ありふれた言葉がいい12
「将棋の話し。モニカはセンスあると思う。凄い強いし」と携帯を見ながら言う。
「恵、国際電話のかけ方って知ってる?」
「ん? そりゃ知ってますよ海外に住んでますから。電話かかってきたの?」
「そう‥‥‥全然分からない、誰からかかってきたか」
恵に電話を見せると「‥‥‥これっ泰斗君からじゃない?」
「あっ泰斗か! 着いたら連絡しろって言われてたの忘れてたよ」
「あっついでに思い出した、泰斗から恵にこれ渡しといてと言われてたんだ」と付け加えながら紙袋を渡す奄美。
「えっ何だろ?」
「ガジガジじゃないの?」
ガジガジとは泰斗が担当していた漫画のタイトルである。
内容は忍者ギャグ漫画であり、男子高校生が主人公であるが、偉人たちが過去から現代にやってきて、ドタバタしながら時にはウルッと感動させてくれる基本ギャグマンガである。
「帰ったら読もう」
「最新刊も面白いからな!」
「‥‥雨竜雷の担当になったんだよね?」
「知ってるの雨竜雷?」
「もちろん」
「祖父ちゃんの葬式にも来てくれたよ」
「えっうそ?」
思い出してみると、泰斗の横にシュッとした男性がいた。
「あれが雨竜雷‥‥‥ウッソーサイン貰えば良かった」
「言えば良かったな。ちなみに俺は貰ったけどな」
確かに奄美と雨竜雷だと思われる男性が喋っているのは記憶にあった。
「泰斗君はどうして文芸部に?」
「ただの異動って言ってたけど」
「うーん、そっか‥‥‥」
「気になるなら本人に直接聞いてみたら?」と普通に何も考えずに答える奄美。
「う、うん‥‥‥そうだね」
信号が赤になったので止まり、横をふと見ると奄美がこっちを見ていた。
「なに?」
「あっいや別に‥‥‥」
ホテルの前に着き、別れ際に「明日は朝早くから山の方に行くからね」と告げる恵。
「エッ山?」って聞いてくる奄美を置いて、笑顔で車を走らせる恵。
家に着きシャワーを浴び、明日のために早くベッドに入ろうと思った恵だが、泰斗からのプレゼントに目がいった。開くとやはり中身はガジガジで読もうと漫画を開くと手紙が挟んであった。手紙を開けてみると、泰斗の字がそこにあった。
“拝啓 春風の候、恵様には健やかにお過ごしのこととお喜び申し上げます”
手紙から視線から外し部屋のライトを見上げ「おやおや、どうしどうした? この堅い書き出しは何だ?」不思議に思いながらもさらに読み進める恵。




