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十八話 伝説のエルフと七大魔王

『キシャッ……迷宮で留守番だなんて……』


 食事を終えてしばらくした後、ペドラがしょげた声を漏らす。

 サヤにより、ペドラは迷宮で留守番を命じられてしまったのだ。


 理由はペドラが必要とする食事量にある。

 迷宮ならダンジョン・マナでエネルギーを吸収できるが、外でとなるとそれを全て食事で補わなければならない。


 この里にある食料は限られている。

 巨体を持つペドラがいては、あっと言う間に食料が尽きてしまうのだ。


 おまけに、狩りをしていた男衆は皆、野盗によって殺されてしまった。

 つまり、この里には動物を狩ることができる者がいないのである。


 なので、少なくとも食料事情が解決するまでは、ペドラのような大食らいは迷宮で待機となったわけだ。


『ブモッ! そんなにしょげるなよ、ペドラ』

『グギャッ! 俺たちが食料事情を解決するまでの辛抱だ!』


 落ち込んだペドラに、ミノとゴブイチが励ましの声をかける。


 エルフたちに乞われ、ゴブイチたちは彼女たちに武器の使い方を教えることになった。

 そうすれば、自分たちの身を自分たちで守れるようになる上に、狩りもできるようになる。

 そうやって里を立て直そうとしているのである。


 大小の違いはあれど、ゴブリンと人間、そしてエルフの体の構造は似通っている。

 ゴブリンの変異種であり、それぞれの武器の扱いに特化したゴブイチたちであれば、武器の扱いを教えるのに売ってつけというわけだ。


「む〜、わたしはサヤ様に武器の扱いを習いたいです……」


 剣の扱いを習う者はゴブリンセイバーであるゴブイチたちのもとへ、弓の扱いを習う者はゴブゴたちのもとへと集まってゆく。

 そんな中、アリサはサヤを見つめながら彼に剣を習いたいと言う。


【アリサよ、それは難しい相談じゃな。どうやら、この里には剣はあっても刀がないようじゃ。剣と刀では扱いが違いすぎる。その上、サヤは妖刀であるワシの性能とクラスとスキル、そして純粋な刀術を駆使しておる。ただのエルフのお前にサヤの戦い方を真似るのは不可能じゃ】


 アリサの呟きを聞き、シグレはそんな事実を提示するのだった。

 確かに、この里の男衆や野盗の使っていた武器の中に刀は存在しなかった。

 そして常人とサヤの持っている力の差も然りである。


「む〜、刀ですか…。あとはわたしにスキルや〝加護〟があれば話は別だったのでしょうね……」


 アリサが悔しげな表情で言葉を漏らす。

 彼女は特にスキルを持ち合わせていない。


 それと彼女が口にした〝加護〟という言葉だが……。

 エルフの中にはスキルとは別に、ある条件下で特別な効力を発揮する加護という力を持つ者が稀に現れる。

 そして強力な加護を持つエルフは勇者や魔王にも匹敵する存在に成り得ることもある。


 この森の中にある里でも、特別な加護を持った偉大なエルフの存在が知られているという。


 アリサの話によれば、伝説に数えられるエルフは三人おり、剣の加護を持ったエルフは《剣聖》、召喚の加護を持ったエルフは《召聖》、弓の加護を持ったエルフは《弓聖》という名でエルフたちの間で語られているらしい。


 なんでも、そのエルフたちはたったの三人で魔王のうちの一柱を倒してしまったというのだ。


「む? どういうことだ……。魔王のうちの一柱とは? まるで魔王が複数いるように聞こえるが……」


 アリサの話を聞いていたサヤがそのことに気づく。

 それに対し、アリサはこう答える。


「その通りです、サヤ様。魔王は全部で七柱存在し、〝七大魔王〟と呼ばれています。現在はそのうちの一柱が復活したということらしいです」

「七大魔王……か。そのような者たちが七体もいるとは……ますます面白くなってきた」


 アリサの答えを聞き、バトルジャンキーなサヤは、どこかワクワクした様子で言葉を漏らす。

 そんなサヤを見て、アリサは体がゾクゾクするような感覚を覚えるのだが……果たしてそれはどのような感覚なのだろうか――


 それはさておき。

アリサの母であるマリナは弓を選択した。


……というか、ほとんどのエルフが弓を選択し、ゴブゴとゴブロクのもとへ集まっている。

剣を選んだのはごく僅かなエルフのみだ。

 まぁ、女の細腕で剣を振るうのは難しい……そう考え、弓を選択するのは当然かもしれない。


アリサはまだ剣にするか弓にするか迷っているようだが……そのうち決まるであろう。


「よし、ペドラ。迷宮に戻るぞ」

『キシャッ、サヤ様もお戻りになるので?』

「ああ、少し迷宮に用がある。我の〝コレクション〟の一つを持ってこようと思ってな」

『キシャッ、かしこまりました。それでは私の上にお乗りください!』


 サヤがペドラの頭の上に乗る、そしてその後ろにシグレも乗り、サヤの肋骨に手を回しピッタリと密着する。

 サヤの背骨に当たった豊かな胸が、むんにゅりと柔らかそうに形を崩すのを見て、ミノが『くそう! くそう!』と地面に拳を叩きつけている。


 そんな見慣れた光景を後にし、サヤたちは再び迷宮に戻っていく。


(サヤ様、コレクションを持ってくると言っていましたけど、一体何なのでしょうか……?)


 サヤとペドラの会話を聞いていたアリサは、疑問顔を浮かべるのだった。

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