表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

72/129

七十一話 久しぶりの名付け

 ワーウルフにビッグファング。

 なかなかに練度が高いようだ。

 先頭のサヤを囲むように、一斉に飛びかかってくる。


「ふんっ……」


 しかし、サヤはそれを一笑する。

 そのまま目にも止まらぬ速度でシグレを振り抜き、その場で回転斬りを放った。


 左から右へと、一閃のもとに斬撃をその身に刻まれるビッグファングども。

 そのどれもが大きな悲鳴を上げながら、切り傷から派手に鮮血を撒き散らす。


『グゥゥゥッッ!?』


 その中で唯一、ワーウルフのみが致命傷を免れた。


 しかし――


『降参だ、俺たちの負けだ……ッ!』


 ――腕の切り傷を抑えながら、そんな言葉とともにワーウルフはその場に片膝をついた。


「……驚きました。まさかスキルもなしに、Bランクモンスターを五体も同時に降してしまうとは」


 倒れるビッグファングたち、そして敗北の言葉を紡いだワーウルフを見て、フランは思わず声を漏らす。


「ならば、我の配下になるということでいいな?」


 自身の持つスキル、《敗者隷属化》が発動していることを確認し、その上であえてワーウルフたちに問いかけるサヤ。


 ワーウルフは『もちろんです、強き者よ』と頭を下げ、ビッグファングたちも弱々しい声で鳴いて答える。


「よし。シグレ、こいつらを治してやれ」


【わかったのじゃ】


 変身を解き、普段の姿に変わるシグレ。

 ワーウルフとビッグファングの方へと手をかざし、彼らを黒いオーラのようなもので包み込む。


『こ、これは……!』


『傷が治っていくだと……!?』


 ワーウルフたちが目を見開き、それぞれ驚きを露わにする。

 今まで自然回復以外に傷を治した経験などなかったのであろう。


「さて、さっそくだが、お前たちに聞きたいことがある」


『なんでしょう、強き者よ!』


 サヤの言葉に、片膝をつきながら姿勢を正すワーウルフ。

 後ろのビッグファング四体もそれに倣う。


「どうしてお前たちのようなモンスターがこの階層にいる? 普段はもっと奥の階層に生息していると聞いたが?」


『強き者よ、それは俺たちが普段いる階層からここまで追いやられたからです』


『ある日、迷宮の奥から、我らよりも強力なモンスターが押し寄せてきたのです!』


 サヤの質問に、ワーウルフとビッグファングたちが口々に答える。


「んにゃ〜、やっぱり迷宮の奥の方で異常事態が起きてるっぽいにゃね?」


「どうやらそのようですね」


 ワーウルフたちの言葉を聞き、ヴァルカンとフランは予想が当たっていたと確信する。


【であれば先に進むのじゃ】


「ああ。そうだな、シグレ」


 再び妖刀形態に変身し、サヤの手の中に収まるシグレ。

 彼女を腰に差しながら、サヤは小さく頷く。


「ところで、お前たちはどうする? この場で我らの帰りを待つか、それともこのままついてくるか?」


 ビッグファングたちに向かって、問いかけるサヤ。

 今は戦力的にも足りているので、ワーウルフたちにその気がないのであれば、無理してついてこさせる必要もないと判断したのだ。


『ぜひお供させてください、強き者よ!』


『あなたほどの強者と一緒であれば、奥の階層にいるモンスターなど怖くはありません!』


 サヤの問いかけに、ワーウルフとビッグファングたちは、尻尾をブンブン振りながら答える。


「よし、それでは奥に進むとしよう」


『『『はっ!』』』


 奥へと歩き出したサヤのあとについていくワーウルフたち。


『がはははは! まるで飼い犬だな!』


『それをお前が言うのか……』


 従順なワーウルフたちを見て笑い声を上げるグランペイルに、ダークは呆れた様子を見せる。


 ちなみに、サヤはワーウルフを〝ウル〟と名付け、ビッグファングたちを順番に〝ワング〟、〝ツーグ〟、〝スリーグ〟、〝フォーグ〟と名付けた。


「あ、相変わらず安直な名付けですね……」


 サヤの名付けのセンスに、苦笑するアリサ。


 しかし、当のワーウルフ――ウルたちは……


『よっしゃぁぁ! 今日から俺の名は〝ウル〟だ!』


『『『ワォォォォォォ――ンッッ!』』』


 ……と、興奮した様子で叫びや遠吠えを上げている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ