あっしゃビットコインよりFX派かな!④
「今日ここに来られた方は、投資に興味があるという事ですね。投資といって真っ先に浮かぶのは、今の時代ならビットコインではないでしょうか?」と言い終わると、辺りを見回すガリクソン。
「みたいですね。仮想通貨は“通貨”という名称がついていますが、これはあくまで価値があると認めた人や事業者の間で流通するという形になります」周りが意味が分からないという感じでキョトンとしている。
察してガリクソンが「ではFXなんて言葉聞いた事はありませんか?」と問いかける。
すると今まで、会場が静まり返っていたのが賑わってきた。
「FX外国為替証拠金取引と言います。FXは、外貨を両替し、そこに発す為替差損益を得るという金融商品です。何故、経済が不安定にある状況下において、FXに人気が集まっているか‥‥‥気になりませんか?」と笑顔を周りを見渡すガリクソン。
その表情にはもう緊張の面持ちはない。
「実はFXは外貨を“売り”から入ることが出来ます。すなわち円高でも円安でも、どちらでも利益を得る事が可能なのです。FX以外の外貨商品は利益を上げるために、円高の時に外貨を買い、円安の時に外貨を売るのが鉄則です。でもFXなら、円安の時に買いから入らなくても、売りから始められるため“外貨を高く売って、外貨を安く買い戻す”ことが可能になります。つまり、円高でも円安でも利益を上げれるのがFXなのです!」
参加している全員が頷き、羨望の眼差しでガリクソンを見る。
まさみも同様だ。
「とは言っても、ルールはあります。覚えなくてはいけない事もあります。例えば」と
森田の方を指さすガリクソン。
「森田さんはプロの将棋指しですよね」
と聞くので、頷く森田。
「雨竜さん、安井さんは小説家と、漫画家こちらはここにいる皆様の方が詳しいですかね」と続けて雨竜と安井を指さし、照れる二人。
「将棋なら戦法を覚えなくてはいけません。
これが中々難しいのです。僕も将棋をするんですけど、これがもう大変なんですよね‥‥‥これからFXのコツを説明していきたいと思います」と話し始めるガリクソン。
ガリクソンの講義が終わり、各々が“買いから入っても、売りから入っても良い”“二十四時間いつでも出来るのは良い”などFXにはまりそうな空気が会議室全体に蔓延している。
「けっこう時間あるから、やりやすいかも」と安井が雨竜と森田に話しかけている。
「安井君、時間あるの? 締切に終われてないの?」と雨竜が聞く。
「比較的楽なんすよ。雨竜さんは?」
「俺も比較的時間あるなー森田さんは?」
考え込んで「時間ありますねー」
三人で時間を持て余す優雅な生活を憂いてるようだ。
「良いなーお金あって、時間まであるなんて」と景子が羨ましそうに言う。
その言葉の裏には皮肉めいたものが、混ざっているが、見方を変えるとこれはチャンスなのではと思い直す景子の横顔。
泰斗がガリクソンの肩を笑顔で叩く。
ホッとするガリクソンが、深呼吸をしている。
「イヤーホットシマシタ。ヨロコンデイタダイテヨカッタデス」とこちらも笑顔で応える。
「泰斗さん久しぶりに会ったんだから、ご飯連れて行って下さいよ」と安井が泰斗にねだる。
「今からか?」この後、雨竜の森田への取材の約束があった。
雨竜と森田のスケジュールが中々合わないという現状があるので、一日も無駄にしたくない。
すると雨竜が「僕は良いですよ。漫画家さんの話も聞きたいし」
続けて「僕もガジガジ読んでますから」と森田が言う。
「決まりですね!」安井が泰斗に向かって微笑む。
「奄美さんの話も聞きたいし」と雨竜が、まさみの方を見て何ともいえない微笑みを返す。
戸惑い「い、いえ私は‥‥‥今日はこのまま帰ろうかと‥‥‥」雨竜の視線が恐く感じた。
だからこそ更に断ろうとしている、まさみに被せるように景子が「行きます」と手を上げる。
何回も手を上げ「行きたい! 行きたい!」と連呼する景子。
まさみと景子のテレパシーの会話が始まる。
“何、勝手な事言ってるのよ!”
“だって行きたいんだもん!”
“じゃあ一人で行ってよ”
“えー全員初対面よ私”
“じゃあ何で飲みに行きたいのよ”
“‥‥‥何となく!”
“何じゃそりゃ”
“彼のライバルを探るチャンスよ”と二人しか分からない会話が、二人の心の中で繰り広げられている。
「まさみちゃんどうする?」と泰斗が心配そうな顔で聞く。
「‥‥‥べ、別にいいですけど」
「じゃあ、決まりだね! 今日の主役のガリクソンさんも行くでしょ?」と雨竜が、ガリクソンの方を見る。
頷くガリクソン。やや愛想笑いをしている日本人らしいガリクソンを目撃した。




