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二十話 エルフ……エロフ?

「ち、ちょっと! それってどういうことですかぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!?」


 早朝の里の中に、アリサの絶叫が響き渡る。

 そんな彼女の目の前で――


【んむぅ……何じゃ、朝っぱらから騒がしいのぅ……】


 眠そうな声で、シグレが目を覚ます。

 そして彼女の胸の中で、サヤが「む、起きたか」とサヤが声を漏らす。


 昨夜、この里に滞在する期間家が必要だろうということで、サヤたちには一軒の空き家が用意された。


 そして翌朝、アリサはサヤに朝の稽古をつけてもらおうと起こしに来たのだが……。

 彼女を待ち受けていたのは、はだけたシグレの胸の中に、愛おしげに抱きしめられたサヤの姿だった……というわけである。


 驚愕する彼女の表情を見て、シグレの意識が急速に覚醒していく。

 そして、ニヤリと笑うと……むにゅん! と、サヤの頭をさらに胸の中に深く抱き込む。


【別に、どうもこうもないのじゃ。ワシとサヤは毎晩こうして寝ておるからの……♡】


 と、挑発的な表情でアリサに【ふふんっ】と余裕の表情を見せつける。


「な……っ!? ま、毎晩そのように密着しながら寝てる……ですって!? ほ、本当なのですか、サヤ様!?」


 あまりに衝撃的な光景、そして衝撃的なシグレの発言に、アリサは思わずサヤに叫ぶ。


 するとサヤは――


「ああ、何か問題か? シグレは我を抱き枕にしたがるし、我もこうしていると落ち着くのでな」


 ――と、シグレの胸の下からくぐもった声で素直に答える。


 アリサは「そ、そんなぁ〜……」と声をもらし、ガックリとうな垂れてしまう。


【クククク……これでわかったじゃろう? サヤとワシは〝特別な関係〟なのじゃ♡】


 脱力したアリサを前に、シグレはこれ身がよしに、サヤの頭を愛おしげに撫でまわす。


「く……っ、でも……わたしは負けませんからね!」


 アリサは若干涙目になりつつも、そんな言葉を残してその場を去っていった。


 シグレは【ワシのサヤの愛の勝利じゃ!】と嬉しそうな声を上げる。


 サヤは一体何がどうなっているのか理解できず、(…………??)と首を傾げるのだった。


 半刻後――


「失礼します、サヤ様――いえ、〝ご主人様〟っ♡」


 そんな声とともに、家のドアがバーン! と開かれた。

 そこに立っていたのはアリサだ。


 そんな彼女を見て、サヤは「む……? アリサ、何だその格好は? それにご主人様とは……」と不思議そうな声を漏らす。


 アリサの格好は普段のものと変わっていた。


 今彼女が着ているのは、いわゆる〝メイド服〟だ。それもただのメイド服ではない。


 スカートの丈はこれでもかと短く、程よくむっちりとした太ももが……そしてその太ももは、黒のガーターストッキングで包まれて彼女の可愛らしさを妖艶に演出する。


 それだけではない。メイド服の胸元もこれでもかと開いており、彼女のメロン級の谷間が大サービス状態だ。


 あまりに可愛らしく、そしてセクシーなアリサのメイド服姿に、その場にいたミノやゴブイチたちが『『『オウフッ!』』』と、股間を押さえ、前屈みになってしまう。


「ふふふっ……サヤ様、これはメイド服という主人に仕える者が着る正装です。サヤ様はこの里の救世主……そんな特別なお方には身の回りの世話をする者が必要です。そんなわけで、わたしがサヤ様のメイドになろうかと♡」


 サヤの質問に、アリサが頬を赤らめながらそんな風に答える。


 アリサは以前に、行商人からこの可愛らしいメイド服を買っていた。

 そして、メイドという職業について知る機会を得ていた。

 サヤと特別な関係を築くシグレに対抗心を燃やし、サヤにメイドとして仕えることで距離を縮めようと考えたのだ。


「ふむ、よくわからんが……なかなか興味深い衣装だな」


 主人に仕えるどうこうはあまり理解できなかったが、サヤはメイド服に興味を持ったようだ。

 アリサに近づくと、メイド服を上から下までマジマジと見つめるのだった。


「や、やんっ! ご主人様ったら……そんなにわたしの体を見つめて……。は、恥ずかしい……ですがもっと見てください! ご主人様の視線でわたしを犯してくださいっっ♡」

【おい、サヤよ! 何をアリサに誘惑されておる!? それにアリサ! お前も何とんでもないこと口走っとるのじゃ! エロフか? エルフじゃなくてエロフなのか!?】


 アリサの体……というよりも、メイド服をじっくりと観察するサヤ。そしてサヤの視線に晒され……息を荒くし、太ももをモジモジと擦り合わせ始めたアリサに、シグレが食ってかかる。


 メイド服に興味津々なスケルトン、その視線に発情するエロフ、それにヤキモチを妬く妖刀少女、その周りには股間を押さえるモンスターども……なんとも場が混沌としてきた。


「どうですか、ご主人様……わたしに〝ご奉仕〟させてくれませんか……♡」


 アリサが……サヤの頬骨に手を添わせながら、蠱惑的な表情で問いかける。

 シグレは【ダメに決まっとろうが!】と、抗議の声を上げようとするのだが――


「ふむ、よくわからんが面白そうだ。よろしく頼む、アリサ」


 ――と、興味本位で同意してしまう。


「ありがとうございますっ、ご主人様! それではこちらにどうぞ!」


 サヤの同意を受け、アリサは花の咲くような笑顔を浮かべると、そのまま彼の手を引き、家の外へと連れ出してしまう。


【ま、待つのじゃ! ワシのサヤに勝手なことを! ワシも行くのじゃっっ!】


 純粋なサヤが発情エルフの色に染められてはたまったものではない!


 シグレは焦り……そして嫉妬心に駆られながら、アリサとサヤのあとを追いかけるのだった。

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