あっしゃビットコインよりFX派かな!⑥
「担当者も変わったしね」と付け加える。
泰斗の方を見る雨竜。
つられて全員、泰斗を見る。
「いやいや俺の話しはいいんですよ。小説の話しですよ」と雨竜に促す仕草をする泰斗。
「誰もが知っている物語に、誰も知らない真実を‥‥‥みたいな」と雨竜が言う。
「それが奄美君の事なんですか?」と森田が、続いてレモンサワーを飲みほして聞く。
「その辺も、取材で知れればいんですけどね」とまさみを見た後、泰斗を見る雨竜。
雨竜と森田の話しを、下を向いて聞いている泰斗。
まさみの場所からは表情までは窺えない。
ガリクソンが合いの手を入れるように「シロクロツケルキョウギダカラ、ミステリアスナブブンガアルンデショウネ!」
「将棋強くなるには、何をすればいいんですか?」と安井が森田に聞く。
「棋譜を並べて、検討して、実践を繰り返して、検討して、詰め将棋したりですね」と答える森田。
横で頷きながら聞いている雨竜。
頭の中のメモ帳に書いているかのように、真剣に確実に森田の話しを聞いている。
「奄美さんもそうなんですか?」とまさみに雨竜が聞く。
少し考え「そうですね。そんな感じで勉強してますね」
「ボクモソウデスヨ! ソウオシエテモライマシタ!」
「誰に?」と景子が尋ねる。
やっとスマホを置いて、会話に参加しだした。
「ン?」
「だから、誰に教えてもらった?」
「エッ、ダ、ダレッテ‥‥‥」困った様子で額の汗を拭うガリクソン。
「俺だよ」と泰斗がガリクソンのビールグラスにビールで乾杯しながら言う。
「ソ、ソウデス」と話を合わせるガリクソン。
雨竜が泰斗と、ガリクソンを観察するような眼差しで見ている。
その目を見ながら、この人は物事の裏を見ようとする人だと思うまさみ。
雨竜雷、ミステリー作家としてデビュー。
「野生の叫び」私立探偵・雨崎が事件解決に奔走する作品。
これが雨竜雷のデビュー作である。
雨竜は奄美や泰斗より一つ上の三十歳。
デビューは、高校卒業後の十八歳の時。
この野生の叫びは、文学賞を受賞。その事は、まさみも記憶している。
現在まで、私立探偵・雨崎シリーズは、八作出されており今なお人気の高い作品だ。
特徴は、毎回相方が変わることだろう。
デビュー作の野生の叫びでは、病院内での医療事故を調べる看護師が相方。
その次は、ホテルでの些細な事件から、雨崎自身に身の危険が迫りくるというもので、この時はホテル内にあるレストランのパティシエが相棒にといった具合だ。
しかも全員が美女・美女、男の理想の小説だ。
女性のまさみが読むと、男性をバカに出来て少し痛快であったりもする。
探偵・雨崎は困っている者を放っておけない。女性に弱くしかもいつも良い感じになるが、最後にはフラれるというパターンがお決まりだ。
雨崎にしても、雨竜が書く他の小説に出てくるキャラクターは、素人目に見たらちゃんと人間を描けていると思うのだが、小説家ともなるともっと高みを目指すものだろう。




