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五十五話 グランペイル

 悪魔――。


 それは此処より遠い、別世界に存在する生き物の名だ。

 性格は残忍で、暴虐の限りを尽くす。


 グランペイルも数多に存在する悪魔のうちの一体だ。


 しかし、通常であればこの世界に悪魔が現れることはない。

 異界からの扉は、そう簡単に開くものではないからだ。


 では、なぜ今回、グランペイルはこの世界へと顕現したのか……。

 それは伯爵が、自身の持つマジックアイテム、〝デモンズクリスタル〟の効果を発動したからである。


 デモンズクリスタルは、大昔の魔法技術師が異界へと渡る方法を開発する段階で生まれた副産物である。

 その効果は、異界から特定の悪魔を呼び寄せ、願いを叶えさせるというものである。

 代償として、願いに見合った命の数を捧げなければならない。


 自分が捕まることを恐れた伯爵は、精神的に追い詰められ、護身用に所持していたデモンズクリスタルを、騎士たちを殲滅するために発動してしまったのである。


『グハハハハっ! 喰らうがいい! 《デモンフレイム》ッ!』


 凄まじい速度で迫ってくるサヤを見て、グランペイルは面白そうに笑うと、またもや手のひらに魔法陣を展開した。

 魔法陣の中から、紫色の大火球が飛び出し、サヤを飲み込もうとする。


「ふん……っ!」


 シグレを縦一文字に切り払うサヤ。

 すると、グランペイルが放った火球が真っ二つに割れて、サヤの横をすり抜けていったではないか。


『ば、馬鹿な! 俺の攻撃を剣で切り裂くだと!?』


 信じられないといった様子で、狼狽した声を漏らすグランペイル。


 悪魔魔法スキル《デモンフレイム》――

 対象に当たれば、その者が力尽きるまで燃やし続ける効果を持つ攻撃だ。


 しかし、妖刀であるシグレはその効果を受け付けない。

 サヤはシグレを信じ、自身の技術でグランペイルの攻撃を叩き割ったのだ。


「さすがにゃッ!」


 サヤに称賛の声を送りながら、その場で大きく跳躍するヴァルカン。


 ハッとした様子でヴァルカンの方へと視線をやるグランペイル。

 そのままヴァルカンに向けて、巨大な拳を繰り出す。


「当たらないにゃ!」


 そんな声とともに、ヴァルカンは空中で身を捻るという神業をこなしてみせる。


 グランペイルの拳は空を切り、その横を通過したヴァルカンが――


「喰らうにゃんッッ!」


 ――と、グランペイルの肩に、ドパンッ! とハンマーを思い切り叩き込んだ。


『グゥゥゥゥゥゥ――ッッ!?』


 肩を押さえ、呻き声を漏らすグランペイル。


 このまま攻撃を喰らってなるものか!

 そう判断し、その場から大きく跳び退く。


「ば、馬鹿な! アークデーモンが押されているだと……!?」


 目の前の光景を、信じられないと言った様子で、両手で頭を掻き毟る伯爵。


 だが、ここから動くことはしない。

 逃げたところで、都市に散らばった騎士に捕まるのが目に見えているからだ。


『さて、まだほとんど力が戻ってないので幾分か不安だが、妾も加勢するとしよう』


 そんな言葉とともに、ダークが勢いよく飛び出した。


『《フレイムエッジ》発動――ッ!』


 スキルを発動し、己の尻尾を焔の剣と化し、グランペイルの足下へと急接近する。


『ちっ……何だ、この小動物はッ!』


 忌々しげに言葉を吐くグランペイル。

 しかし、焔の剣となったダークの尻尾を見て、その瞳に警戒の色を示す。

 ダークの剣尾から放たれる膨大なエネルギー量に気づいたようだ。

 グランペイルは拳を振りかぶると、腕の周りに魔法陣を展開する。


「させるか……ッ」


 何かしらの攻撃魔法を放とうとしているようだが、それをサヤが見逃すはずがない。


 気流を纏い、凄まじい速度で跳躍すると、グランペイルの腕の高さまで到達する。

 そのままの勢いで《ファイアーバレット》を発動。

 自身の纏う気流に着火させ、グランペイルの腕目掛けて爆発を起こす。


『グァァァァァ!? クソがぁぁぁぁぁぁッッ!』


 腕に爆発による火傷を負い、呪詛のような叫びを上げるグランペイル。

 だが、グランペイルは再び叫び声を上げることとなる。


 なぜなら――


『妾の攻撃も喰らうがいい!』


 ――そんな声とともに、ダークが自身の剣尾を巨大化させ、グランペイルの脚に斬撃を叩き込んだからだ。


『ギギャァァァァァァァァァ――ッッ!?』


 とうとう悪態すら吐かず、純粋な叫び声を上げるグランペイル。

 激痛に苛まれながら、血走った紫の瞳でサヤたちを見つめ……


『こうなれば――ッ!』


 ……言葉とともに、自身の頭上に大規模な魔法陣を展開する。

 次の瞬間、グランペイルの姿が紫の光に包まれた。


 そしてその中から――。

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