あっしゃビットコインよりFX派かな!③
ふと思い出しまさみが景子に「お金興味ある?」と聞く。
すると景子が「もちろん」と当たり前の事を今更という態度である。
「資産運用の講座って興味ある?」
「あるータダなら行く!」
そうなのだ昨日、泰斗から連絡があり、ガリクソンが泰斗の出版社で、資産運用の講座をするというのだ。
奄美曰く、アメリカではガリクソンは証券会社で働いていたそうだから。
どうやら雨竜雷が、泰斗に頼んだみたいである。
ガリクソンが、泰斗だけではなく、雨竜雷まで知っているという事が、侮れないガリクソン。
でも、資産運用の話しは聞きたいまさみである。
という訳で、まさみは景子と一緒に、泰斗の勤める角早出版社にやって来たのである。
大きな会議室に案内され中に入ると、もうすでに三十人ぐらいの人が部屋にはいた。
泰斗とガリクソンが打ち合わせをしているのが、まさみの目に入った。
泰斗が気づき、まさみに声をかける。
「まさみちゃん、いらっしゃい!」と景子に気付く泰斗。
すかさず「そちらの美人さんもいらっしゃい!」と何の違和感もなく声をかける泰斗。
景子は照れている。
奄美と付き合いだしてからが、泰斗と知り合う事になる。
いつも優しく気が利いて、まさみを含め女性にも気を遣える。
奄美の対局も見れる時はみているようだ。
勝っても負けても態度を変えないとというのを、泰斗から学んだ。
不思議に思うのは、知り合ってから泰斗が誰かと付き合ってるという話しを聞かない事だ。
彼女が出来ない、いや作ろうとしていないのだ。
「あっこの子は同僚の景子です」
「どうも」と挨拶する景子に、応える泰斗。
「凄い人ですね」と周りを見ながら、人の多さに驚くまさみ。
「ほとんど社内の人間なんだけどね」
もう一度周りを見渡すと、スーツの人はもちろん、ジーンズ姿の人、クロックスを履いているラフな人もいる。
女性の姿も十人以上はいる。
「来て良かったんですか? 部外者なのに」と景子が泰斗に尋ねる。
「もちろん。部外者も何人か来るから、あっ来た」と泰斗の声に合わせて、入り口に目を向けると雨竜雷と森田が入ってくる。
森田がまさみに気付き近寄ってくる。
まさみも森田に挨拶をする。
辺りを見回して「奄美君、来てないんですか?」
「来てないのー今、フィリピン」と教えてあげるまさみ。
「フィリピン何しに?」と森田も知らないみたいだ。
やはり奄美とフィリピンが頭の中で繋がらないみたいだ。
「知り合いに会いに行ってるの」
「‥‥‥知り合い‥‥‥?」
首を傾げる森田。何ともいえない顔をしている泰斗の顔も目に入った。
部屋にジャージ姿の格好の男が入って来た。
泰斗が気づき「安井君こっちこっち」とジャージ姿の男を呼ぶ。
「泰斗さん久しぶりっす! 泰斗さんが担当外れたから寂しいっすよ」と泰斗になついてる様子の安井君。
安井とは週刊アクティスで連載中の漫画“ガジガジ”の作者である。
泰斗が文芸部に行く前に担当していたのが、安井である。
泰斗が安井に「安井君、FXとか仮想通貨とか興味あるの?」
「ありますよ! めちゃくちゃ」とガリクソンの方を見ると、雨竜雷や年配のお偉いさんらしき人と話してる。
「雨竜雷ですよねあれ?」
「そうだよ」
「あの外人さん何者なんですか?」
「元証券マンで、今バックパッカーのアメリカ人」
首を傾げながら「何処で知り合ったんですか?」
「‥‥‥知り合いの知りないって感じだな‥‥‥うん」ゆっくり状況を考えながら伝える泰斗。
その様子を見ているまさみ。
まさみの服の袖を引っ張る景子。
景子の方を見るまさみ。
“あれが雨竜雷なの?”とまさみと景子にしか分からない無言のテレパシーを送る景子。
“いやいや、私も初対面なんだから”とまさみも景子にしか分からないテレパシーを送る。
“じゃあ、あっちの人は?”
“棋士の森田君”
“あっあの人が! 紹介してよ”
“いやいや無理だって! 奄美のライバルだから!”
“それは私には関係ない!”
“てかアンタ、彼氏いるんでしょ!”
“それとこれは話は別なの! 急にカレー食べたいなって日ってあるでしょ。あれと一緒よ”
“将棋界の偉人とカレーを一緒にしないでよ”と二人しか分からないやり取りを、いや二人にも全部は理解できない、おおよその考えを理解した所で渋々、まさみが森田に景子を紹介する。
森田相手に、とびっきりの笑顔を振りまく景子。
そんな様子を見ながら泰斗が、ガリクソンに何やら指示を出している。
それを受けガリクソンが壇上に上がる。
頭を一度下げ喋りはじめる。
前に会った時よりも、ゆっくり丁寧な口調で話すので、とても聞きやすい日本語だ。




