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妖刀に魅入られしスケルトン 〜迷宮を支配し、無敵の軍勢を率いる《最強》の剣魔王〜  作者: 銀翼のぞみ
三章

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九十二話 許された共存②

「モンスターとの共存を知るという意味では、シャンダーレ王国で良い見聞を広げられるかもしれません」


 果実酒を手にしながらそう言ってサヤの方へと視線を送るフラン。


「む? フランどういうことだ?」


「サヤ、シャンダーレ王国はここよりもより大々的にモンスターとの共存が進んでいる……いえ、むしろ栄えていると言っていいほどの国なのです」


「ほう、そのような国があるとは」


「私も一度だけ行ったことがありますが、なかなかユニークで興味深い国ですよ」


 そう言って、フランは意味ありげな微笑を浮かべながら果実酒に口をつける。

 ここから先は多くは語りません、サヤに楽しんでほしいので……そんなふうに言いたげな表情だ。


「ふむ。シャンダーレ王国、なかなか楽しみになってきたな」


「ふふっ、私も楽しみです。ご主人様」


 ワクワクした様子のサヤにさりげなく腕を絡めようとするアリサ。

 そうはさせまいとシグレが「抜け駆け禁止じゃ!」と反対から腕を絡め、サヤは両手に花状態になるのだが……


「酒が飲めぬ」


 花より酒。


 自然な動きで二人の拘束からするりと抜けると、樽ジョッキを一気に煽る。


「あんっ、サヤ様ったらそっけない!」


「こ、これはこれで……」


 悩ましい声を漏らすアリサとシグレ。

 二人の反応に、ダニーとケニーは少し引いた様子だ。


「そういや、サヤ。いつ出航なんだ?」


「ダニー、出航は四日後の予定だ。どうしてだ?」


「ならばできれば明日は予定を空けておいてほしい。恐らく侯爵様から声がかかるからな」


「なに? 侯爵だと、どういうことだ?」


「詳しくは明日になればわかる。安心しろ、悪い話ではない」


 そう言って、ダニーはロブスターの丸焼きにかぶりつく。


 まぁ、ダニーが言うのであれば悪いことは起きないであろう、サヤはそう判断し今は酒と料理を楽しむことにするのだった。


 ◆


 翌日、サヤたちが外で朝食を終え宿に戻ってきたタイミングで――


「よう、待ってたぜ」


 宿屋の前でダニーが声をかけてくる。


「お前がきたと言うことは、やはり侯爵がお呼びか?」


「その通りだ、サヤ。ゴンドラを待機させてあるからついてきてくれ」


 そのまま「こっちだ」と言って歩き出すダニー。

 やはり昨日言っていた通りになったなと、そのあとをついていくサヤ。

 アリサたちもその後に続く。フランたちが何も言わないあたり、彼女らはどんな用件か何となく察しがついているのであろう。


 ◆


 透き通った水路をゴンドラで進むことしばらく。サヤたちは豪奢な建物が余裕を持って立ち並ぶ貴族居住区へとやってきた。

 ゴンドラを降りると、リューイン侯爵の屋敷までそこまで距離もないというのに馬車が待機していた。


「な、なんというか……」


「すごい歓迎ぶりじゃな……」


 アリサとシグレはそんなやりとりを交わしながら、サヤの後に続いて馬車の中に乗り込むのであった。


 数分後――


 サヤたちはこの都市で一番大きな建物、侯爵家の屋敷の庭に降ろされた。

 すでに使用人がサヤたちを出迎えるために待機しており、そのまま侯爵家の屋敷のエントランスの中へと通された。


 ちょうどそんなタイミングで――


「おお、皆よく来たな」


 エントランスから続く階段の上からそんな声が聞こえてくる。


「お久しぶりです。侯爵様」


「うむ。本当に久しぶりだな、フラン。ダークと再開できて何よりだ。そしてサヤとその仲間たちよ、よく来てくれた」


 そう言って、赤髪の美丈夫――この都市の領主、ガゼル・リューインは、ニカッ! と豪快でありながら親しみやすい笑顔を浮かべるのであった。


 ◆


「さて、サヤよ。貴殿をここへ呼んだ理由なのだが……」


 応接の間に通されたサヤたちが着席すると、リューイン侯爵は早速本題に入るようだ。


「実はな、Sランク冒険者である貴殿をこの都市の〝領爵〟として迎え入れられないかと考えている」


 真剣な表情で、リューイン侯爵はそう言ってサヤの目を見る。

 ヴァルカン、フラン、そして彼女の胸に抱かれるダークは、やはり……といった表情だ。


「領爵……とは?」


 頭の上に「?」を浮かべながら聞き返すサヤ。

 そんな彼に、リューイン侯爵の側に控えていた執事が説明を始める。


「サヤ様、領爵とは一代限りの爵位でございます。領爵はその地の領主の傘下に加わることで、都市の税の一部を受け取ることができます」


「しゃ、爵位!?」


「ご主人様が御貴族様に!?」


 執事の説明を聞き、素っ頓狂な声を上げるシグレとアリサ。


 サヤでさえもことの重大さを理解し、心の中で(なんと……)と驚いている様子だ。

 しかしすぐに冷静さを取り戻し、執事にとある質問をする。


「その対価に我は何を求められるのだ?」


 ……と。


「ふむ、鋭いな。サヤよ、もちろん都市側としても領爵にしてほしいことがある。それは有事の際の都市の防衛や、強者と見込んで直接依頼したい任務の請負などが挙げられる」


 そう言って、執事を遮りリューイン侯爵が自らを始める。


「なるほど、要はSランク冒険者を領主家で囲ってしまいたい……といったところか」


「その通りだ、サヤ。……とはいえ、先ほどの名目はあくまで飾りだ」


「む? どういうことだ……ですか、侯爵?」


 さすがに侯爵が相手なので、慣れないながらも敬語を使ってみるサヤ。

 それを聞いたシグレとアリサが――


「(サヤ……!)」


「(ご主人様……!)」


 と、感動のあまり小さな声を漏らしているが、それはさておく。

 二人に苦笑しながら、侯爵が説明を続ける。


「先ほどの名目が飾りと言った理由だが……大事なのはこの都市はSランク冒険者を抱えているという事実を外部に知らしめることなのだ」


「ふむ、外部に知らしめることが大事…………それはつまり、Sランク冒険者を領爵として抱えているとなれば有事の際の防衛力が高い、そしてそのような強者が抱えられているということは、この都市にはそれだけの旨み――魅力がるという宣伝できる、といったところ……ですか?」


 まだ慣れない敬語を使いながらも、自分の頭で思い至った考えを口にするサヤ。

 その言葉を聞き、リューイン侯爵は「その通りだ!」と豪快に笑ってみせる。


「サヤよ、そこまで思考し言葉にできるようになっておったとは、ワシは嬉しいぞ……!」


 サヤのとんでもない成長ぶりに保護者として気持ちが爆発したのか、侯爵の前だというに、シグレは思わずサヤに抱きついてしまうのであった。

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