表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
音のない世界  作者: 横須賀かもめ
5/99

決着の時

 ペットボトルをグビグビと飲む森田君。その後、ハンカチで口を拭う。

 森田君、余裕ないんだ。簡単なことが複雑になって真実を見落とすことがある。将棋の

勝負の世界ではよくあることだ。




 ノビノビ指せばいいのになと思ったが、森田君の立場になるとそうはいかないのも簡単に想像できた。

 重圧が中学生の両肩に乗っていると思うと、可哀相に思えた。




 中学生棋士となれば騒がれるだろうな。マスコミとかが押し寄せて、明日の朝のニュースでも取り上げられ、連日取材・取材で嬉しいよりも大変だと思う方が多いのを、これだけ期待されるのはありがたいです。とか嘘をついて生きていかなければいけない人生のスタートになるわけだ。




 その過酷な人生のスタートを強制的にきらそうとする人々。

 その中の一人になるのかな雪村さんは。あの人は純粋に将棋が好きだからな、僕よりも好きだもんな多分将棋が。




 当事者の森田君は、その過酷な人生を背負うとしているようだ。背負えるほどの人間になりたいとでも思っているのか、まだ中学生なのに。

 勝ちたいんだろうな、いや勝たなければいけないと思っているのか。




 可哀相だな、中学生の肩にかかるものではないなと思う。

 研究対局みたいにノビノビ指したいな森田君と。

 それでも負けると悔しいからな、特に将棋は。




 手を抜かれるともっと悔しい。森田君のペースに付き合おう。そして勝とう。プロになったらもう森田君には勝てないかもしれないから。




 真摯に指そう将棋を正直に丁寧に。

 音のない世界にまた足を踏み入れる。

 水の中にいるように静まりかえる。




 ゆっくり思考の中に浸りながら、指していく。とても静かに、でも熱く。

 身体を動かしていないのに、脇から汗が流れてくるのが分かる。頭がフル回転しているのだ。体が水分を欲している。




 森田君の熱気がゆっくりゆっくり冷めてきた気がした。顔を上げると森田君が頷いたのが見えた。

 僕はまだまだ身体が頭が熱い。ゆっくりと駒を置く。

 「負けました」森田君の声が耳に届く。




 勝ったのか‥‥‥横山奄美十七歳プロに昇格した記念したこの日に、彼女がレイプされた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ