ」
「はあ」
「今日の子は気を付けたほうがいいわよ」
「え?」
「球磨谷あや」
「はあ」
「その分だと知らなさそうね。あの子、占いマニアなのね」
「え?」
「ここも何度来ているか」
「そうなんですか。え、ここに来るんですか?」
「事情が変わったらしいわよ。ああ、そう言えば、あなた、前のあの何とかと言うお騒がせタレントともめたんだって?」笑いながら言われてしまった。
「すみません」と頭を下げた。
「ああ、いいわよ。私にまで頭なんて下げなくてもね。私には関係ないもの。そんな権限ないそうよ」破れかぶれ、そんな感じで言ったので驚いた。お酒がそばにあるのが見えた。視線に気づき、
「いいわよ。別にね。ほっといたって、誰もとがめやしないわ。私には逆らわない。プロキオンの連中、私にまで媚を売ってくるものねえ。少しでも、上に行きたくて、テレビなどに出たくて必死なのよね。無駄な努力よ」
「え?」
「あの人は、誰かをテレビに紹介なんてしないわよ。尚毅さんぐらいなものね。それ以外に対しては冷たいものよ。占い師なんていくらでも変わりはいるって言い放つぐらいなんだもの」
「はあ」
「この間のお騒がせタレント、あなたの発言が気に入らなくてね、ここまで苦情の電話をかけてきたわ。『ほかの占い師がご用命なら、いつでもおいでください』と言って、ごまかしておいたわ。すぐに機嫌が直っていたけれど」
「え?」
「ああいう自己顕示欲だけは強いタイプは、適当におだてておけば、それで気が済むのよ。そのうち、飽きられておしまいになるタレントだから、ここにも顔を出せなくなるわよ」
「えっと」
「そんな人、山ほど見てきたわ。あの人について、ずっとそばに居たからね。昔、有名だった人が、ここに来られなくなったのなんて、数えきれない。こちらからうかがうようなVIPまで行けば別だけどね」
「え、そう言うのもあるんですか?」
「VIPはここに来るとしたって、もっと遅くにこっそり来るわ。ほとんどは、自宅かホテルなどに行くわよ」
「そうですか」
「あなたも、そのうち、ここで働くんでしょ」と聞かれて、
「あ、いえ」と否定しようか迷った。ここで働く気はない。ただ、それをはっきり告げていいかどうか迷ってしまった。働く気がないのに出入りしているのは変かもしれないと思えたからだ。
「あら、違うの? ふーん、じゃ、尚毅君狙いか」
「もっと違います」慌てて否定したら、笑われてしまった。
「分かりやすい答えねえ」
「はあ」
「ふーん、てっきり彼が目当てで取り入っているのかと思っていたけれど、そうじゃないのなら、ま、いいかもしれないわね」
「え、どういう意味ですか?」
「狙うなら、別のところに行きなさいって、言うわね」
「え、あの」と聞いたけれど、膳場さんが、横を向いてしまった。




