小説の名は「柴崎駿物語」②
泰斗が原稿用紙を読み終わり、雨竜の方を見るとFXの書籍を読んでいる。
先日のガリクソンの講義を受けて、興味が深まったみたいだ。
プロットと、とりあえず書き終わっているところまで読ませてもらうために、雨竜の仕事場を訪れている。
書き終わっている所と言っても、すでに完成間近であった。
その進み具合を確かめて、安堵する泰斗である。
初見で読んだ感想は、将棋の話しではあるが、対局のシーンも数ページ、将棋を指している所もそれほど多くない。
棋士の話ではあるが、年の離れた人と人の絆の話しに感じられた。
一人の男の生き方、普通の人間の生き方が描かれている。
また、今までの雨竜の小説とは違い意外な程、純粋な物語に感じられた。
今まで描いた事のない物と言ってただけある。
雨竜の方を見ると、まだFXの本を読んでいる。
この人はもしかして感想を聞くのが、怖いのかもしれないと泰斗は思った。
その証拠に本を読む手がずっと止まっている。
「雨竜さん」と呼ぶと、少しドキッとした仕草をして読んでない本を畳み、「どうでしたか?」そっけなく、全然気にしていませんが、一応聞いておきますか、感想をという態度にも泰斗からは見れた。
しかしここは素直に「面白かったです、いつもの雨竜雷とは違った作風が新鮮で、良かったです」と感想を伝えた。
もう一つ気になった事を聞く。
「タイトルは柴崎駿物語にするんですか?」
「エッ、ダメ?」
「ダメではないですが‥‥‥」こんなタイトルでは売れないでしょと思う泰斗であったが、はっきりは伝えられないでいる。
「いつもタイトル、担当編集が決めてくれていたんだよなー」
「そうなんですか?」嫌な予感がする泰斗。
「だから、今回も担当者の泰斗君にお願いしようと思っての、(仮)なの」
「それメチャクチャ重要じゃないですか」
また悩みが増える泰斗であった。
雨竜の原稿を読みながら「取材どうします?」と聞く。




