ありふれた言葉がいい⑨
次の場所への移動時間が迫って来たので、
皆とお別れの時間が近づいてきた。
「また来るからね」と奄美が子供たちの頭をポンポンと優しく撫でながら言う。
子供たちが寂しそうに「アマミ、ツギイツクルノ?」「マタ、ショウギオシエテネ」などと声をかけてくる。中には別れるのが嫌で泣きだす子までいた。
「また来るからね」と奄美が言って、車に乗り込むと車を子供たちが取り囲んだ。
エミリオたちの協力のもと、やっと車を出せる程の騒ぎだった。追いかけてくる子供たちの姿。
その姿をバックミラー越しに見ながら恵が「超ヒーローみたいだね!」と言う。
「ホント! あんなに泣かれたら来たかいがあったよ。日本で将棋教えても、あんなに拝み倒されないから」と嬉しそうに話す奄美。
「奄美って子供好きだもんね」
「‥‥‥そうだったっけ?」
「昔、ショッピングモールで迷子の子供の面倒見たじゃん」
眉間に皺を寄せながら「‥‥‥マサトシ君だ!」
「あっそう! 名前までよく覚えてるね」
「今、ふと思い出した。ナイス俺!」ガッツポーズを見せる奄美。
「遅いけどそろそろお昼にしようか」
「待ってました! 何食べさせてくれるの?」
「行きつけの店があるから」
車で十五分ぐらい走った所にあるレストランで、車を停める。
「ここよく来るんだ」
恵の行きつけのレストランは、日本でいう街の定食屋よりも店構え的には有名なカフェのような雰囲気だ。開放的であり入りやすい印象である。
開放的というのが、海外の普通なのであろうと、妙に納得してしまう。
店に入ると、店員から気軽に声をかけられる恵。
何を言ってるか奄美には分からないが、雰囲気から察すると「何、恵の彼氏?」と聞かれ「違うから!」と言ってると思う。
「ここの料理は何でも美味しいから」と読めないメニュー表を渡される。
目を通すが「恵が決めて」とメニュー表を返す。
「じゃあどうしようかな」と言いながらすぐ店員を呼ぶ。
あまり悩まないのも昔のままだった。
料理を待っている間に「やっぱり教えるのうまいね」
「子供たちが素直だから」などと話していると、料理が運ばれて来た。
見た目からもニオイからも食欲がそそる。
フィリピンの料理は日本人の味覚に合っていると思う。恵曰く、ダバオのスーパーには醤油やみりんなど日本のお馴染みの調味料もあるし、カップ麺もあるらしい。




