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音のない世界  作者: 横須賀かもめ
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ありふれた言葉がいい13

“奄美がそちらご迷惑をおかけしていないでしょうか? 奄美がタイトル戦出場を決めた翌々日に会った時(雨竜雷さんの取材で)に、恵さんに会いにフィリピンに行くと聞いた時は驚きました。何かあったと聞いたのですが、帰ってきたら伝えるとだけ言ってフィリピンに向かいました。





なので推測でしかないのですが、僕が恵さんにしてしまった過ちの事で、二人が別れ離れになってしまった事と関係があると思われます。恵さんの人生を大きく変えてしまった事を、今でも悔やんでも悔やみきれません。時間を見つけて恵さんの元に謝罪をと何度も思っていますが、これだけの時間が過ぎても一度も実現してません”





 手紙からまた目を外し、それもそのはずだと、謝罪の必要がないと泰斗君に言ったのは恵自身である。

 再び手紙に目をやると“また時間をとって謝罪の機会を作りたいと思っています。奄美君とはこの十四年間、何度も謝罪を繰り返しているのですが。恵さんにはちゃんとした謝罪をしていないので”と手紙が終わっている。




 泰斗からの手紙は今まで節目節目でもらっている。事件を起こしてすぐ、出所してから、そして私がフィリピンに行くと知った時。何度何度も読み返してきた。今回の手紙で初めて文中に奄美の事が書かれていた。




 二人が仲良くやっていると風の噂で聞いたのは、恵が大学に行ってる頃だった。

 その話を聞いて喜ぶとともに、安心したの今でも鮮明に覚えている。

 事件から十四年経って初めて、泰斗君から奄美の話しが出たような気がする。




 今まで泰斗君からは、業務メールのような内容のものなら何度ももらっている。

 近況報告のメールを。僕は今こうしています。生きてます。人生を全うしても良いのでしょうかと思わせる確認のメールが。幾度も届いたその中には奄美の近況を知らせる文面もあった。

 だが今回の手紙と重さが違う。




 奄美はフィリピンまで一体何をしに来たのだろうか?

 泰斗が言うように、十四年前の事で来たのだろうか?

 奄美には恵の方が、謝罪しなくてはいけないと思っている。

 手紙をたたみ、ベッドに入り眠ろうとしたが、テーブルの上の泰斗の手紙をちゃんと保管してベッドに戻る恵。

 少しして眠りについた。





またあの夢を見る数カ月に一度、何かに追いかけられる夢を見る。いつも何に追いかけられているか分からないが、逃げている夢を。いつもいつも足が鉛の様に重く、その足を引きずって逃げる夢を。

 場所はいつも廃墟の建物である。


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