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百一話 王都グリフ

 翌日――


 港のマーケットにある食堂で朝食を食べ終えた後、サヤたちは宿屋のエントランスに集合していた。


「よし、皆揃ったことだ。行くとしよう」


 子犬形態のグランペイルを腕に抱き、サヤがソファーから立ち上がる。


 昨日一日ではあるが、ルルンの雰囲気は十分に楽しむことができた。

 ここからは本題、戦力拡大に向けてムルトニア山脈へと向かうのだ。


「まずは移動手段を確保しましょう」


 フランの案内で、サヤたちは街の外壁に設置された門の方へと向かう。


 ◆


 門の前にて――


「ほう、これはまた珍妙な」


 感心した様子でサヤが声を漏らす。

 その視線の先には馬車に繋がれたとある生物が。


「サヤ、その生物の名はリザードキャリアといいます」


「馬よりも丈夫で、長距離を移動できるこの国に生息する魔法生物にゃん」


 巨大なトカゲのような生き物――リザードキャリアについて、フランとヴァルカンがそんなふうに説明してくれる。


「魔法生物……ということは、何かしらの特殊な力を持っているということか?」


「その通りにゃん、サヤくん。リザードキャリアは自身の魔力で体内に水分と栄養素を生成することができて、一週間くらいは何も飲み食いしなくても生きていける生物にゃん」


 ヴァルカンの説明に、サヤが「ほう、それは素晴らしい」と、またもや感心した声を漏らす。


 そんなサヤの反応に、リザードキャリアが心なしか得意げ雰囲気で「グルルン!」と喉を鳴らしている。


 リザードキャリアが二体で引くお大きめな馬車を手配してもらい、一行はムルトニア山脈が臨む王都グリフへと移動を開始する。


 ◆


 翌日――


「ご主人様、王都が見えてきました!」


 馬車から外を眺めながら、アリサが興奮した声を上げる。

 アリサの横から窓の外を見るサヤ。その視線の先に高い外壁に囲まれた王都グリフ、そしてその向こう側に巨大な山々――ムルトニア山脈が座している。


「あの山の上にバハムートがいるわけか、楽しみだ」


 クツクツと笑いながら、山脈を見据えるサヤ。


 その後ろで、フラン、ヴァルカン、そしてダークの表情がいつになく真剣味を帯びているのだが、果たして……


 ◆


 王都グリフにて――


「わぁ〜! すごい綺麗な都市です!」


「本当じゃな、建物がどれも洒落た色形をしておるし、道もとんでもなく綺麗に舗装されているのじゃ!」


 外壁から中に入ったところで、アリサとシグレが感嘆の声を漏らす。


 そしてそんな景色の奥の方には、立派な城の姿が――

 王都グリフ、どうやら相当に豊かな城塞都市のようだ。


「さっそくムルトニア山脈に向かいたいところだが……我は山に登るのは初めてだ。何か準備することはあるか?」


「そこに気付くとは、さすがサヤくんにゃ」


「まずは魔法道具店で登山用具を揃えに行きましょう」


 サヤの質問にそう答えると、ヴァルカンとフランは皆を先導して歩き出す。


 ◆


 それから少し――


 サヤたちは魔法道具店スティーバーの店内でフランたちの説明を受けていた。


「まず、山の上は雪が積もっていて冷えます。なのでこのマジカルウォーマーを装備します」


 そう言って、赤色の石が嵌め込まれたネックレスを指差すフラン。

 装備するだけで、体を山の寒さから守ってくれる優れものらしい。


「次はこれにゃ! マジカルスリップストッパー、これがあれば険しい山道でもある程度は滑ったり転んだりを防止してくれるにゃん」


 今度はヴァルカンが緑の石が入ったネックレスを指差す。

 ムルトニア山脈のような険しい山道に挑みつつ、戦闘までこなそうとするのなら、この辺のアイテムは必須とのことだ。


 続いてダークが――


「あとは専用のコンパスだ。ムルトニア山脈は特殊なドラゴンが複数存在しているせいか磁場が乱れている。かなり値は張るが専用のコンパスがなければあっという間に迷って大自然の餌食となってしまう」


 と、説明を締めくくる。


「ム、ムルトニア山脈……ドラゴンだけでなく山そのものが私たちにとっての脅威なのですね」


「その通りです、アリサ。……もっとも、対策さえしていけばなんてことはありません」


「まぁ、問題なのはドラゴンの方にゃねぇ……」


 アリサを安心させようと声をかけるフラン。そんな彼女に続こうとしたところで、ヴァルカンの視線が何かを思い出すかのように遠く方へと……


 そんタイミングで、グランペイルが――


「なぁ、サヤ様」


 と彼の顔を見つめる。


「ふむ、そうだな」


 グランペイルの呼びかけに、サヤが小さく頷く。

 そしてそのまま、フランたちへと問いかける。


「フラン、ヴァルカン、そしてダークよ。バハムートとはどんな因縁があるのだ?」


 ……と――


「……っ! サヤ」


「気付かれてしまっていたにゃ……」


「さすがサヤ殿、やはり優しいのだな……」


 サヤの問いかけに、何とも言えない表情で反応を示す三者。


 そう、サヤは気付いていたのだ。

 バハムートの話になると、フランたちの間に絶妙な空気が流れていたことに。


「サヤ殿……とりあえず買い物を済ませるとしよう。歩きながら、妾たちとバハムートの間で何があったか説明させてくれ」


「ダークよ、了解した」


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