祖母3
近くのカフェにあの人が待っているのが見えた。こういうカフェはケーキもコーヒーも高いので「デートでもないと使えないよ」と友達が言っていたのを思い出した。止まっている車も高級車だった。ガラス張りのきれいでおしゃれな雰囲気のところだから、友達と来ることもなかった。
お店に入り、あの人のそばに行ったら、
「ああ、来てくれたのね」とうれしそうだったけれど、困ったなあと思った。母が怒りそうだ。
祖母といわれても良く分からなかった。広大おじさんには奥さんはいなかったために、そういう人が私にはいなくて、もし、いたとしたらどうだったんだろうなと思っていたけれど、実際会ってみても良く分からない。私の顔をずっとうれしそうに何度も見ていて、恥ずかしかったので、
「あ、あの、あまり見ないでください」と止めた。
「なんだかうれしくてね。こうして見るとやはり似ているわ。勝友はとても優しい子だったの。手先も器用でね。家の手伝いもしてくれる子だった。日曜大工なんて他の人は誰もやってくれない。業者に頼んだら、そんなところにお金を使うなと怒られて、自分でやるわけにもいかず、あの子が良くやってくれてね」
「はあ」としか言いようがない。
「良かったわ、会えて」
「あの、ご用件は」と切り出した。家に帰って食事の支度も気になっていたら、
「ああ、そうだったわね」と言いながら、
「あなた、今の暮らしはどうなの?」と聞かれて首をひねっていた。
「お小遣いは足りているの? 家事などは嫌じゃないかしら?」矢継ぎ早に聞かれて、母がやっているように取り繕った方がいいだろうかと考えあぐねて、
「はあ、家族で協力して」と言ってみたら、祖母が困った顔をしてから、
「あなたがお買い物をして家事を担当しているでしょう?」と言われてしまった。
「良かったら、家に来ない?」
「え?」と驚いた。




