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3章 冥界の女王


 「ふむ、お主が妾を呼んだ者か?」


 

 「え? 君は誰?」

 

 

 「あまり代わり映えの無い反応じゃのう」

 

 

 少女は、腰にまで届く長い黒髪をなびかせながらショウに述べる。

 

 

 「えぇ……君初対面なのにすごく失礼じゃない?」

 

 

 ショウは少女の失礼な態度に困惑しながら少女が何者かを考える。

 

 (うーん……この娘どう考えても光の中から出てきたよなぁ……。この娘が福引の景品なのか? でも、人が福引の景品なんて、おかしいよなぁ)

 

 ショウは少女が何者なのかを懸命に考える。しかしショウにこの少女の事を知るすべは無い。そのためショウは最も簡単な方法を選んだ。

 

 

 「君は何者なんだ?」

 

 

 ──The 普通 

 

 何のひねりもない平凡な選択肢しかし、これぞショウの十八番(おはこ)にして最大の切り札。

 

 普通とは、とてもありふれたもの、しかし極限の状態で普通でいられる事は常人にはとても困難なこと、だがショウは違うどんな状態でも普通を貫く普通の権化。

 

 ──と、ショウの普通について語ったが結局は、『考えるよりも聞いたほうが早い』と言う至極普通な考えに至ったからである。

 

 

 「うむ、妾は神じゃ!」

 

 

 「…………」

 

 

 「ご愁傷さまです」

 

 

 ショウはこのやり取りに既視感を感じながら少女に憐れみの目を向ける。

 

 

 「オイ! コラ! 妾は本物の神じゃ! 妾は春の女神、花の女神にして冥界の女王、ペルセポネじゃぞ!」

 

 

 そんなショウの心情を察したのか少女、ペルセポネは自分の名前を明かす。

 

 

 「え? ペルセポネってギリシャ神話に出てくる?」

 

 

 ショウはペルセポネが本物の神かどうかを見極めるために質問を投げかける。

 

 

 「む? お主の特徴を見るに地球の日本出身か? 日本人がここにいると言う事は、お主転生者じゃな?」

 

 

 ペルセポネは見事にショウが日本人であること、転生者であることを見破った。

 

 

 「日本や転生の事を知ってるって事は君は本当に神なのか?」

 

 

 ショウの言葉にペルセポネは『やれやれ』と言い。

 

 

 「じゃから何度も神だと言ったではないか」

 

 

 と、あきれ顔で言う。

 

 

 「じゃあ最後に一ついいですか?」

 

 

 ショウのその言葉に『なんじゃまだあるのか?』と、ペルセポネはショウに問いかける。

 

 

 「はい、ペルセポネさんには神の特殊な能力はあるんですか?」

 

 

 ショウの中でペルセポネは、”神を自称する痛い少女”

から、”正真正銘神”へとランクアップしたため最後の質問には、興味本位で聞いて見ることにした。

 

 

 「うむ、聞いて驚くな。妾の能力は、花を咲かせる事が出来る能力じゃ!」

 

 

 「……え?」

 

 

 「じゃから、花を咲かせる能力じゃ」

 

 

 「……えっと……他には何かある?」

 

 

 「妾は春の女神、春の植物を一年中育てる事ができるのじゃ!」

 

 

 ペルセポネは胸を張りドヤ顔でショウに自分の能力を告げる。

  

 

 「じ、地味過ぎない……」

 

 

 ショウはオブラートに包みもせず、どストレートに言い放つ。

 

 事実、ペルセポネの能力は、とても地味なもの、一つを除いて。

 

 

 「なんじゃと! この無礼者! そんなお主には、とっておきの能力を見せてやる!」

 

 

 

 そう言うとペルセポネの手から紫色の魔法陣が現れた。すると、魔法陣から黒い煙が出てくる。

 

 

 「うわぁ! ナニコレ?」

 

 

 魔法陣から出てくる煙の勢いは一向に衰えず、ショウの視界は完全に黒い煙で覆われた。

 

 

 「フッフッフッ、どうじゃ恐れいったか!」

 

 

 「いや! 目の前真っ暗で何も見えないよ!」

 

 

 「おっと、そうじゃった」

 

 

 ペルセポネがそう言うと黒い煙が晴れると同時にショウはあるものが目に入る。

 

 

 「ペ、ペルセポネさん、あなたの隣に居るそれは何なんですか?」

 

 

 ショウの目に入ったものは、ボロボロのローブを身に纏い、大鎌を携えた死神であった。

 

 

 「な、何それ、し、死神?」

 

 

 ショウは目を白黒させながら死神を指差す。

 

 

 「これは、死神ではなく死霊じゃ」

 

 

 「死霊? 死んだ人の魂ってことか?」

 

 

 「妾は冥界の女王じゃ、このように死霊を従える事が出来るのじゃ」

 

 

 ペルセポネは、ショウに丁寧に説明を始めた。

 

 

 「妾は、死霊を無制限に従える事が出来る訳では無いのじゃ」

 

 

 「制限付きで死霊を従える事が出来るって事か?」

 

 

 ペルセポネはショウの質問に首を縦に振る。

 

 

 「うむ、事前に死霊と契約をする必要があるのじゃ」

 

 

 「どんな契約内容なんだ?」

 

 

 「簡単に言うと妾と契約をして妾のために働くと、優先的に輪廻転生を行う事が出来るのじゃ」

 

 

 「なるほど、Win-Win(ウィンウィン)の関係ってやつか」

 

 

 「うむ、そう言うことじゃ」

 

 

 「あと、ペルセポネさん」

 

 

 「む、なんじゃ?」

 

 

 ペルセポネはショウの呼びかけに即座に応じる。

 

 

 「そこに居る死霊、そろそろ帰して頂いてもよ、よろしいでしょうか……」

 

 

 ショウはペルセポネの隣に居る死霊の視線に鳥肌を立てながらペルセポネに提案する。

 

 

 「む、なんじゃ? お主この死霊の事が怖いのか?」

 

 

 ペルセポネは新しいおもちゃを見つけた子供の様な目をショウに向ける。

 

 

 「いや、ちょ! ペ、ペルセポネさんマジでやめて! 俺は君のおもちゃじゃないんだからね!」

 

 

 「フフ、冗談じゃ其方も、もう戻って良いぞ」

 

 

 ペルセポネの命令に従い、死霊はペルセポネに一礼をして、冥界に戻って行った。

 

 ペルセポネは『ゴホン』と咳払いをして

 

 

 「では、妾からも一つ質問いいかのう?」

 

 

 ──と、ショウに質問をする。

 

 

 「は、はい、何でしょうか?」

 

 

 「妾は、まだお主の名前を聞いておらんかったからのう、お主名をなんと申す?」

 

 

 ショウはペルセポネの質問に自分がまだ自己紹介をしていなかった事を思い出した。

 

 

 「俺の名前はユキムラショウって言います。ショウって呼んでください」

 

 

 ショウは丁寧に自己紹介をする。

 

 

 「うむ、これからよろしく頼むぞ」

 

 

 ペルセポネは笑顔で返事をした。

 

 

 「ああ、それと、妾に対して敬語はするでない、今日から妾達は、パートナー、相棒じゃ」

 

 

 ペルセポネは、ショウに向かって見た目相応な笑顔で言った。

評価、感想、ブックマーク登録お待ちしております。

次回更新は12/17日21年予定です。

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