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音のない世界  作者: 横須賀かもめ
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ありふれた言葉がいい③

 つい先日、泰斗から連絡があり「奄美がフィリピンに行きたいって言ってるけど、良いか?」と聞かれた。




 奄美の祖父の葬儀で、十四年ぶりに会った時からそういう日が来るかなくれば良いなと思っていたが、ついに来たなその時がと思う恵である。

 奄美と会うのは、嬉しいようであり苦しい息苦しい出来事でもある。

 ジェットコースターのように嬉しいと苦しいが繰り返す。




 一つの感情で自分の感情を片付けられる事が出来る程器用でもないし、それよりも時間の経過が経ちすぎている。




 十四年という月日は、人の感情を解きほぐすという訳ではないらしい。

 更に臆病にしてしまう側面もあるらしい。




 ニコルが恵の顔を見上げ「どうしたの?」と心配そうに聞く。

 我に返り「なんでもないよ。今日は何食べるの?」

 「何にしようかな」とモニカが悩んでいる。

 ニコルが「シシグガイイ!」とモニカの周りを跳ねながら、はしゃいでいる。




 シシグとは、細かく刻んだ豚肉を醤油、ビネガー、にんにく、唐辛子で炒めた鉄板料理である。

 しっかりした味付けなのでビールのお供にもピッタリである。

 数あるフィリピン料理の中でダントツで恵が好きな料理である。




 フィリピンでは、主食は米、そして鳥、牛、豚、魚を食材として使った料理が多い。味付けは、塩、醤油、ケチャップ、オイスターソース、魚醤、唐辛子、胡椒といった日本でもよく使われるものがフィリピンでも使われている。調理方法も揚げ物、焼き(グリル)、ソテー、煮込みなど日本でも一般的なものばかりで、こちらに来て食事で困った記憶がない。




 日本に居た時よりも太ったぐらいだ。

 なので食事には気を付けている恵である。

 気を抜くと、フィリピン料理に取りつかれてしまいそうだ。

 恵以外の日本人も、フィリピンに来て食事で困ることは少ないのではないだろうか。

 モニカたちがシングを作るというから、恵もシングに必要な食材を買っていく。

 スーパーでモニカたちと別れた恵は、一人家路に向かった。


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