表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
音のない世界  作者: 横須賀かもめ
59/99

ありふれた言葉がいい⑥

 「去年は負けたからなー」

 「‥‥‥今年も森田君とだね」

 「どうして負けたのかなと思って。天下人だから‥‥‥仕方ないんだけど」

 真面目な横顔の奄美を見ると、やはりプロの世界で生きている人間なんだと思った。改めて、そしてこれが奄美の日常である。




 会話が意外に続くのが、恵にとっては新鮮な出来事だった。

 あれだけ心配してた事が、こうもあっさり覆る。

 十四年の歳月が、各々の想いを何処かに飛ばしたのか、昔の恋という事実がそうさせるのか?

 それとも他愛のない会話だから続くのか‥‥‥他愛のない会話だって続かない事も多いのもまた事実。

 「ホテルは決まってるの?」

 「うん」

 鞄からメモを取り出す奄美。

 「セダ・アプリーザダバオ」

 「高級ホテルじゃん」

 「そうなの? 泰斗に予約してもらったから」

 泰斗という名前出てくると凄んでしまう。




 察したのか奄美が、話題を変える。

 「子供たちに将棋を教えればいいの?」

 合わせるように「そう! みんな喜ぶと思うの」

 「喜ぶかな? 将棋なんて教えて?」

 「喜びますよー子供は新しい物が好きだから」

 微笑んで見せる恵。




 その顔を見て、微笑みかえす奄美。

 「この後も、仕事なの恵は?」

 「どうして?」

 「いや、ダバオを観光しようと思って‥‥‥」

 「何処か行きたい所あるの?」

 「ガリクソンに聞いたんだけど‥‥‥」

 「ガリクソン、まだ日本にいるの?」

 「今、俺の家にいるよ」

 「ハッ? どういう事?」




 「エッだから、今ガリクソンは俺の家で留守番してくれてるよ」

 「何で?」

 「何でって聞かれても、ガリクソンが留守番してくれるって言うから」

 「ハァーッ! 何でそうなるの?」

 思い出した奄美という人間は、人とすぐ仲良くなる人間だった。




 そしてガリクソンも、そちらタイプの人間だった。

 呆れるというか、その可能性すら疑ってなかった自分に落ち込む恵。

 「ガリクソンも連れてくれば良かったかな?」

 「‥‥‥いやそうじゃなくて、いや別にいいんだけどガリクソンは」

 「でさ、そのガリクソンが言っていた、夕陽の綺麗なビーチに行きたいなと思って」

 「サマール島の事かな?」

 「島に行くんだ」




 「そう。だから船に乗らないと‥‥‥」

 「そっか、じゃあ今日すぐにって訳にもいかないか‥‥‥」

 「だね。サマール島に行くならモニカも連れていきたいな」

 「モニカっていうのは?」

 「こっちで出会った、私の友達。高校生なんだけど、めちゃくちゃ勉強仕事を頑張ってて、たまには息抜きをと思って」





 「高校生で、そんなに頑張ってる子には是非、息抜きさせてあげないと」

 「奄美だって、高校生の頃から働いてるじゃん」

 「いや意味が違うでしょ。恵の知り合いって事は苦労してるんだろ?」

 「私の仕事、調べたの?」

 「‥‥‥うん、まぁ何となくだけどね」

 「ありがとう」

 「お礼を言われるほどじゃないよ」

 二人で話しているとホテルに着いた。

 そこからニ十分ぐらい車の中で、本当に他愛のない話をして、奄美をホテルの部屋に送った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ