小説の名は「誰がタメ」 その11
弟子のプロ入りという嬉しいニュースの上に悲しい事件を犯してしまったのだから。
「どうだった奄美は?」心配そうに奄美の葬式での状況を知りたがる高村。
「気丈に振舞ってましたよ」
「そうかそうか‥‥‥五十嵐君はお祖父ちゃんと会った事は?」
「あります。初対面でぶん投げられました」
「‥‥‥ということは‥‥‥」申し訳なさそうに聞く高村。
「そうです。ボクガ出てきてすぐに奄美と一緒に奄美の実家に行ったときに‥‥‥」
「あれからもう何年になるかな?」
すぐさま「十四年です」
「結婚はまだだよね?」
「彼女もいないですよ」
「恵ちゃんとは?」
「エッ、いやいやそんな事あるわけないじゃないですか!」
「奄美にはまさみちゃんがいてるじゃない」
「そりゃそうですけど‥‥‥」
「奄美言ってたよ五十嵐君が幸せになってからですよ。僕が幸せになるのはって」
奄美がそんな事を思っていたなんて、初めて知った泰斗。
「俺の事なんて放っておいたらいいのに‥‥‥」聞こえるか聞こえないかの声でつぶやく‥‥‥。
「そうは思えないって」
驚いて高村の顔を見る泰斗、真剣な顔だが目は優しく泰斗を見ている。
「恵ちゃんとはどうなの?」
「ど、どうなのって‥‥‥僕と恵さんが‥‥‥そうなることは絶対にないですよ。絶対に‥‥‥」
「えっそうなの何で?」
「そりゃそうですよ。僕のせいで恵さんを傷つけてしまったわけですから‥‥‥取り返しのつかない事をした訳で謝っても許される訳がないですから‥‥‥」
「奄美も恵ちゃんもそう思ってないかもしれないよ」
「ど、どうして‥‥‥?」
「恵ちゃんとは話してないの?」
「こないだ久しぶりというか、十四年ぶりに会いました」
「えっそうなの?」と驚く高村。
「業務連絡的な事はずっとしてますけど、
例えば今こんな仕事をしてますとか、これからこんな仕事をしますとか。なので担当している漫画をお送りして良いでしょうか的な連絡ですね」
「奄美とは、恵ちゃんの話しはしないのか」
「‥‥‥アイツ連絡とってないみたいだから、しづらいんですよねー」と高村に相談する感じで伝える泰斗。
「それは五十嵐君に任せてるんじゃないのかな」
何も答えられずにいる泰斗。
煙草の灰だけ増えていく。




