小説の名は「誰がタメ」 その⑥
「な、何してるの! サラダが落ちてるよ」
「サラダ嫌い?」
「そうじゃないと思いますよ」
「も、森田さん来るなら来るって言っておいて下さいよ!」少し落ち着きを取り戻し始めた迫田君。
「そんなに緊張するもの?」と泰斗がおちゃらけて聞く。
「そりゃ緊張しますよ! 森田三冠ですよ! 将棋界の革命児ですよ! 緊張しない方がおかしいですよ!」と熱を帯びてる迫田君。
「奄美は緊張しないって言ってたけど?」
「当たり前でしょ! 奄美さんは奨励会同期でプロデビュー一年先なんだから」
「その一年先輩の奄美君には緊張するの?」
考えて「少しは緊張しますよ。少しだけど。
てか森田さんいつ来るんですか? ここに来るんですか?」
「まだ連絡ないから将棋会館になるんじゃないかな?」
「どうしよう? ‥‥‥帰っていいですか? お腹痛くなったとか言っておいて下さいよ」
「いやいや仮病まで使わなくても、一緒にいれば良いじゃん」
「そうだよ解説してよ」
「森田さんの前で解説なんて出来ないですよ」首を振りながら答える迫田君。
「森田君と対局したらどうなるんだろうね?」
「‥‥‥そりゃ対局はしますよ。緊張と嬉しさを持って」
「嬉しさもあるんだ?」
「そりゃありますよ。神の域にいる人ですからね」
泰斗と迫田の会話を聞きながら、メモを取っている雨竜。
各々が食事を済ませようとしている時に、泰斗のスマホが震える。
「もしもし、はい森田さんですね‥‥‥」と話しながら席を立ち、店を出る泰斗。




