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八十六話 ドラキュリアの目的

『ブモッ! サヤ様の勝利だ!』


 ミノが戦斧を掲げ、叫ぶ。

 他のモンスターたちも『『『ウォォォォォォォ――ッッ!』』』と、勝利の咆哮を上げる。


 ドラキュリアが力を使い果たしたからか、周囲の景色が元に戻る。

 それと同時に、体を蝕んでいた霧から解放されたフランが、サヤのもとに駆け寄ってくる。


「サヤ、助かりました。――それにしても、まさか不死者ノ王にまで勝利してしまうなんて……」


【な……!? このヴァンパイア、不死者ノ王じゃったのか!?】


 シグレが妖刀の姿へと変身し、驚愕の声を上げる。

 サヤは「不死者ノ王? なんだそれは……?」と不思議そうに首を傾げる。


 そんなタイミングで、ヴァルカン、ダーク、グランペイル、アリサ、そしてこの迷宮で配下にしたモンスターたちもこの階層へとやってくる。


「どうやら、もう片はついたようにゃね」


 フランに問いかけるヴァルカン。

 どうやら彼女たちの方もアンデッド・オルトロスに勝利したようだ。


「ええ……と言っても、エンシェントヴァンパイアを倒したのはサヤですがね」


 ヴァルカンの質問に、フランが答える。

 しかし、その視線はサヤの方へと向けられており、頬はほのかに桜色に染まっている。


『サヤ様――と仰いましたか? ワタクシ――ドラキュリアを、どうか貴方様の配下に加えていただけないでしょうか?』


 跪いたまま、恐る恐るといった様子でドラキュリアがサヤに問いかけてくる。


 その瞬間、サヤのスキル《敗者隷属化》が効果を発揮した。

 それとともに、サヤの体が青白い光に包まれる。


【お、どうやら新たな項目がステータスに加わったようじゃの】


 言いながら、シグレがサヤの視界にステータスを展開する。


==============================

名前:サヤ


種族:スケルトン


ランク:Eランク


所持クラス:【スケルトンセイバー】【スケルトンメイジ】【スケルトンテイマー】【スケルトンロード】【スケルトンサモナー】


スキル:NEW!《エンチャント・極》NEW!《属性魔弾・極》《異種族言語理解》《敗者隷属化》《配下上位化》《サモンゲート》


NEW!称号:不死者ノ王


装備:妖刀・闇時雨

==============================


 スキルの項目から《エンチャント》と四属性の魔弾の名前が消え、その代わりに《エンチャント・極》と《属性魔弾・極》の名が追加されている。


 そして最後に、称号という項目が現れ、そこには《不死者ノ王》の名前が刻まれているのではないか。


「ふむ……?」


【な!? サヤのステータスに不死者ノ王の称号が刻まれているのじゃ……!】


 またもや不思議そうに首の骨を傾げるサヤ。

 そして興奮した声を上げるシグレ。


 その声を聞き、ヴァルカンを始めとした面々が騒然とする。


『ええ、不死者ノ王であるワタクシに、サヤ様は勝利しました。サヤ様はアンデッドであらせられましたので、勝利の証として不死者ノ王の称号を譲渡させていただきました』


 騒然とする皆を前に、ドラキュリアが言葉を紡ぐ。


「そういえば、聞いたことがあるにゃん。不死者ノ王が他のアンデッドに倒された時、その称号と配下は全て勝利したアンデッドへと引き継がれるって噂を……」


 ドラキュリアの話を聞き、昔聞いたことのある噂話のことを思い出すヴァルカン。

 その話を聞き、アリサ、ダーク、グランペイルは戦慄した表情を浮かべている。


 ただ一人、フランだけが「あぁ、私の命を救っただけでなく、不死者ノ王の称号まで手にしてしまうなんて……」と、うっとりした表情で呟いている……のだが、それはさておく。


「ドラキュリアといったか? とりあえず、お前がこの迷宮でやろうとしていたことを話せ」


『はっ! かしこまりました! 実は……』


 サヤに問われて、ドラキュリアは徐に語り出す。


 彼女は元々、とある不死者ノ王の側近だった……。

 しかし、彼女の仕えていた不死者ノ王は、ある日突然〝成仏〟してしまったのだという。


『先代の不死者ノ王が消滅したことで、次点のワタクシが不死者ノ王の座に着くことになったのです。しかし……』


 先代の力は強力だった。

 それはドラキュリアが足元にも及ばない程だったという。


 先代の有していた戦力を何とか埋めるべく、ドラキュリアは配下のアンデッドを増やそうと考えた。

 そして目を付けたのが、このナツイロ王国に存在する迷宮の中にいるモンスターたちだったのだ。


『ワタクシは配下とともに、迷宮の中のモンスターたちを狩り、アンデッドへと変えて行きました。その途中で現れたのが――』


「我たちだったということか」


『その通りですわ、サヤ様』


 サヤの言葉に頷くドラキュリア。


 本来であれば迷宮のモンスターを全てアンデッド化して帰ろうと画策していた。

 しかしサヤたちが現れたことで、ドラキュリアは別の出入り口からの撤退を決意した。

 ここで手に入れたアンデッドたちを無駄に散らすことを恐れたのだ。


 しかし、サヤたちの戦力は強大で撤退しようにもあっという間に追いつかれてしまった。

 そこでやむを得ず、全戦力を使っての戦いに発展したのだという。


「ふむ、ということは……ドラキュリアたちがこの迷宮からいなくなれば、ギルドからの依頼は達成ということか」


「ええ、そうなりますね」


 サヤの言葉を肯定するフラン。

 ドラキュリアたちがいなくなれば、迷宮のモンスターたちも元の場所へと戻っていくはずだ。


 となれば、迷宮で起こっていた異常の原因を突き止め、それを解決したということになる。

 これにて依頼は達成となるだろう。


 ひとまず、サヤたちはアンデッドとモンスターたちを迷宮の一番奥の階層へと集めて、留まらせるように指示を出すと、ドラキュリアを連れて迷宮をあとにする。

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