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妖刀に魅入られしスケルトン 〜迷宮を支配し、無敵の軍勢を率いる《最強》の剣魔王〜  作者: 銀翼のぞみ
二章

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五十一話 伯爵領へ

 三日後――


 サヤたちは侯爵の屋敷へと呼び出された。


「皇帝陛下より返事が届いた。早急にホフスタッター伯爵の身柄を確保しろとのことだ」


 侯爵が皇帝から届いた内容をサヤたちに説明する。

 いよいよ、今回の件について動く時がきたようだ。


 本来であれば帝都から騎士団を派遣したいところだが、帝都から伯爵領まではかなりの距離があるのと、今はとある事情で騎士団を動かしにくいらしい。


 そこで、伯爵の身柄を確保するまでの工程を、侯爵に一任すると返事が来たようだ。


 現在、伯爵は前情報通り公国にいる。

 今から伯爵領に向かえば、伯爵が戻ってきたタイミングで捕縛することができるだろうと、侯爵は話す。


「伯爵の捕縛任務には、この二人を向かわせる予定だ」


 粗方の内容を話終えると、侯爵は後ろに控えていた二人の騎士の方へと目をやる。


「よっ! 三日ぶりだな!」


 陽気な感じで言うのは、先日、サヤたちをこの屋敷へと案内してくれた、騎士隊の副隊長ダニーだ。


 そしてもう一人は――


「アタイの名前は〝ケニー〟だ、よろしくね!」


 ――ダニーと同じく、軽鎧姿の女騎士が挨拶をする。


 赤茶色の髪をポニーテールでまとめ、同じ色の瞳は少々目つきがキツいが、どことなく優しさを感じる……そんな女騎士だ。


 この二人が、現地にいる信用のおける騎士たちと連携し、伯爵の身柄を拘束するという算段だ。


 今回の関係者であるということと、冒険者でもあるという理由で、サヤたちは侯爵からの依頼という形で、ダニーたちに協力することになった。


「いよいよですね……っ!」


 エルフの里を襲い、大切な者たちの命を奪った伯爵への復讐が果たせる……。

 待ち望んだ時が近づいてきていることに、アリサは瞳を鋭く細め、声を漏らす。


 サヤたちは荷物などの準備を終えると、ダニーとケニー、二人の騎士を加えて伯爵領ホフスタッターへと旅立つのであった。


 ◆


「それにしても、久しぶりじゃないか、ダーク」


 街道を荷馬車に揺られながら進む中、女騎士ケニーがダークへと話しかける。


『本当に久しぶりだな、こうして二人に会えるのも、サヤ殿のおかげだ』


「話はダニーから聞いたよ。サヤ、アンタはダークたちの恩人なんだってね?」


 ダークの返事に頷きながら、サヤに話を振るケニー。

 そんな彼女に、サヤは「成り行きでな」と、無愛想に答えるのだが、なぜかケニーは、サヤのそんな態度が気に入ったようで、「そうかそうか!」と面白そうに笑う。


「ってーかよ、ヴァルカンちゃん、サヤたちはダークがアレのことを知ってるのか?」


 様子を窺うように、ヴァルカンへと尋ねるダニー。

 サヤとシグレ、それにアリサは「「「アレのこと……?」」」と首を傾げる。


「ダークちゃんの正体がベヒーモスだってことは、すでにみんな知ってるにゃよ」


「ああ、そうだったのか! それなら安心だな」


 ヴァルカンの答えを聞き、ガハハ! と笑うダニー。


 なるほど。ダニーとケニーは、ダークの正体を知るほどに彼女たちと親しい仲のようだ。

 二人がダークの正体を知っているのを見るに、恐らく侯爵もそれを承知の上で関係があるのだろう。


「サヤくん、もしよければ、サヤくんのことも二人に教えてあげちゃダメかにゃ? この二人なら安心できるにゃん」


「ふむ……ヴァルカンがそう言うのであれば大丈夫か」


 ヴァルカンの問いに、徐に返事をするサヤ。

 ダニーとケニーは何のことだ? といった表情を浮かべる。


 そんな二人の前で、サヤは元の姿へと変身してみせる。


「ス、スケルトン……だと!?」


「サヤ……アンタもモンスターだったのかい!?」


 スケルトンの姿に変身したサヤを見て、素っ頓狂な声を上げるダニーとケニー。

 しかし、ダークの存在でモンスターと行動することに慣れてしまっているのか、敵意を向けてくることはない。


【ちなみに、ワシも元の姿はこんな感じじゃ】


 そう言って、今度はシグレが妖刀形態へと変身し、サヤの手の中に収まる。


「こ、今度はシグレちゃんが武器に変身しちまった……!」


「まさか、インテリジェンスウェポンってやつかい!?」


 サヤとシグレに興味津々といった様子で、ダニーとケニーは、サヤたちに質問責めを開始するのであった。

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