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音のない世界  作者: 横須賀かもめ
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小説の名は「柴崎駿物語」11

 「将棋の印象はどうだったんですか?」と雨竜が聞く。

 「終盤が子供じゃないぐらい強かった」と奄美が言えば、「こういう人がプロになるんだろうなと」お互いが感想を言い合った。

 雨竜が森田に「プロになるとは?」と質問する。





 「指し手の筋が良くて、綺麗だったんですよね」と答える。

 指し手とは手筋の事ようで、歩の使い方がとても綺麗で参考になったと、当時は全然勝てなかったとも言っていた。




 「で、二人は奨励会に入ることになったんですよね」と泰斗が付け加える。

 奄美が小学校六年の時で、森田が小学校三年の時である。

 二人でよく東京将棋会館に通ったそうだ。

 行くのも帰るのもいつも一緒。




 森田の家に、森田を送り届けてから帰るという生活だったそうだ。

 何をするにも奄美の後に付いて行ってたと

森田がしみじみ言う。




 「将棋以外で、二人の思い出とかは?」と泰斗が聞く。

 「‥‥‥そういえば、二人で埼玉まで歩いて帰った事が‥‥‥」と森田が言うと、奄美が激しく同意する。

 「あったあった、森田君がお小遣い全部使い込んでな」と奄美が言うと、二人で笑い合う。

 話を聞くと、二人とも対局に負けてイライラしながら帰宅の途に付いていたそうだ。

 無言で駅まで向い、電車に乗った二人。




 あまりの無言で空気が悪くなったと感じた三歳年上の奄美が気を遣って、森田を食事に誘ったそうだ。

 森田もその誘いにのった。

 新宿で降りた二人が歩いていると、森田が「焼肉食べたい」と言ったそうだ。

 子供二人で焼肉を食べ、持ち金をほとんど使いすっからかん状態に。




 仕方なしに歩いて帰ることにしたそうだ。

 距離が距離なので、歩いてる道中に見つけた交番に入って、事情を説明し親に迎えに来てもらった。

 場所はもうすでに東京と埼玉の県境付近まで来ていたそうだ。


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