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四十四話 Sランク冒険者と次なる作戦

 数十分後――


「びっくりだわぁ……」


「まさかヴァルカンさんが、ダークちゃんの仲間で、Sランク冒険者パーティの一員だったなんて……」


 サヤの自宅の居間で、マリナとアリサが声を漏らす。


 改めてダークとヴァルカンの話を聞けば、彼女たちはもともと同じ冒険者チームの一員であったとのこと。

 しかし、とある大きな戦いの中、ダークは主人であるエルフの少女を敵の大魔術攻撃から庇い、その際に迷宮へと強制転移された挙句、封印状態になってしまったのだという。


【そして、仲間であるダークを探すべく、チームのメンバーは別々に世界を旅していた……というわけじゃな?】


「その通りにゃ、シグレちゃん。情報収集をするのにちょうどよかったから、私は商人になったにゃん」


 シグレの質問に、小さく頷きながら答えるヴァルカン。

 そんな彼女の胸の中で、ダークは安心した様子で丸くなっている。


「それにしても、サヤくんには感謝にゃ。まさか封印されていたダークちゃんを解放してくれるにゃんて……何かお礼をしなくちゃにゃん!」


『そうだ! ヴァルカン嬢、であればとっておきの方法があるぞ!』


 ヴァルカンの言葉を聞き、ダークが思い出した! とばかりに声を上げる。


「とっておきの方法にゃ……?」


 いったいなんだろうか――と、首を傾げるヴァルカン。


 感動の再会に水を差していいものだろうか……と、サヤは逡巡するのだが、ダークが大きく頷いたので、里の襲撃の件、そこに伯爵が関わっていた真実や、証拠を手に入れていることを話す。


「なるほどにゃ、この前言っていた襲撃には、裏に貴族の存在があったにゃんね……」


「ああ、それについて、我々はヴァルカンに相談しようと思っていたところだったのだ」


 サヤたちの説明に、険しい表情を浮かべるヴァルカン。

 そして昨日のうちに考えていた内容を伝えるサヤ。


 ヴァルカンに相談する手を思いついた翌日に、彼女が現れてくれたのは幸運だった。

 その上、ダークがヴァルカンのかつての仲間であったことも、彼女を信用する後押しになってくれた。


「ヴァルカン嬢がSランク冒険者パーティの一員であることを明かし、真実を白日のもとに晒せば、伯爵を失墜させることができるのではないか?」


「にゃ〜……、いきなりそんなことをしても確実にうまくいく保証はないにゃ。それに、もっといい方法があるにゃん!」


 ダークの問いかけに、自信ありげな笑みを浮かべて答えるヴァルカン。


 サヤたちはあくまでこの件について相談し、何かアドバイスをもらえれば……程度に思っていたのだが、ダークとヴァルカンの様子を見るに、今回の件にガッツリ関わり、解決まで付き合う気が満々のようだ。


「もっといい方法とは、どのようなものだ?」


「サヤくん、さっき言ったとおり、私はSランク冒険者にゃ。立場上、いくつかの貴族の知り合いで、その中に心から信用できる貴族がいるにゃん」


 そして、その貴族の地位は侯爵であり、伯爵よりも立場は上。

 であれば侯爵のもとに証拠を持参し、今回の件を相談、その上で伯爵の身柄を拘束してもらい、裁きを受けさせることができるだろう……それがヴァルカンの作戦だ。


「大丈夫なのか……? その侯爵、貴族を信用しても」


 伯爵のせいで貴族という存在に嫌悪感を抱くサヤが、ヴァルカンに問いかける。


「大丈夫にゃ、今回の貴族――〝リューイン侯爵〟は確実に信用できる人物にゃん」


『なるほど。リューイン侯爵であれば、妾たち自身も何度も関わったことがある。信用の置ける御仁だ』


 ヴァルカンとダークは、そんな風に答える。


「……わかった、ダーク、そしてヴァルカンを信じよう」


「旦那さまが言うなら、私も信じるわ」


「わたしもです!」


 サヤの言葉を聞き、マリナもアリサも賛成の意を示す。


(ふふ……っ、出会った頃はまるで赤子のようだったサヤが、ここまで成長するとはな)


 サヤがやり取りをする姿を見て、シグレは心の中で喜びの感情を抱くのであった。

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