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十一話 休息

『グギャッ! すごい、傷が治っていく!』

『まさか、武器が姿を変えるだけでなく、このようなことができるなんて……』


 ゴブリンたちが降参し、配下に加わることが決まって少し――


 例によって、シグレによる治療が行われた。

 みるみる怪我が治っていくことに、ゴブリンたちは目を見開いて驚いている。


「よし、傷も治ったことだ。お前たちに名前を付けよう」

『グギャッ! 強き者自ら名前を付けて下さるのか!?』

『ありがたき幸せ!』


 サヤが名付けを行うと言うと、ゴブリンたちは爛々と目を輝かせる。

 名前を付けてもらえると言うことは、モンスターにとって何かしらの特別な意味があるようだ。


「左から順にいくぞ……ゴブイチ、ゴブジ、ゴブゾウ、ゴブシ、ゴブゴ、ゴブロク、ゴブシチ、ゴブハチ……以上だ」

【ま、またとんでもなく適当な名付けをしおって……】


 もはや種族名の略称に数字をつけただけの、名前というより識別番号みたいな名付けに、シグレは【あいたたた】と頭を押さえて溜息を吐く。


 だが当のゴブリンたちはというと……。


『グギャァァァ! 今日から俺はゴブイチだ!』

『ゴブジ! なんてカッコイイ響きだ……!』


 ……などと、喜びを露わにしている。


 ちなみに、ゴブリンセイバーの四体が、ゴブイチ〜ゴブシ。

 ゴブリン・アーチャーがゴブゴとゴブロク。

 そしてゴブリン・メイジがゴブシチとゴブハチである。


 アーチャーの二体に関しては、どうやらメスのようだが……女の子らしい名前を付けようなどという考えはサヤの頭の中にはない。


 その後はサヤが配下を集めている理由や、自身の目的を説明し、一行はさらに迷宮の先へと進んでいく。

 


「む、安全地帯か……。よし、この辺で休息を取ろう」


 皆で迷宮を進むこと少し――


 サヤは大きく開けた道を見つける。

 一度安全地帯に入ったことで、他の安全地帯も認識できるようになったようだ。


【なんじゃ、サヤのことだからスルーして先に進みたがると思っておったのじゃ】

「シグレ……もちろん我はそうしたいところだが、皆の疲労も考えなくてはならない。特にミノは消耗が激しいようだ」

【ほう……気づいておったか、良いぞ良いぞ、支配者としてしっかり成長してきているではないか!】


 シグレが随分と嬉しそうに笑う。


 見れば、確かにミノの表情は硬く、息も少し上がってきている。

 サヤとの戦い、それにペドラとの戦い、そしてここまで休息なしで進んできたことで、体力を消耗し始めてしまったのだ。


「皆、ここに入って休息を取るぞ」

『グギャッ!? こんなところに道が!?』

『キシャ〜、全然気づきませんでした』

『ブモッ! 休息……サヤ様、まさか俺のために……?』


 ゴブイチにペドラが、安全地帯に通じる道を見て驚きの声を上げる。

 やはりモンスターは、他者から教えてもらわないと安全地帯を認識できないようだ。


 ミノはサヤの心遣いに気づいたらしく、声を震わせ瞳に涙を浮かべている。

 よほど自分のことを思ってくれるのが嬉しかったのだろう。


 それはさておき。


 サヤを先頭に、安全地帯へと入っていく。


 中は前に入ったものよりも広めの空間が広がってた。

 しかし、景色自体は以前のものとほぼ変わらない。

 岩肌の地面に壁、天井……それと中央に泉のようなものが湧いている。


 ミノは真っ先に泉へと駆け、水をゴクゴクと飲んでいる。


【さて、サヤよ。またワシと一緒に眠るとするのじゃ】

「アレか、また抱き枕? とかいうものになればいいのか」

【そうじゃ。可愛いお前を抱いて眠ると気持ちいいのじゃ!】


 サヤの質問に応えるシグレ。

 またサヤを抱いて眠りに就きたいらしい。

 なんだか頬がピンクに染まっているように見えるが……やはりサヤは気づかない。


『グギャッ!? シグレ様に抱かれて眠る!?』

『なんて羨ましいんだ!』


 オスのゴブリンたちが興奮した様子で言葉を交わす。


 ゴブリンは性欲が強く、異種交配も可能な種族だ。

 絶世の美少女であるシグレ、彼女の挑発的な着物姿にもともとゴブリンたちは発情寸前だった。


 そんなシグレが、サヤを胸の中に抱いて眠りに就こうとしている……。

 これほどサヤを羨ましく思うことはないだろう。


『むぅ……私は逆にサヤ様を抱いて寝れるシグレ様が羨ましいぞ……! サヤ様、そのうち私を枕にしてくれないだろうか……』


 ペドラは主であるサヤを抱いて眠るシグレが羨ましいようだ。


『ブモッ……! 妖刀美少女×スケルトン……ありだな……!』


 ミノは何やらとんでもないものを想像し、新たな扉を開きつつあるらしい。

 そしてミノの呟きを聞いた、ゴブゴとゴブロクが『不潔……』とドン引きしている。


【どうじゃ、サヤ? ワシの胸は柔らかくて落ち着くじゃろ?】

「ああ、我がスケルトンでなければ、このまま眠ってしまっていたかもしれないな」


 肌けた着物から覗く胸の谷間に、むにゅん! とサヤの頭を抱き込みながらシグレが聞くと、サヤは心地好さそうな声でそれに応える。


 それを聞き、シグレは【そうかそうか……♡】と優しい手つきでサヤの頭を撫で……そのまま眠りに落ちてゆく。


 二人の姿を、配下たちは静かに見守るのだった。

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