46 新たな局面!
7か月ぶりの更新……(;・∀・)
申し訳ありませんでした!
「あれは、まさか……」
突然戦場に現れた異様な姿の存在にその場に居合わせたバレリー、ホーゲンはもちろん蜥蜴人族達も驚きのあまり言葉が出てこない。
ただバレリーには目の前に現れた存在の正体に気づいていた。
あれは手配書に描かれていたアンデットだと……。
「ふぅ、まさかこんなにも早くこの姿を見せることになるなんてな」
俺はいつもの姿とはかけ離れた姿変貌した目の前のエリザを見つめる。
彼女も俺の姿に少し驚いているようだ。
俺の今のこの姿、これは創造によって作り出した姿。
通常、俺は死者の反逆という魔法によって人間の姿になっているが、あれでは中級魔法までしか使用できず力が大幅に制限される。
だが本来の力を出そうとすればアンデットの姿に戻る必要があり、正体がバレることになるのは目に見えている。
だからこそ以前暴走したときの姿に変化することで正体がバレるのを防いだという訳だ。
俺はエリザの攻撃を止めようと動いたため背後で息を切らすエイラ、ルルミア、そして俺の姿をしている男性を見つめた。
「やっぱり自分の姿を見るというのは少し恥ずかしいな」
皆さんも気になっているだろうが、俺の姿をしたあいつ。あれは創造で姿を変えたルナなのだ。
本来の姿になるのはいいが、その際に俺の姿が見えなくなっては疑いの目を向けられるかもしれない。
そのためルナには俺として戦争に参加してもらっていた。
戦況についてはルナとの視覚共有の魔法で俺も見ていたのだが、まさかエリザが暴走してしまうとは……。
「お前、手配書のアンデッドね!? 何が目的かは知らないけど、邪魔をするならここで倒させてもらう!」
「……」
突然現れた俺の姿に言葉を失っていたバレリーだが、ようやく気を取り直したのか剣先を俺に向け声を荒げた。
やっぱりこうなるよね。
でもいつも通りの口調で喋っていたら勘のいいバレリーのこと、何か気づくかもしれない。
えっと、アンデッドらしい話し方ってどんな感じなんだろうか?
「だまれ人間。おれ、、私は貴様たちが騒いだせいで安眠を妨げられた。邪魔をするならお前こそ容赦はせんぞ」
「……ぐっ、なんという気迫だ」
自分を睨みつけた俺の右目にバレリーは額に汗を流し後方に少し下がる。
だがバレリーとは反対に、エイラ、ルルミア、ルナの3人は顔を下に向け肩を震わせていた。
そう、笑いを堪えるのに必死だったのだ。
「ぷくくく……、き、聞きましたルルミアさん? あのタイチ様の喋り方」
「え、ええ。あれだけ似合わないのも珍しいでしょうね、フフフ……」
「タ、タイチ様。私はどんな姿だろうと、あなたに、ヒヒヒヒ」
あ、あいつら……!!
分かっているよ、似合わない喋り方だってことは!!
でもしょうがないじゃないか、アンデッドの喋り方なんて知らないんだから。
俺が視線を笑いを堪える3人に変えると、3人も俺の心が分かったのだろう。
すぐに笑うのをやめたが、視線をこちらに向けることは無かった。
「さて、ではまずは目の前のこいつを黙らせるか。おい人間、この紅鬼はなんだ?」
「……ふぅ」
俺の言葉にバレリーは小さく息を吐き剣先を地面に下ろした。
「お前のようなアンデッドに話すことは無い。だが今の私達の力で団長を止めることが出来ないのも事実。約束しろアンデッド! 団長を、彼女を殺すことは無いと!!」
「ふっ、それは約束は出来ん。だが何も言わないのであればお前もあの紅鬼も消すのみ」
「……ぐっ、わかった。団長は紅鬼の末裔。その力は額に生えている角に集中している。あれさえ破壊するか切断すれば暴走は止まる」
「お、おいバレリー! それは俺達竜騎士近衛団だけの秘密だろ……」
「責任は私が取る。でもこのまま団長が暴走し続ければいずれ討伐の命が下るかもしれない。そうなるくらいなら」
バレリーの言葉にホーゲンも声を震わす彼女にそれ以上は何も言うことは無かった。
なるほど、あの角さえ何とかすればいいのか。
それなら殺さずなんとかなるな。
「……人間、お前の正直な言葉に免じて約束は守ってやる。ありがたく思え」
「ま、待て! 止める方法が分かっても団長の力は今や紅鬼そのもの、そう簡単に」
「ハハハハハッ、私を誰だと思っている!!」
身体強化。
俺は目の前のエリザへと視線を向け、一気に彼女の目の前まで移動した。
その速さはまるで雷、エリザも俺が目の前に現れるまで姿に気が付かなかった。
「なっ……! いつの間に」
「すこし調子に乗り過ぎだ」
体を空中で反転させ振り上げた俺の右足は、的確にエリザの額に振り下ろされ彼女の体は地面に叩きつけられた。
衝撃でその場には大きなクレーターが生まれ、辺りは土煙に包まれる。
「この……、アンデッドがぁぁぁ!!」
「ほう、この攻撃でも壊れないのか。中々頑丈な角じゃないか」
「舐めるな! 鬼炎!!!」
エリザは額から血を流すも、すぐさま反撃を開始。
俺を後方へと蹴り飛ばし右手を頭上に掲げる。そこには10m程の炎の塊が生み出されエリザの足元に生えている植物が高温のあまり発火していくのだった。
あれだけの高温の炎魔法、聞いたことがない魔法だけど恐らく上級魔法だろう。
吹き飛ばしても周りに被害が出るのは目に見えているし……、よし。
「吹き飛べアンデッド!!」
エリザは炎の塊を俺へと放つ。
だがその魔法が俺にダメージを与えることは無かった。
鬼炎は俺に到達する前に一瞬で姿を消してしまった。
「ど、どういうことだ!?」
「……上位上級魔法 完全なる防御(パーフェクトプロテクション)。いかなる魔法、物理攻撃も通さない防御系最高位の魔法だ」
「上位上級魔法だと!? ふざけるな、そんな魔法使える存在なんて」
「ハハハハッ、だからこそお前は私に負けるのだ」
「……がはっ!!」
自身最高の攻撃魔法をいとも簡単に防がれたことに気を取られたエリザは俺の動きに反応することが出来ず、腹部に膝蹴りを喰らい後方へと吹き飛ばされる。
その衝撃の強さにエリザは立ち上がるもすぐに膝を折ったが、再び俺へと反撃を開始。
両手の爪はより長く鋭さを増し、俺の首元へと襲い掛かった。だが……。
「まったく、往生際が悪いな。まだ力の差が理解できないとは」
「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」
エリザの爪は俺の周囲に展開された完全なる防御(パーフェクトプロテクション)を破ることは出来ず一瞬で粉々に砕け散り、両指からは血が流れ落ちた。
だが怯んだエリザに俺は攻撃の手を緩めない。
「そろそろ終わりにしよう。上級魔法 大地創造」
俺の言葉で足元の地面が盛り上がり、いくつもの土の槍がエリザを囲い込んでいく。
土の槍は魔法で強化されているため脱出を試みるエリザの攻撃は全く歯が立たず、しばらくするとエリザの体は土の槍で全く身動きが取れなくなり頭を動かすのがやっとの状態になってしまったのだった。
「ぐっ……!!」
これでようやく動きが止まったな。
あとはこの額の角を切り落とせば……。
「お前はよくやった。だが相手が悪かったな。 上級魔法 闇刃」
俺の頭上に生み出された漆黒の刃。その刃はエリザへと放たれると彼女の角を額から切り落とした。
するとエリザの体からはとてつもない熱気が放たれ、体は縮み、しばらくするといつものエリザの姿へと戻った。
ただ彼女の意識は無くなっていたが。
「……まさかあの状態の団長が手も足も出ない、赤子扱いなんて」
戦いが終わりエリザの暴走が止まったのを確認したバレリーは、驚きでそれ以上何も言えなかったが、すぐに意識を失っているエリザの元に駆け寄る。
魔法を解除し地面に横たわるエリザ。彼女を抱き上げたバレリーはすぐさま回復魔法を施した。
「団長、大丈夫ですか?!?!」
「うーん……、えへへへ、お腹いっぱい」
「……はぁ、全くこの人はどれだけ心配したと」
バレリーは子供の様な顔で眠るエリザに笑みを浮かべると、彼女を抱えたまま俺に視線を向けた。
「……今回は助かった、礼を言わせてもらう」
「助けた覚えはない。まぁこれに懲りたならその娘をよく見張っておくことだな」
俺はバレリーに視線を向けることなく彼女に答えた。
何故なら戦いの最中からあることが気になっていたからだ。
ここへと1つの大きな魔力、そして感じたことも無い異様な魔力を持つ存在が向かってきていたのだ。
なんだこの魔力反応は……。
大きな魔力、これは恐らく蜥蜴人族だろうがその近くにあるこの魔力。
これは一体……。
「タイチ様、どうしましたか?」
「エ、エイラ!? なんでここに……。俺に話しかけていたら何のために」
「それなら大丈夫です」
その言葉で振り返ると、そこには俺の姿をしているルナが立っていた。
「竜騎士近衛団の面々は既にここから離れエリザの治療に当たっています。私があのアンデッドと話をしてくると言ってきましたから」
「はぁ……、それでも万が一ということがあるだろうが。まぁ、今更言っても仕方がないか」
「そうそう、仕方がないですよ」
エイラは俺にだけ見えるように笑みを浮かべる。
まったくエイラは分かっているのか?
俺の正体がバレたらあの手配書の妖精族もエイラだってバレるかもしれないのに。
……はぁ、俺ってつくづく皆に甘いよな。
ドォォォォォン!!!
しかしその時、前方でとてつもない音と地響きが起こった。
それは俺が先ほどから感じているあの魔力と同じ場所。
そしてそこからは俺も知っているある男の姿が吹き飛ばされてきたのだ。
「ぐっ、不覚をとった……」
「ディートゲイル?!」
「その姿は、タイチ殿……」
まったくどいつもこいつも俺が変装している意味を理解していないのか??
まぁ幸い誰もディートゲイルの言葉には気づいていないみたいだけどさ。
ディートゲイルもすぐに気が付いたのか出かけた言葉を飲み込んだようだ。
立ち上がり周りには聞こえない声で俺へと話しかける。
「すまんタイチ殿。少し力を貸してくれ」
「それは構わないけど、一体何が」
ディートゲイルは俺の問いに視線で答えて見せた。
彼が見つめる先には、巨大な何かがこちらに向かってきていたのだ。




