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妖刀に魅入られしスケルトン 〜迷宮を支配し、無敵の軍勢を率いる《最強》の剣魔王〜  作者: 銀翼のぞみ
二章

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三十七話 ダーク

『さて、それでは自己紹介といこう! 妾の名は〝ダーク〟という。よろしく頼む、サヤ殿』


 金色の瞳でサヤのことをジッと見つめながら、ベヒーモスが言葉を紡ぐ。

 そんなベヒーモス――ダークに、サヤは満足げに頷く。


【ま、まさか……】


「本当にベヒーモスが配下に加わってしまうなんて……」


『ブモっ……やっぱサヤ様はとんでもないぜ……』


 サヤとダークのやり取りを眺めながら、シグレ、アリサ、ミノが唖然としてしまうのであった。


『ふむ、どうやら封印されていた影響が大きいようだ……』


「む? どういうことだ、ダーク?」


『サヤ殿、妾はいくつかの姿を持っており……まぁ、見てもらう方が早いな』


 サヤの問いかけに、そう答えるダーク。

 するとその体が漆黒の光に包まれたではないか。


「きゃっ!?」


『な、何が起こるんだ!』


 悲鳴を漏らすアリサ、戦斧を構え警戒するミノ。

 シグレも無言ではあるが、妖刀形態へと変身しようとする――のだが……


『にゃ〜ん!』


 漆黒の光の中から、そんな声が聞こえてきた。


 やがて光は収まり――


「「「は……?」」」


 ――シグレたちが間抜けな声を漏らす。


 漆黒の光……その中から出てきたのが、一匹の可愛らしい〝黒猫〟だったからだ。


「どういうことだ? ダーク、お前は変身ができるのか?」


『その通りだ、サヤ殿。むしろこれこそが妾の本来の姿だ。先ほどまでの姿が変身後の姿なのだが、封印されていたせいで思った以上にマナを消耗していたようでな、変身を保っていることが難しいので本来の姿に戻ったのだ』


 前足で顔を洗いながら、サヤにそんな風に説明するダーク。


【驚いたのじゃ。ベヒーモスは目撃数が少なく、その生態のほとんどが謎に包まれていると聞いていたが、まさかこのような特性を持っているとは……】


 サヤとダークのやり取りを聞き、思わず言葉を漏らすシグレ。


「か、可愛いです……」


 猫の姿へと変身したダークを見つめ、アリサが頬を染める。

 ダークの瞳はまん丸と愛らしく、漆黒の毛並みも素晴らしい。

 そんな感想が漏れても仕方ないだろう。


「ふむ、可愛いか。たしかにそうかもしれんな」


 アリサに頷きながら、サヤはその場に屈むと、ダークを腕の中に抱いてみる。


『ふっ……ふははは! 妾をベヒーモスと知りながら、躊躇せずに抱いてしまうとは! 面白い、面白いぞ! サヤ殿!』


 肝が据わっているのか、それともただの天然なのか。

 なんとも判断に困るサヤの行動に、ダークは思わず笑いだす。


『ひ、ひえぇ……ベヒーモスをなんの躊躇いもなく触っちまうなんて……』


 サヤの大胆な行動に、ミノは戦々恐々だ。


【ベヒーモス……ダークといったな? ワシの名はシグレ、サヤのパートナーじゃ】


「ふむ、サヤ殿のパートナーか。よろしく頼む、シグレ」


 シグレの名乗りに、ダークはサヤの腕の中で丸く収まりながら返事を返す。


『ブモっ! 俺の名はミノ! サヤ様の最初の配下だ!』


「わ、わたしはアリサといいます。サ、サヤ様のお嫁さんです……!」


 シグレに倣い、ミノとアリサがそれぞれの自己紹介する……のだが、アリサはドサクサに紛れて何を言っているのだろうか?

 案の定シグレにふざけるなとツッコミを入れられている。


「二人は何を喧嘩しているのだ? 我の嫁はマリナなのだが……」


 またもやボケを炸裂させるサヤ。

 そんな彼の言葉を聞いたシグレとアリサが、「「ゲハァ……っっ!?」」と深いダメージを負っている。


『むむ? サヤ殿、お主はスケルトンなのに嫁がいるのか?』


「ああ、色々あってな。ダークお前の紹介も兼ねて里へと案内しよう。今日の迷宮攻略はここまでだ」


『ほう! 迷宮の外で暮らしているのか、面白い! その世界へ出られる日を……どれだけ待ち焦がれたことか……。ぜひ案内してくれ!』


 サヤの提案に瞳を潤ませるダーク。


 ひとまず迷宮探索はここまでとし、一行は迷宮の外へと向かう――。

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