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七十七話 V Sワイバーン②

 滞空中だというのに、ワイバーンが翼爪を器用に振るい先ほどの斬撃をサヤに向かって連続で飛ばしてくる。


【回避じゃ、サヤ!】


「ああ、わかっている」


 シグレの声に短く答えると、サヤは左右に再度ステップを繰り返し全ての斬撃を躱してみせる。


 滞空しているワイバーンとサヤの間にはかなりの距離がある。

 先ほど放った《閻魔ノ黒魔槍》は近〜中距離用の技であるため、今回は届かないのである。


『く……っ、やはり飛ばれてしまったか!』


 回避を繰り返すサヤを見て、オニイチが悔しげに声を漏らす。

 恐らくオニイチとオニジは、ワイバーンに今のように空中から攻撃を仕掛けられ、なす術もなく住処を追われたのだろう。


【サヤ、次はアレをやるのじゃ!】


「ああ、いくぞ――ッ」


 シグレの声に応じるサヤ。

 凄まじい跳躍力で空中へと躍り出る。


『馬鹿め! このまま切り裂いてくれる!』


 跳躍したサヤを見て笑い声を上げながら、ワイバーンがさらに翼爪による斬撃を放つ。

 翼を持たぬものは空中で回避行動はできない、飛んで火にいる夏の虫――のはずだったのだが……


 タン――ッッ!


 そんな軽快な音とともに、サヤが凄まじい速度で右へと跳んだではないか。


『な……ッ!?』


 ありえない現象に、ワイバーンが思わず声を漏らす。

 いったいどうなっているのだ! と――


「なるほど、そういうことですか」


 そんな中、フランが感心したかのような声を漏らす。


 彼女は気づいたのだ。

 サヤが空中で移動する際、その足元に黒く小さな魔法陣のようなものが展開していたことに。


 サヤは闇霞を操り、空中で魔法陣型の足場を形成し、それを使ってステップすることで空中戦闘を可能にしたのだ。


「さすがサヤさま!」


「やっぱりとんでもないにゃん!」


 フランに説明されて、アリサやヴァルカンが興奮した声を上げる。


 そんな声をよそに、サヤとワイバーンは空中で妖刀と爪を使った激しい斬り合いを行なっている。

 空を駆けるという始めての敵を前に、ワイバーンの体に徐々に切り傷が刻まれ始める。


『こうなれば……ッ!』


 サヤの猛攻を前に、大きく距離を取るワイバーン。

 そして大きく顎門を開くと、その奥から……ボウ――ッッ! と、凄まじい勢いで炎のブレスを放ったではないか。


『『『サヤ様ッッ!』』』


 ワイバーンのブレスを見て、オニイチやウルたちが思わずサヤの名を叫ぶ。


「ハァァァァ――ッッ!」


 裂帛の声を上げ、サヤはシグレを上段から振り下ろした……その刹那だった。


 轟――ッッッッ!!


 あまりの剣速に大気が震えるかのような轟音が鳴り響き――ワイバーンが放ったブレスが真っ二つ割れ、サヤの後ろへと通り抜けていった。


「我の勝ちだ」


 炎のブレスを斬られ、呆気に取られるワイバーンの喉元に、いつの間にか急接近したサヤがシグレの切っ先を突きつける。


『拙者の敗北だ……強き者よ。あなたの配下に加えてください』


 静かに、ワイバーンは敗北の言葉を紡ぐのだった。


「よし、今日からお前の名前は〝バーン〟だ」


『ガルルッ !なんと、拙者に名前をくださるのですか!? ありがたき幸せ!』


 空中からゆっくり地面へと降りながら、そんなやり取りを交わすサヤとワイバーン――否、バーン。


「お疲れ様です。まさかAランクの最上級モンスターを無傷で倒してしまうとは……本当に驚きました」


 地面に降りてきたサヤに、労いの言葉をかけるフラン。

 サヤは「ああ、なかなかに楽しめた」と適当に返すと、シグレにバーンの手当てを頼む。


 シグレが妖刀から人間の姿に変わったことに、ワイバーンはギョッとした表情を浮かべるも、傷の再生が始まると落ち着いた様子を見せるのであった。

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