五十九話 一件落着
あとがきにお知らせがあります!
二日後――
「じゃあな、みんな!」
「またそのうち会おうね!」
「またサヤくんと模擬戦ができるのを楽しみにしてるよ!」
ホフスタッターの入り口で、ダニーにケニー、それにレナが別れの挨拶を告げる。
伯爵の件は解決した。
であれば、サヤたちはエルフたちの里、ポーラに帰還し作戦が成功したことを皆に伝えることにしたのだ。
ダニーたちの後ろでは、オヴィやディンを始めとした騎士たち、それに冒険者たちが手を振っている。
「ふむ、では行くとしよう」
【そうじゃな】
「行きましょう、サヤさま!」
皆と挨拶を済ませ、ヴァルカンの荷馬車に乗り込むサヤ。
そのあとにシグレとアリサたちが続き、馬車はポーラに向かって出発する。
◆
数日後――
『グギャっ! お帰りなさいませ、サヤ様!』
里の周囲をたまたま見回りしていたゴブイチが、サヤたちの到着に気付き出迎える。
「ゴブイチ、里やエルフたちに変わりはないか?」
『もちろんです! 特に野盗なんかは現れることなく、平和そのものでした!』
「それは何よりだ。さっそくだが、皆を里の広場に集めてほしい」
『グギャ! 了解しました!』
サヤの言葉に元気よく返事すると、里の中へと駆けていくゴブイチ。
今回の作戦の結果を聞かなかったのは、アリサたちの表情を見て、うまくいったと判断したからであろう。
十数分後――
サヤの召集に応じ、エルフやモンスターたちが里の広場へと集結した。
その誰もが、これから紡がれるであろうサヤの言葉を、心待ちにしている様子だ。
「単刀直入に言う、作戦は成功だ。伯爵の身柄は国に引き渡され、裁きを受けることになった。もうこの里は安全だ、安心するがいい」
簡潔に、結果だけを配下のモンスターやエルフたちに伝えるサヤ。
その言葉を聞き、皆は一斉に歓声を上げた。
「これでもう野盗に怯えなくていいのね!」
「サヤ様が……サヤ様が旦那の仇を討ってくれた!」
「やっと安心して暮らせるのですね……!」
あちこちで、そんなやり取りを交わすエルフたち。
ミノやゴブイチを始めとしたモンスターたちも――
『ブモっ! さすがサヤ様だぜ!』
『グギャッ! やってくれると信じてました!』
――などと、興奮した様子で声を上げる。
「旦那さま、それにアリサたちも、本当にお疲れ様……」
穏やかな笑顔を浮かべながら、サヤに寄り添ってくるマリナ。
そんな彼女に小さく頷いて、受け入れるサヤ。
そしてそのまま、ヴァルカンとダークの方へと振り返る。
「ヴァルカン、ダーク、今回は本当に世話になった。お前たちがいなかったらこの結果はなかっただろう、改めて礼を言う」
そんな風に言いながら、サヤは彼女たちに向かって頭を下げた。
『や、やめてくれ! サヤ殿……!』
「サヤくんにそんな風にされるとむず痒いにゃん!」
サヤからの言葉を受け、ダークとヴァルカンは照れくさそうに返すのだった。
(ほう……感謝を伝えるために頭を下げるとは、本当に成長したのだな、サヤよ)
彼のすぐ側で、シグレはそんな感想を抱く。
その表情は慈愛を感じさせるほどに、優しく、美しい。
『ところで、サヤ様』
『ソイツはいったい……』
そんな風に話しかけてくるミノとゴブイチ。
その視線はサヤの足元で周りをキョロキョロと見回す、グランペイルに固定されている。
「こいつの名前はグランペイル、我の新たな配下だ。悪魔という種族らしい」
『サヤ様に敗北し、配下に加えさせてもらったグランペイルだ、よろしく頼む!』
グランペイルはサヤの肩に登り、そんな風に自己紹介してみせる。
「すごい! サヤ様、今度は悪魔を配下にしちゃったんだって!」
「さすがサヤ様、なんでもアリね……!」
「あ〜あ、私もマリナ様みたいに抱いてもらえないかしら……」
サヤたちの会話を聞いていたエルフたちが、そんなやり取りを交わし始める。
「サ、サヤ様は渡しませんからね!」
【抜け駆けは許さんのじゃ!】
周囲のエルフたちに、威嚇を始めるアリサとシグレ。
そんな彼女たちを見て、「うふふ……っ」と、余裕の表情を浮かべて、マリナはサヤにしなだれかかる。
『クソ! クソっ! 羨ましいですぞ、サヤ様ぁぁぁ!』
『グギャ! もげればいいのに!』
ミノとゴブイチは、相変わらずのサヤのモテ具合に、嫉妬の嵐を起こしている。
それを見たヴァルカンたちが、思わず苦笑し、里の中が笑いに包まれる。
(ようやく、里に平和が戻ったのですね……)
皆の幸せそうな表情を見て、アリサはそれを実感する。
かくして、エルフの里を巡る一連の出来事は、これにて一件落着となるのであった――。
これにて二章の前半部分が終了となります。
後半部分の更新開始は、しばしお待ちくださいませ。
【ご報告】
この度、本作『妖刀に魅入られしスケルトン ~迷宮を支配し、無敵の軍勢を率いる《最強》の剣魔王~』のコミカライズが決定しました!
連載媒体は、白泉社の『ヤングアニマルZERO』となります。
その他の情報は、詳細が決まり次第ご報告させていただきます!