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九十一話 許された共存①

 そんなこんなでリューインの中を歩いていると、前方から見知った顔が歩いてきた。


「お、サヤたちじゃねーか」


「よっ、英雄さん」


 サヤたちの顔を見るや否や、そんなふうに声をかけてきたのは騎士隊のダニー、そしてその部下であるケニーだった。


「二人とも、久しぶり……というほどではないか」


 ゲートを使って行き来していたので船旅で帰ってくるほどの時間はかかっていないことを思い出し、そんな返事をするサヤ。


「そうだな、っておいおい! サヤ、お前Sランクに昇級してるじゃねーか!」


「あ、ほんとだ! ……ってあれ? フランまでいるよ!」


 サヤの冒険者タグに気づくダニー。その途中でケニーが、フランが同行していることに気付く。


「ダニー、ケニー。久しぶりですね」


「本当に久しぶりだな! フラン」


「ダークと再会できて何よりだよ!」


 ダークの件を知っていたダニーとケニーは、フランとその胸に抱かれるダークに祝福の言葉を送る。


「ありがとうございす」


「これもサヤ殿のおかげだ!」


 そう言ってサヤの方へと視線を送るフランとダーク。

 サヤは「むぅ……」と少しだけ気恥ずかしげに頭を掻いている。


「そういや、サヤがSランク冒険者になるなんて、一体何があったんだ?」


「ちょうど警備も交代の時間だし、話を聞かせてよ」


 そう言って、サヤたちを近くの酒場へと誘うダニーとケニー。


「本当にあなたたちはお酒が好きですね」


 相変わらずの二人に苦笑するフラン。そんな彼女に「まぁ、いいではないか」と言ってダニーたちの後に率先してついていくサヤ。


 サヤは最近ようやく酒の良さを理解し始め、様々な種類の酒、そしてそれに合う料理の組み合わせなどに興味津々なのだ。


「まさかサヤが酒を好きになるとは、出会った当初は赤ん坊のようだったのに……成長したものじゃ」


 サヤの後ろ姿を眺めながら、シグレはそんな感想を抱くのであった。


 ◆


 酒場にて――


「ブフォっ!! 不死者ノ王を倒しちまっただと!?」


 サヤの話を聞いて、驚きのあまり酒を勢いよく噴き出すダニー。

 そんなダニーに「汚いんだよ!」と言って軽い拳骨を落とすケニー。


 まぁ無理もない。二人ともサヤの実力はある程度理解しているつもりではあったが、まさか個体によっては魔王にも匹敵する戦闘力を誇る不死者ノ王――その一柱を倒してしまったのだから。


「サヤは本当に強かったですよ。不死者ノ王……私がドラキュリアの固有スキルによって窮地へと陥ったところへと颯爽と現れ、その力で敵を圧倒し配下にしてしまったのですから」


 少し頬をピンク染めながら……というか、もはや恋する乙女の表情で先の出来事を語るフラン。


 彼女の言葉を聞き、ダニーとケニーが――


「ノ、不死者ノ王を配下に加えた!?」


「倒すだけでもとんでもないってのに配下にするなんて。サヤ、あんたバケモン――いや、モンスターなんだけどさ」


 と、驚愕した声を漏らす。ケニーに至ってはもはやドン引き……といった様子だ。


「ちなみに、ご主人様はドラキュリを倒したことで新たな不死者ノ王の座に君臨しました」


 まるで自分のことかのように胸を張って言うアリサ。

 そんな彼女の言葉に、サヤは「そのことについては内緒で頼む。我がアンデッドモンスターだということがバレてしまうからな」と、念のために付け足しておく。


「そうだなぁ。まぁ、別にバレても大丈夫だと思うけどな」


「む、どういうことだ? ダニー」


「サヤ、俺たちの周りに、モンスターだということが周知の上で当たり前のように溶け込んでいるヤツがいることを忘れてないか?」


「……なるほど、ダークか」


 ダニーの言葉で、そのことに気付くサヤ。


 もはや忘れがちであったがダークの正体はベヒーモスだ。

 その事実はダニーたちだけではなく、この都市の領主であるリューイン侯爵も知っている様子だった。

 何ならグランペイルに関してはモンスターどころか異界の大悪魔である。


「サヤ、モンスターであっても特殊なケースというのはいくつもあるんだよ。ダークの場合はSランク冒険者であるフランが飼い主だからという理由で街中を連れて歩くのが許されている」


「サヤの配下であるグランペイルもそれが許されているのは、お前がグランペイルを倒したことと、Sランク冒険者パーティの一員であるヴァルカンがサヤを信頼していることも大きんだ」


 そんなふうに説明してくれるケニーとダニー。

 二人の言葉を聞き、サヤは「なるほど、意外としっかりとした決まりはなくモンスターと一緒にいる者の信用によるものが大きいのだな」と、二人の話を理解する。


「そういうことだ。まぁ、ダークとグランペイルに関しては普段、猫と子犬の姿になっているってところもデカいがな」


「ダニーの言う通り、姿や見た目も関係してくるね。だからこそ、街中ではエルフの姿で過ごすことができるサヤは受け入れてもらえると思うんだよね。フランたちからの信頼も厚いし、何ならSランク冒険者だし」


 そう言って、ダニーとケニーは二人揃ってそれぞれ酒の入った樽ジョッキを同時に口に運ぶ。

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