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九話 新たな配下

「《ファイアーバレット》……ッ!」


 迫りくる《サンド・ブレス》を前に、サヤが発動したのは【スケルトンメイジ】のクラスによって取得した《ファイアーバレット》だった。


【一体何を!?】


 シグレが驚愕の声を上げる。

 広範囲、そしてとてつもない威力の《サンド・ブレス》を前に、《ファイアーバレット》程度では太刀打ちできるはずがないからだ。


 だが、決してサヤは発動スキルの選択を間違えたわけではない。

 その証拠に、シグレが驚いた声を上げたその瞬間には、次の行動に出ていた。

 たった今、発動した《ファイアーバレット》が飛び出すその刹那に、サヤがシグレを振るい〝《ファイアーバレット》を切り裂いた〟。


 そして次の瞬間――


 ドゴォォォォォン――ッッ!


 と、轟音を響かせてサヤの前方に向かって大爆発が起きたではないか。


 爆発はサーペントドラゴンによる《サンド・ブレス》を飲み込み、その効果を無効化する。

 予想外の出来事に、サーペントドラゴンにミノ、それにシグレでさえも絶句する。


「これで終わりだ……ッ」


 静かに声が響く。

 それと同時に、サヤが爆炎の中から飛び出した。

 そして、呆気にとられるサーペントドラゴンの腹に、渾身の横一文字切りを叩き込む。


『グフッ……! ダメだ……降参だ、私の、敗北……だ……ッ』


 言いながら、サーペントドラゴンはその場に崩れ落ちた。

 それを見届けたところで、サヤは〝全身に纏っていた気流〟を解除する。


【そうか、そういうことじゃったのか! サヤよ、とんでもないことを考えおったの!】


 スキルを解除したサヤを見て、シグレはようやく何が起きたのか理解する。


 戦いの最中、サヤはずっと《エンチャント・ウィンド》による気流を纏っていた。

 そして、サーペントドラゴンの《サンド・ブレス》に対し、《ファイアーバレット》を発動した瞬間、気流をシグレに纏わせ《ファイアーバレット》を切り裂いた。

 その結果、《ファイアーバレット》の生み出す炎が《エンチャント・ウィンド》の生み出す気流を燃やし、大爆発を起こしたのだ。


 至近距離で爆発を起こしたサヤが無傷だったのは、同時に他の気流を操作し、自分へのダメージをゼロにしたからである。


【ふむ、コヤツの瞳には敵意はもう感じられん。どうやら心から敗北を認め、《敗者隷属化》のスキルの対象になったようじゃ】


 横たわるサーペントドラゴンを見て、シグレが妖刀形態から美少女の姿に変身する。


『……武器が、喋っている……? それに姿を変えた……だと……!?』


 息も絶え絶えに、サーペントドラゴンが驚愕を露わにする。

 やはり喋る武器というものは珍しいし、それが人の姿をとるなど想像にも及ばないものだ。


「それより、我の配下に加わる気になったか?」

『キシャッ! もちろんです、強き者よ。ぜひ私をあなたの忠実な下僕にしてください!』


 腕を組みながらサヤが問うと、サーペントドラゴンは尊敬の眼差しでサヤを見つめ、応える。

シグレの言った通り、《敗者隷属化》のスキルがしっかりと作用しているようだ。

 もっとも、この尊敬の眼差しは隷属とは別のもののような気がするが……それはさておく。


「よし、そういうことなら……シグレ、こいつの傷を治してやってくれ」

【もちろんじゃ。サヤの配下に加わるのだから、使いものにならないと困るからのぅ】


 サヤの要望に応えて、シグレが手のひらをサーペントドラゴンに向ける。

 ミノの時と同じように、サーペントドラゴンの体が闇色の光に包まれ始めた。


『おぉ……! 痛みが引いていく、傷が塞がっていく! これほどの力を扱えるとは、さすが強き者の武器……!』


 サーペントドラゴンが感動のあまり声を震わせる。


 それにしても、これほどの巨体の傷も全て治してしまえるとは……。

 シグレの治癒能力の凄さに、サヤは改めて感心するのだった。


【では自己紹介といこう。ワシはシグレ、サヤの武器にして恋び――保護者のようなものじゃ、よろしくのう】

「サヤだ」

『俺はミノ! サヤ様の最初の配下だ、先輩だから敬えよ?』


 シグレ、サヤ、ミノの順番で自己紹介をしていく。

 シグレに関しては何かを言おうとして慌てて言い換えたようだが……何を言うつもりだったのだろうか?

 サヤはどうでも良さそうに名前だけを告げ、ミノはふんぞり返って、先輩風を吹かしている。


『サヤ様、それにシグレ様ですね。貴方達の配下に加われたことを誇りに思います』

『おい、俺を無視するな! 敬意を払え!』

『黙れ! お前ごときに払う敬意など持ち合わせていない』

『何を! 俺の攻撃に悲鳴を上げていたくせに!』

『ふんっ。お前など、サヤ様が作ってくれた隙をついてチビチビ攻撃していただけではないか!』


 サヤとシグレに羨望の眼差しを向け、応えるサーペントドラゴン。

 無視される結果となったミノが食ってかかると、サーペントドラゴンは鼻で笑う。

 どうやらミノを先輩として認めるつもりはないようだ。


「どうでもいいことに時間を使うな。それよりも他のエリアに行って腕試しをしたい」

『はっ! 申し訳ありません、サヤ様。お見苦しいところをお見せしました。ささっ、他のエリアに移動されるのであれば私の背中に乗ってください!』


 サヤの言葉で、サーペントドラゴンはハッと我に返り、身を屈めると背中に乗るように言う。


 他者の背中に乗って移動するというのか……面白そうだ。

 そんなことを考えながら、サヤは静かにサーペントドラゴンの背中に乗る。


【ならばワシはサヤの後ろじゃ】


 そう言ってシグレも続く。

 そしてサヤの肋骨に手を回し、彼の背骨に頬をつける。

 何やら頬が赤く染まっているが、サヤはそれに気づかないし、気づいたとしてもその意味は理解できないだろう。


(シグレ様のお体に触れるチャンス……!)


 欲望に忠実なミノが、シグレの後ろに乗ろうとするが……。


『雑魚が私の背中に乗るな!』


 という、サーペントドラゴンの言葉とともに、彼の尻尾によって弾き飛ばされた。


『では、まずはどちらに向かいますか、サヤ様?』

「とりあえずこのエリアを出て、枝分かれしたもう一方の道に進む」

『かしこまりました。それでは出発いたします!』


 サヤの答えに頷くと、サーペントドラゴンが地を這いグングンと進んでいく。


 その後を『俺を置いて行くなぁぁぁぁ!』と、ミノが走って追いかけるのだった。

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