カレン近況報告を書く
拝啓、お父様、お母様、そして、お姉様方、お兄様方お元気ですか?
カレンは今日も元気です。
今度、ショウブ先生がレイラさんと結婚します。
あっ、レイラさんと言うのは、カレハお姉様がお世話していたナウプリズン家のお嬢様で今は魔導バイク便の仕事をしていて、それで……。
と私は実家に送る手紙を書き始めたが、途中から文面がおかしくなったので一旦書くのをやめた。
「うーん、こうもおかしな文面になると変に心配されますよね。あっ、そういえばこの書類も早いところ終わらせないと」
取り出した書類、それは魔法省に送る私設魔導師ライセンス更新の書類である。
「アイリスさんに今週中迄に書いておいてって言われましたね」
とりあえず、手紙の方が行き詰まっているので、先にこっちを終らせる事にした。
「まずは、名前」
カレン・イノセント、私は名前の欄に書いた。
「次に年齢」
14と書いた。
「えっと、家族構成と得意な魔法」
実家のイノセント家では、お父様とお母様、お兄様が3人とカレハお姉様と書いた。
得意な魔法は……。
「爆発系……でも、炎系って書いた方が良いのかな?」
少し悩んだ末、嘘はいけないと思い爆発系と書いた。
そもそも、この魔法のお陰で、憧れの先生の下で魔導師ができるのだから。
どういう事かと言うと私の実家であるイノセント家は、魔導師を輩出するような家系ではない事である。
私のお父様もお母様、お兄様方やお姉様もバトラーかメイド職、つまりは人に仕える職業になっています。
末娘の私もいずれ同じ職に就くと自覚していながら過ごしていた幼少期、ある事柄により変化が起きました。
それは、当時若冠14歳のとある双子の兄妹による魔導師によるドラゴンの討伐でした。。
通称ユーリ兄妹。
攻撃型の妹アヤメ氏と補助型の兄ショウブ氏の見事な連携による討伐。
その事柄は瞬く間に様々なメディアに取り上げられ、ブームが起きました。
そう、俗に言った魔導師特需。
魔導師になろうとした少年少女が多く現れました。
もちろん、私も例に漏れなかった存在でした。
しかし、すべてがすべて魔導師になれるわけではありませんでした。
此の世界の人々は、大なり小なり魔力をもってます。
しかし、魔導師になるためにはそれ相応の魔力を持たないといけません。
所謂、先天性な問題であきらめる。
そして、素質があっても回りの環境と言う後天性な問題であきらめる。
私の場合、後者でした。
ただ、私は末娘と言う立場があってか、少々自由な時間が与えられていました。
その自由な時間を使って、私はこっそりと魔術の練習を独学で行いました。
勿論、イノセント家の本業であるメイドの勉強もちゃんとやっていました。
しかし、このような生活、家族にバレないという事はありませんでした。
たまたま、仕事先から休暇をもらっていた一番上の姉のカレハお姉様に魔術の練習がバレてしまいました。
でも、カレハお姉様はこの事を黙っている代わりに自分に向かって魔法を放ってみなさいと妙な事をいわれました。
どうやら、仕事先のお嬢様が最近魔法を使ってオイタをするらしくその件を対処するために実家に戻って来たそうで、私の魔法を受けることにより耐性付けるのが目的でした。
これにより、更に練習効率が上がり、私の得意な爆発魔法の完成度があがりました。
ちなみにカレハお姉様は三ヶ月後仕事先に戻り、その家のお嬢様を凝らしめたそうです。
その、お嬢様と言うのがショウブ先生と結婚するレイラさんであって……。
ふと気づくと、わたしは本来書き上げる書類ではなく手紙の方を書いていた。
「いけない、いけない。でも、手紙の方が上手く書けているからこのまま続けましょう」
何だかんだで、行き詰まっていた手紙は直ぐ様仕上がりました。
もちろん、魔法省に提出する書類も完成させました。
「カレンちゃんは仕事が早くて助かるわ」
「いえいえ、それにしても何で急にライセンスの更新が必要なんでしょうか?」
ネコ型使い魔であるアイリスさんはわたしの疑問の答えを教えてくれました。
「ひとつは、師匠変更手続き、今までは魔法省大臣の弟子だったけど、アイツに替わったからね。もうひとつはアカデミーギルドに登録のためね」
「あ、アカデミーギルドですか!」
拝啓、ご実家の皆様、カレンの生活は更に変わるようです。